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日通、医薬品物流に本格参入

2019.01.17

日本通運(本社・東京都港区、齋藤充社長)は、国内で医薬品物流に本格参入する。日本版GDP(Good Distribution Practice=適正流通基準)のガイドラインが昨年末に発出され、医薬品物流についてもガイドラインに則った取り扱いが求められることを機に、新たな医薬品サプライネットワークを構築し、GDPをクリアした一貫品質管理体制を実現する。2021年1月までに最大500億円を投資して、核となる国内4拠点を順次稼働させる。10日に会見した野田健司・ロジスティクス事業支店長は「すでに外資系を含めた新薬メーカー10社以上から好感触を得ている。稼働後2~3年で、年間150億円の売上げを目標にしていく」と語った。

医薬品物流の共同プラットフォームを構築

GDPに基づく品質管理に加え、医薬品供給におけるBCP(事業継続計画)対応、医薬品専用車両のラウンドユースなどの機能を備えた共同物流プラットフォームを構築する。

新たに建設する医薬品専用拠点は東日本(埼玉県久喜市、延床面積約2万坪)、西日本(大阪府寝屋川市、同約2万坪)、九州(北九州市、同約5000坪)、富山(富山市、同約3000坪)の4拠点で、これらの拠点を21年1月までに順次稼働させる計画。建設費用は400~500億円。従来から原材料・製品の輸出入拠点である2拠点のメディカルハブ(成田、関空)と合わせ、調達、製造、販売など国内の医薬品サプライチェーンに伴う物流プロセスを一貫して品質管理できるネットワークを築く。

サプライチェーンの全工程で品質管理を徹底

新倉庫は日本版GDPガイドラインをクリアすることに加え、入荷エリア、保管エリア、出荷エリアを明確に区分し、入荷用と出荷用の専用エレベータを設置する(東日本、西日本)。また、入出荷作業の際の防虫管理とセキュリティのために、トラックドック、前室、大型エアシャワーを配置(東日本、西日本)するほか、定温・保冷の温度管理に加え、輸出入用の保税エリア、特殊医薬品エリアなどサプライチェーンにおけるあらゆるニーズに対応する。さらに、災害などに備えたBCP対応として、免震構造(一部除く)を採用するほか、非常用発電設備も設置する計画。「倉庫の内部に入れば入るほど、衛生面とセキュリティのレベルが上がるようにした」(野田支店長)という。

医薬品メーカーなどがとくに注意を払う温度逸脱リスクについては、倉庫内の保管エリアを三次元マッピング映像で総合監視する。また、輸送中をはじめとするサプライチェーンの全工程で温度マッピングを記録。そうした情報をクラウド上で顧客である医薬品メーカーがリアルタイムで把握できる体制をつくる。

共同物流でコストメリットも還元

オペレーションはすべて自社員と自車両で行うことも特長。社員については医薬品物流に長けた専用のコンサルティング会社を入れて、2年間かけて人材育成を進めていく。また、専用車両についても自社設計による統一スペックの車両を導入して、「例えば、成田で輸入した原薬を専用車両で富山まで運び、富山で製造された製品を同一スペックの車両で配送するラウンドユースを実現していく」(同)とした。

会見で野田支店長は「他社を含めたこれまでの国内医薬品物流は、自主規制で行っていた部分もあり、品質管理がすべてカバーできていなかった。今回、日本版GDPの発出という規制強化の流れを受けて、ガイドラインをクリアした物流体制を構築することにした」と説明。「製薬メーカーの声を反映させたオペレーション体制を整備し、それを共同物流というコンセプトでプラットフォームとして提供する。当然、高い品質を確保するためのコストはかかるが、共同物流というスキームを通じて、医薬品メーカーにもコストメリットを還元できる」と述べた。
(2019年1月17日号)


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