レポート ソリューション企業に進化する物流不動産
物流不動産を開発するデベロッパーが不動産賃貸業から物流ソリューション企業へ進化しようとしている。施設の提供のみならず、トラックドライバー不足や庫内作業員不足といったテナント企業の物流課題へのソリューションとして、AIやロボットの導入支援や庫内改善のコンサル領域まで手掛け始めている。その背景には、大量供給による競争の激化により施設そのものでは差別化が難しくなっていることが挙げられる。巨大な資金力をバックに新技術をいちはやく取り込みながら、物流業界でのステータスを高めつつある。
コンサル専門チーム、新会社を設立
物流不動産の新規供給はますます活発化している。最大のマーケットである首都圏では、2019年1~3月は20万6000坪と四半期ベースで過去最高を記録する見込み。竣工予定のうち複数物件が既に満床となっているなど旺盛な需要が伺えるが、通勤が不便など雇用確保に難航するエリアでは全国的に空室が見られる。
賃貸用物流施設の多くは、パート従業員が集まるのに有利となるカフェテリアや託児所の整備、さらには通勤に便利な自転車のシェアリングなどに取り組んできた。しかし、「周辺から人を集める」前提が崩れ始めているいま、施設への企業誘致戦略は省力化・省人化のソリューションに大きくシフトしてきている。
プロロジス(本社・東京都千代田区、山田御酒社長)は10月、物流ソリューションサービスを提供するコンサルティング専門チームを新設したことを発表した。施設の提案に加え、入居カスタマーや入居を検討している企業を対象に、業務改善や物流拠点の立ち上げをサポートする物流ソリューションサービスを提供していく。
新チームは、eコマースのフルフィルメントセンター立ち上げ経験のあるスペシャリストで構成、今後はロボットやマテハンを活用した省人化を推進するため、庫内設計支援にも注力。センシング技術による業務改善やロボットの導入を検討しているカスタマーに対してコンサルティングサービスを提供する。
日本GLP(本社・東京都港区、帖佐義之社長)では、GLPグループ100%出資で新会社モノフル(本社・同、帖佐社長)を設立し、物流施設に出入りする車両や従業員の膨大なデータを活用し、各種技術を用いてソリューションを提供するプラットフォーム構築に乗り出す。
第1弾としてあいおいニッセイ同和損害保険、スマートドライブと業務提携し、物流向けのテレマティクスサービスをスタート。また、日本GLPでは産業機械専門商社のアルテックと自動化・省人化機器の販売・リース等で業務提携し、テナント企業へのサポートを強化している。
大和ハウス工業(本社・大阪市北区、芳井敬一社長)では、グループのホールディング(HD)会社であるダイワロジテック(本社・東京都千代田区、秋葉淳一社長)とその傘下企業との連携により、庫内作業やシステム、配送業務の効率化に資するソリューション提供に注力している。
ダイワロジテック傘下には同社の100%子会社でWMS・在庫管理システムソリューションを提供するフレームワークスをはじめ、フルフィルメントプロバイダーのアッカ・インターナショナル、搬送システムのGROUND、求貨求車ネットワークのHacobu等を有し、「次世代ロジスティクスセンター」のノウハウを結集している。
ロボットレンタル、輸配送のソリューションも
オリックス(本社・東京都港区、井上亮社長)もグループのオリックス・レンテックと連携し、自社で開発する物流施設に入居するテナントを対象に物流ロボットを6ヵ月間無償で提供するレンタルサービスを開始。物流施設の開発事業者が、物流ロボットを無償でレンタルする業界初の取り組みとなる。
三井不動産(本社・東京都中央区、菰田正信社長)も「MFLP船橋Ⅰ」内に、物流ICTに特化したショールーム「MFLP ICTラボ」を開設。ESR(本社・東京都港区、スチュアート・ギブソン社長)も、新設物流センターの内覧会と併せて、ロボティクス企業と共同セミナーを開催している。
物流関係者の最大の課題である輸配送のソリューション提供にも乗り出しているのが、シーアールイー(CRE、本社・東京都港区、亀山忠秀社長)。物流版Uberを提供するCBcloudと資本業務提携。CBcloud が提供する、荷主および物流企業と個人ドライバーのマッチングプラットフォーム「PickGo」の事業展開を支援する。
物流不動産デベロッパーが、テナントのニーズに応え、課題解決を目指す中で、3PL事業者や物流コンサルタントとの業際も曖昧になりつつある。施設の単なる賃貸から庫内運営にかかわる頭脳、手足も持つようになれば、物流不動産が物流の主役に躍り出る可能性もある。
(2018年11月27日号)