メニュー

ズームアップ 羽田DCに「オートストア」導入=ジョンソン&ジョンソン

2018.11.20

ヘルスケア大手のジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J、本社・東京都千代田区)メディカルカンパニーは12日、同社の主要物流拠点で、整形外科製品を主に扱う羽田ディストリビューションセンター(羽田DC、東京都大田区、ヤマトグループの羽田クロノゲート内)にロボット倉庫「オートストア」を導入したと発表した。従来、手作業が中心だったピッキング工程を自動化したことで、保管効率は従来の約4倍、ピッキング効率は1・5倍に向上した。自動化により業務のハードルを下げ、女性や高齢者など多様な人材が働きやすい環境を整えることで、J&Jが進める「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」も実現する。

J&Jがロボット倉庫を導入するのは世界でも初で、10月下旬から本格稼働を開始した。同社は製品を海外から成田に航空輸入し羽田DCに搬入、そこから国内4ヵ所(札幌、神戸、東京・新砂、福岡)の物流拠点を経由しながら医療機関などに届けている。

整形外科製品は、患者の体格や骨格に合った製品を使用しなければならないため、製品ごとに多様なサイズを取りそろえる必要があるなど、高い専門性と正確なオペレーションが求められる。羽田DCではこれまで、専門性を備えた作業員が約4万SKUに及ぶ製品のピッキング作業を担当していたが、整形外科製品の市場は高齢化などにより今後も取扱量の増加が見込まれることから、自動化によるサービス品質の安定・強化を図る。

ロボット化でピッキング効率が50%向上

今回導入したオートストアは、製品を収納した小型コンテナを積み上げて高密度な保管を実現するシステム。箱型ロボットがレール上を動きコンテナをピックアップし、ピッキング作業者の手元まで搬送する。このため、作業者は倉庫内を移動することなく、定点でピッキング作業を行える。

羽田DCに導入されたシステムでは、612㎡のスペースに計1万5000個の小型コンテナを積み上げて保管し、それを61台の箱型ロボットがピックアップ搬送する。「ポート」と呼ばれるピッキング作業者の作業場は8ヵ所設置。作業者はコンピュータ画面からの指示に従ってコンテナから製品を取り出し、パーコードで読み取るだけで作業が完了する。

J&Jによると、保管効率は従来の保管棚に比べ約4倍向上したほか、ピッキング効率も作業者が棚に移動していた時よりも1・5倍向上したとしている。

物流作業のD&Iも同時に実現、人材確保が容易に

J&Jが今回、オートストアの導入に踏み切った背景には、物流業界における人手不足もある。同社メディカルカンパニー・デピューシンセス事業本部バイスプレジデントの岩屋孝彦氏は「熟練が必要だった工程を自動化することにより、作業の正確性が高まることに加え、人材の確保がしやすくなる」とメリットを語った。

また、多様な人材が能力を発揮できる環境をつくることを目的としたD&Iを物流業務にも広げていく狙いもある。J&J日本法人グループ日本カスタマーロジスティクスサービスの荒川朋子シニアディレクターは、「人手不足が進む物流業界では今後、D&Iが重要になってくる。ロボット化によって業務のハードルを下げたほか、操作のための画面も簡単な英語表記にしていることから、性別や年齢、国籍を問わず、より広範な人材が働くことが可能になった」と述べた。

このほか、J&Jでは現場作業者の腰や体への負担を軽減する「サポートジャケット」(ユーピーアール製)も羽田DCで試験導入しており、今後も作業環境改善に向けて継続的に取り組んでいく。
(2018年11月20日号)


関連記事一覧