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ドライバーの精神障害労災件数削減へ=全ト協 

2018.10.25

全日本トラック協会(坂本克己会長)は、トラックドライバーの精神障害による労災件数削減に着手する。厚生労働省が公表した2017年度の精神障害の労災補償状況で、「道路貨物運送業」は請求件数で3位、支給決定件数では最多だったことから、来月開催予定の労働安全・衛生委員会に設置する「過労死等防止計画フォローアップワーキンググループ(WG)」で実態分析の報告を行い、必要な対策について検討を始める。

厚生労働省が発表した17年度の「過労死等の労災補償状況」のうち、精神障害の労災補償状況では、業種(中分類)で「道路貨物運送業」は84件と「社会保険・社会福祉・介護事業」「医療業」に次ぎ3番目に多かった。また、支給決定件数に関しては「道路貨物運送業」が45件と最多だった。

職種(中分類)では、トラックドライバーを含む「自動車運転従事者」の精神障害の請求件数は94件で4位、支給決定件数は38件で2位。業種別と職種別の支給決定件数の数字に開きがあることから、労働安全衛生総合研究所・過労死等防止調査研究センターに調査を依頼し、11月15日のWGで結果を報告する。

精神障害の発病に関与した事象としては、「重大な事故に遭遇、あるいは目撃した」のほか、荷主からのクレームや配達時間指定によるプレッシャーも考えられることから、過労死等防止調査研究センターの協力を得て発症実態を掘り下げ、個別のケアや産業保健総合支援センターとの連携など対策の可能性を探る。

4割弱が「業務関連のストレス・悩み」

精神障害は、仕事や私生活など外部からのストレスとそのストレスへの個人の対応力の強さとの関係で発病に至ると考えられている。発病した精神障害が労災認定されるのは、その発病が仕事による強いストレスによるものと判断される場合に限られ、発病の原因については医学的に慎重に判断しなければならない。

労災認定においては、①認定の対象となる精神障害を発病していること②認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6ヵ月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること③業務以外の心理的負荷や個体側要因(既往歴、アルコール依存状況、社会適用状況等)により発病したとは認められないこと――が要件となる。

17年版「過労死等防止対策白書」によれば、「疲労蓄積度(仕事による負担度)」が「高い」「非常に高い」と判定したトラック運転者(正規雇用)は13・5%。「業務関連のストレスや悩みがある(あった)」の割合は37・5%で、「仕事での精神的な緊張・ストレス」(42・5%)と回答した者の割合が最も高かった。

なお、労働者のメンタルヘルスの悪化が社会問題となり、精神障害による労災補償の請求件数が年々増加している中、15年12月には労働安全衛生法が改正され、長時間労働や職場環境による労働者のメンタル不調を予防し、かつ、精神的健康を保持増進するための「ストレスチェック制度」が義務化(労働者50人未満事業場は努力義務)された。

また、今年7月に閣議決定された「過労死等の防止のための対策に関する大綱」の変更では、重点的な取り組みとして、メンタルヘルス対策・ハラスメント対策が挙げられており、22年までに、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の割合を80%以上とする目標を掲げている。
(2018年10月25日号)


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