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「賃金水準維持した働き方改革を」=ヤマト労組定期中央大会

2018.09.25

「働き方改革」を中期3ヵ年経営計画(2017~19年)の最重要課題に据えて取り組む、ヤマトグループ。その中核となるヤマト運輸でセールスドライバー(SD)をはじめとする社員の労働時間短縮(時短)が進む中、課題となっているのが賃金水準の維持だ。こうした状況を受けて、ヤマト運輸労働組合(森下明利委員長)では13、14日に開催された「第73回定期中央大会」において、2018年「秋季生活改善」交渉および19年度の運動方針で引き続き、賃金水準の引き上げと人事制度改革への取り組みを経営側へ要求する方針を固めた。

人事制度改革は「協議の俎上に載っている」

新潟県湯沢町で開催された同大会には、全国の支部などから約800人の組合員が集まった。大会の冒頭に挨拶した森下委員長は、「我々の賃金体系はインセンティブや残業代に大きな割合が割かれている。働き方改革に合わせて、時短が賃金に影響しない制度改定にも取り組みたい」と強調。また、議事の中で片山康夫書記長も「賃金水準を維持しながらの労働条件の交渉にこだわっていく」と全体方針を説明した。

具体的には、賃上げ要求に加え、今年の「春季生活改善」交渉で獲得した原資を用いた人事制度改革への協議を進める。中でもSDのインセンティブ(歩合給)制度については、集配効率の異なる都市部と山間部などの地域間で差が生じており、「地方においてはほとんどが最低インセンティブで、残業代が生活給になっていることが現実」(北海道エリア)。早期の解決に向けて、「既に会社側との協議の俎上に載っており、もう少しのところ」と片山氏は説明した。人事制度改革では、65歳以上の働き方改革と60歳以上の賃金制度の見直し、介護や育児と仕事の両立支援策も要求する。

労働時間については、ヤマトグループの中期経営計画で19年度に年間総労働時間を2238時間へ短縮することを明示しているが「今期目標(2400時間)から、さらに162時間減らすことの実現性には不安もあり、計画を後ろ倒ししてもいいのではないか」(同氏)との考えから、「2320時間への短縮」で会社側と協議する。また、年休取得率は今期の「70%以上」から「80%以上」への引き上げを求める。

役職者であるエリア支店長の働き方改革についても言及。昨年の秋季生活改善交渉で会社側から対応への回答を得られたものの、実際には「なかなかうまく進んでいない」とし、主管支店による適切な管理を会社へ申し入れるとともに、エリア支店長の仕事をサポートする内勤社員や副支店長の体制強化を要請する。

「時短のみでは本当の働き方改革ではない」

大会では各地域の組合員からも「体はきついが給料がいいことが、ヤマトの魅力のひとつでもあった。社員はこれまでの賃金を生活水準としており、時短で賃金が減れば退職を考えるといった声も出ている」(北海道ブロック)、「時短のみが進んで賃金が低下しては社員や家族の安心に繋がらず、本当の働き方改革とは言えない。残業代に頼らない賃金制度を必ず実現してほしい」(中国ブロック)といった意見が寄せられた。

森下委員長は挨拶で「一番大切なのは働く人の気持ち。働き方改革は『労働時間が短く休日増えればいい』だけではない。やりがいを持ち、明るく元気に働ける職場環境を作って将来に繋ぐことが私達の役割。取り組みの先、社員が幸せになり、会社が成長し、良い社員が集まり、定着率が高まる――という良い循環を生むことが大切」と、時短に留まらない、働く環境改善の重要性を改めて強調していた。

今期人員増もアンカーキャストは計画未達

19年度にかけての活動方針の中では、「使い勝手が悪い」と指摘されていた第8次NEKOシステムの改定版が10月下旬より、まずは1万5000台ほど現場への導入が開始されることが報告された。一方で、新型集配車両の開発はメーカー側との調整がついておらず、組合としては、既存車両への運転支援装置などの導入を会社側に求める方針。加えて、社内で自動車運転免許を取得でき、安全運転指導が行える教習・研修施設の開設も提案していく。

サービス面ではクロネコDM便の“在り方”が議題に挙がった。片山氏は「本当に毎日配る必要があるのか、正月三が日ぐらいやらない日があってもいいのではないか、と会社に投げかけたい。日本郵便も土日配達の廃止・縮小を総務省が検討しているようで、それを踏まえて考える必要がある」と述べた。

ヤマト運輸の今期8月までの採用状況はフルタイマーが入社2123人、退社1063人の1060人増、パートタイマーが入社1万3794人、退社1万1051人の2698人増となり、全体では増員が進んだことが報告された。一方で、1万人体制を目指す「アンカーキャスト」は9月までに5237人雇用する計画だったが、実際には1843人で大幅な未達だった。

なお、18年秋季生活改善交渉では、年末一時金平均80万円とキャリア・パート組合員の年末一時金引上げを要求していく。
(2018年9月25日号)


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