危険物倉庫、需要増で新設相次ぐ
危険物倉庫の新設が全国各地で相次いでいる。従来、危険物倉庫の立地は主要港やコンビナート地区が主体だったが、最近は地方港や内陸部でも需要が拡大。危険物倉庫事業への新規参入も見られるようになった。旺盛な需要の背景には、危険物の保管にかかるコンプライアンスの高まりや主要港への集中緩和、トラックドライバー不足に伴い、エンドユーザーに近いストックポイントの引き合いが増えていることなどもあるようだ。
地方港、「併設型」、内陸などでの需要も旺盛
目立ってきたのが地方港での新設。兵機海運(本社・神戸市中央区、大東洋治社長)は8月30日、飾磨港地区で姫路初となる危険物倉庫を竣工した。姫路支店(姫路市飾磨区)敷地内に建設し、高床式の平屋倉庫の延床面積は約860㎡。阪神港など大都市圏で危険物を取り扱う倉庫需給がひっ迫する状況が続き、近いエリアである姫路・播磨地区でもニーズが高まっているという。
大郷運輸(本社・宮城県塩釜市、高橋利滋社長)は東邦運輸倉庫(本社・仙台市宮城野区、黒川久社長)との協業により危険物倉庫を建設し、9月5日に竣工。保税蔵置場の許可を得て輸出入貨物にも対応する。床面積約1000㎡は仙台港地区の危険物倉庫としては最大級。仙台港まで約8㎞とショートドレージ距離の立地にあり、仙台港を利用する輸出入貨物も取り込む。
リンコーコーポレーション(本社・新潟市中央区、南波秀憲社長)では東港支社(新潟県聖籠町)と隣接する自社所有地に990㎡の危険物倉庫を建設し、9月末に着工、3月頃の運用開始を目指している。新潟港エリアで初めてとなる本格的な営業用危険物倉庫で、化学品メーカーのアジア向けの輸出で新潟港から輸出しやすい環境が整う。多品種小ロット貨物も想定し、固定ラックを導入する予定だ。
門司港太刀浦地区では東海運(本社・東京都中央区、長島康雄社長)が、新門司で来年4月に「インランドコンテナデポ」として開業予定だ。当初計画として、ISOタンクコンテナを80基蔵置可能な危険物屋外貯蔵施所と1000㎡の危険物倉庫(1・4・5類対応)を建設。加えて、危険物一般取扱所と定温(2室・1~20℃)危険物倉庫(1000㎡)の建設についても検討中だ。
「併設型」の危険物倉庫も増えてきた。センコー(本社・大阪市北区、福田泰久社長)は8月9日、「加須PDセンター」(埼玉県加須市)の敷地内に「2号倉庫」と危険物倉庫3棟(計2892㎡)を新たに建設した。一般の保管と併せて危険物を保管するニーズに対応したもの。カンダホールディングス(本社・東京都北区、勝又一俊社長)も2月開設の「加須豊野台物流センター」(埼玉県加須市)に危険物倉庫を別棟として設けている。
内陸での需要も旺盛だ。三菱ケミカル物流(本社・東京都港区、福田信夫社長)では、首都圏ロジスティクスセンター(埼玉県加須市)内で倉庫のスクラップ&ビルドを行い、10月に定温危険物倉庫(135㎡)、常温危険物倉庫(455㎡)、4階建て一般品倉庫(5184㎡)の3つの倉庫の工事が完成。昨今引き合いが増加している危険物取扱いニーズへの対応力を強化する。
保土谷ロジスティックス(本社・東京都中央区、森次則彰社長)では、郡山営業所(福島県郡山市)で危険物倉庫2棟(計2000㎡)を新設する。東北への誘致が進められているILC(国際リニアコライダー=International Linear Collider)計画を念頭に、高付加価値の化学品・危険物の保管に対応できる施設を整備する。同営業所の危険物倉庫がほぼ満床で稼働しており、早ければ来春から稼働予定。
丸善(本社・東京都江東区、藤井宏幸社長)では、柏事業所(千葉県白井市)で危険物倉庫2棟(800㎡と270㎡)と普通品倉庫1棟の計3棟を増設し、10月から稼働する。内陸部での旺盛な危険物保管のニーズに対応してキャパシティの増強を図るとともに、新たに消防法危険物第4類1石、第3類も取り扱い可能とする。既存の倉庫がほぼフル稼働していることから隣接地を取得し、拡張した。
危険物物流専業も事業基盤の拡充に意欲を見せる。築港(本社・神戸市中央区、瀬戸口仁三郎社長)では、千葉県市原市に危険物倉庫2棟を新設し、10月から稼働させる。京葉臨海鉄道の玉前駅の遊休地に同社が建設する2棟の危険物倉庫(1棟あたり1000㎡)を築港が借り受けて運用する。千葉県湾岸部で自社で危険物倉庫を運営するのは初めてで、ニーズに応じて横浜化学品センターと使い分けていく。
労働力不足により危険物倉庫での自動倉庫の導入も注目される。三和倉庫(本社・東京都港区、瓜生博幸社長)では、川崎事業所(川崎市川崎区)で危険物自動立体倉庫が6月20日に竣工した。既存倉庫のスクラップ&ビルド(S&B)にあたり、収容能力の拡大と省人化を目的とし、立体自動倉庫を採用。危険物自動立体倉庫は事業所内で2棟目となったが、収容能力アップとともに作業効率も重視した仕様とした。
(2018年9月11日号)