ズームアップ 睡眠不足運転者の乗務禁止がスタート
睡眠不足のトラック運転者に乗務を禁止する改正輸送安全規則が1日から施行された。点呼時にトラック運送事業者が運転者の睡眠不足の状況を確認することも義務化。睡眠不足に起因する事故防止の効果が期待される。睡眠時間が何時間必要かは個人差があるため、「睡眠時間が一定時間以下であった場合は乗務させてはならない」といった一律の基準は設けず、睡眠不足も「自己申告」がベースとなる。このため、トラック運送事業者にとって比較的負担が少ないという意見もある一方、実効性を疑問視する声もある。
点呼時の記録事項に「睡眠不足の状況」を追加
今回の改正では、トラック運送事業者が運転者を乗務させてはならない事由として「睡眠不足」を追加。乗務前点呼で報告を求め、事業者が確認する事項に「睡眠不足により安全な運転をすることができないおそれの有無」を加えた。
また、運転者が遵守すべき事項として、睡眠不足により安全な運転をすることができない、または継続できないおそれがあるときは、その旨を申し出なければならないこととし、トラック運送事業者の点呼時の記録事項に「睡眠不足の状況」を追加した。
国土交通省によると、睡眠不足により安全な運転をすることができないがあるか否かは、運転者の自己申告のほか、運行管理者が運転者の顔色、仕草、話し方も含め「普段と様子が違わないか」などを見て総合的に判断する。
運転者が「睡眠不足ではない」と申告している場合でも、運行管理者等が当該運転者の普段の様子等から考慮して「睡眠不足である」と判断した場合には、当該運転者を乗務させてはならない。
6~7時間の連続した睡眠をとることを推奨
なお、国交省では「自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う一般的な指導及び監督の実施マニュアル」を作成し、従来から6~7時間の連続した睡眠をとるよう指導することを推奨している。
1日付でこのマニュアルを改訂し、厚生労働省の「健康づくりのための睡眠指針2014~睡眠12箇条~」の中で「睡眠時間が6時間未満の者では7時間の者と比べて居眠り運転の頻度が高い」等の研究結果等を紹介している。
今回の改正の背景となった、2016年3月に発生した東広島市・八本松トンネルでの死者2人が出たトラックによる多重事故では、ドライバーが睡眠不足による過労状態だったことが原因となっており、対策が求められていた。
全日本トラック協会(坂本克己会長)ではトラック運転手の健康起因事故の防止に力を入れており、脳・心臓疾患による過労死請求・支給決定数が最多業種という状況を踏まえ、労務・運行管理や疲労・健康管理の強化策も盛り込んだ「過労死等防止計画」を3月に策定。
「乗務日前日の睡眠時間が最低5時間以上になるようにし、少なくとも週に2回以上、睡眠環境が整った場所で6時間以上の夜間睡眠を確保する」ことや「乗務前点呼では直前の就寝時刻と起床時刻を申告・記録させる」ことなどを取り組み項目として挙げた。
全ト協交通・環境部では「これまでの『健康状態』の確認等と併せ、6月からの『睡眠状況』の点呼時での把握等を確実に行うことで健康状態等が起因する事故の根絶に向け、業界をあげて取り組む」とコメントしている。
(2018年6月12日号)