住友倉庫が倉庫管理ツールにIoT技術活用
住友倉庫(本社・大阪市北区、小野孝則社長)では、IoT技術を使った倉庫管理ツール「i‐WarehouseⓇ」を開発し、大阪エリアの倉庫で運用を開始した。同様に輸出入関連事務の効率化支援システムやトラック予約システムの開発も進めており、将来的にはグループ内外向けに物流現場のノウハウと最新技術を融合させたロジスティクスプラットフォームの提供を目指す。
身近なツールの組み合わせで事務・作業の生産性を向上
「i‐WarehouseⓇ」は、モバイル通信網とIoT機器を利用した倉庫管理ツール。庫内作業の標準化と事務・作業の生産性向上を図るとともに、集積されたビッグデータを分析・加工することで作業管理と業務改善に役立て、顧客の物流最適化に資するデータの提供を行う。
システム構成としてはスマートフォンや音声機器等のウェアラブル機器など身近なツールを組み合わせて使用。LANケーブルや無線アンテナ敷設といった設備投資が不要で、スピーディーでリーズナブルに導入可能。貨物の変化や倉庫の移転にも柔軟に対応でき、営業倉庫の実態に即した運用ができる。
従来は、事務所で出力した紙の伝票を基に作業指示が行われており、伝票が事務所と倉庫を行き来しなければならず、「いわば紙と一緒にヒトが動いていた」(藤村成一常務執行役員)。事務所で出力される大量の伝票の仕分け、伝票を基に入出庫データ他のWMSへの入力など人的負担が大きかった。
「i‐WarehouseⓇ」では、作業員はスキャナを片手に装着し、もう片方の手にスマホを固定。フォークリフトにはタブレットを搭載する。貨物のバーコードをスキャナで読み取るとBluetoothを経由し、端末と情報が連動する仕組みだ。作業指示と完了確定が双方向でリアルタイムに行われることで、進捗状況が可視化され事務所と倉庫間の情報共有が実現することとなる。
大阪・南港の倉庫で生産性向上に向けた運用を開始
例えば出庫の場合、事務所からの出庫指示は紙の伝票ではなく、作業員のスマホやタブレットに出荷指示データが飛び、ペーパーレスを実現。また、スマホのテレビ電話機能を使い、入庫時の貨物ダメージについても事務所のスタッフと即時に情報共有でき、事務所と倉庫の不要な移動をなくせる。
庫内作業を一括で管理し、荷主別、フロア別、エリア別に作業の進ちょく状況がリアルタイムに可視化されるため、タイムリーで的確な応援体制が取れる。また、蓄積されたデータを基にABC分析を行い、動線が最短になるようなロケーションの変更を行えるなど改善活動に役立てられる。
1月中旬から大阪・南港の倉庫で運用開始しており、音声ピッキングシステムも採用。2拠点目として大阪市内の事務機器の配送センターにも展開。出荷件数が非常に多い同センターでは、ペーパーレス化により一層の合理化が進展する見込み。
輸出入関連事務の効率化、トラック予約システムも開発
なお、輸出入関連事務の効率化システムを開発中。また、横浜・南本牧ふ頭で建設中の新倉庫へトラック予約システムも導入予定で、ドライバーがスマホから受付し、事務所に寄る手間を省くとともに、待機時間の短縮につなげる考え。
住友倉庫では、物流の高度化に対応した高品質な物流サービスを提供するため、従来から情報システム部門に力を入れてきた。2006年にはソフトウエア受託開発のアイスターを子会社化。情報システム面での多様な顧客ニーズへの対応力向上を図るとともに、コンピュータソフトウエア開発受託業務に事業領域を拡大した。
17年度から3ヵ年の中期経営計画では、国内物流事業の基盤強化を念頭に、AI、IoTおよびロボティクス等を活用した先進的ロジスティクス技術を取り入れ、物流オペレーションのさらなる効率化と、より付加価値の高い物流サービスを提供することとし、17年4月1日付でロジスティクス・エンジニアリング(LE)推進室を新設した。
LE推進室は情報システム部門、営業部門、大規模配送センターの現場経験者などから構成され、物流ソリューションのノウハウを集積。情報システム部門や内務部門、営業部門など関係者と連携し、LE技術の研究開発やRPA(Robotic Process Automation)の導入支援を行っている。
藤村常務は、労働力不足対策について「荷主専用倉庫なら大掛かりなロボットや大規模マテハン機器の導入は可能だが、荷動きに波動性があり、貨物や荷主が変わっていく営業倉庫では、極力、作業を機械に置き換えつつも、進化するITツールを組み合せて人の作業を効率化するソリューションが求められる」とし、今後はLogistics4.0の中心となるIoTに加え次世代通信5Gによって、「i‐WarehouseⓇ」を核とした統合的な物流システムの水平展開を推進する意向を示した。
(2018年6月12日号)