大和ハウスとダイワロジテックが次世代物流「プロト」を稼働
大和ハウス工業(本社・大阪市北区、芳井敬一社長)とグループ企業のダイワロジテック(本社・東京都千代田区、秋葉淳一社長)は18日、大和ハウスグループが運営する物流施設「DPL市川」(千葉県市川市)内に「Intelligent Logistics Center PROTO(インテリジェント・ロジスティクス・センター・プロト)」を開設し、25日から稼働開始すると発表した。
18日に「DPL市川」において、荷主企業であるファッションレンタル事業を展開するエアークローゼット(本社・東京都港区、天沼聰社長)、Eコマース運営・Eコマース物流支援事業のwaja(ワジャ、本社・東京都港区、村田高宗CEO)、Eコマース・Webサービス事業のTokyo Otaku Mode(トーキョー・オタク・モード、所在地・東京都渋谷区、小高奈皇光社長)の3社と大和ハウス工業、ダイワロジテックが共同説明会を開いた。
シェアリングによる従量課金制のサービス
会見に出席した大和ハウス工業の浦川竜哉取締役常務執行役員は「『インテリジェント・ロジスティクス・センター・プロト』では、当社のノウハウやAI、IoT、ロボットなど先端技術を活用し、高機能・高効率の物流サービスを提供していく。エアークローゼット、ワジャ、トーキョー・オタク・モードの3社の物流業務を担うとともに、次世代の物流システム構築に向けた新たなプロジェクトとしても推進する」と説明した。
「プロト」は、荷主企業3社の物流を合わせ、同一スペースで作業員や設備、システムなどを共同利用(シェアリング)するビジネスモデルとして運営される。大和ハウスグループが施設と作業員、設備、システムなどをトータルで提供し、荷主は物流サービスを利用した分だけ料金を支払う「従量課金制」を採用した。
ダイワロジテックの秋葉社長は「荷主企業は高度なマテハン機器やロボットを個社で持たず、シェアリングすることで物流コストの初期投資を軽減でき、システム構築も早期に行える」と述べ、「機器やソリューションは当社が提供し、それを活用していただくことがお客様のメリットになる。そのため、スペースの賃貸料を収受するかたちではなく、サービス提供による従量課金制とした」と説明した。
同社では「プロト」の取り組みを進化させ、荷主や物流会社などあらゆる企業に対応可能なトータルロジスティクスソリューションを提供していく考え。顧客のビジネスモデルによっては貨物が中長期的に保管される場合も想定されるが、その場合は従量課金制にこだわらず、適切なスペース賃貸料金を設定することも視野に入れている。
今後「プロト」は物流シェアリングモデルのショールームであるとともに先端的物流サービスのR&Dセンターとしての役割も果たしていく。
「バトラー」を30台導入、4割の省力化を目指す
「プロト」のプロジェクトにはグループ会社のGROUND(本社・東京都江東区、宮田啓友社長)も参画。GROUNDの提供する自動搬送ロボット「Butler(バトラー)」を30台導入した。稼働が本格化した後は、ピッキングや棚入れ作業の大幅な効率化により、出荷量あたりの労働力を約40%削減できる。バトラー専用の可搬式棚(MSU)を400基設備しているが、MSUは背高型で高い部分にも商品を置けるため、1基あたりの保管効率も2割向上する見込み。
「プロト」ではEコマース商品の「ささげ(撮影・採寸・原稿)」サービスも提供するが、同業務は「ささげ」の高度なノウハウを持つワジャが担当する。
さらに、エアークローゼットとトーキョー・オタク・モードも、荷主としてサービスを利用するだけでなく、両社の知見を「プロト」に反映させることで、プロジェクトの進化に貢献していく考え。
オンラインのバース管理システム導入
「プロト」はトラックドライバーの長時間労働抑制と入庫効率アップに向け、Hacobu(ハコブ、本社・東京都港区、佐々木太郎社長)が開発したクラウド型配車・運行システム「MOVO(ムーボ)」を導入した。トラックバース管理の効率化と入庫時の書類作業のデジタル化により、トラック待機時間を削減する。
同システムは、納品予約をはじめ、バースへの割り当て、納品車両情報の登録、受付、ドライバー誘導などをオンラインで完結できる。受付の場合は、バース設置カメラが、車両のナンバープレートを捉え、画像から車両を特定することで、事前登録した車両の確認。受付業務を大幅に省力化できる。
今回ハコブが「プロト」に導入するシステムはプロトタイプだが、技術的改良を進めることでさらなる性能向上を図る。
秋葉氏は「シェアリングの効果により、トータルの業務では約30%の生産性向上が見込まれている」と強調した。
第2弾は「DPL流山Ⅰ」、全国へ水平展開を図る
年内には「DPL流山Ⅰ」(千葉県流山市)の2階部分でも「プロト」の取り組みを開始する。浦川氏は「本格稼働により蓄積したノウハウを、全国に向けて発信していく」と述べ、「インテリジェント・ロジスティクス・センター」のシェアリングモデルを他のマルチテナント施設へ水平展開していく考えを示した。
(2018年4月24日号)