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トラック運賃、緩やかながらも上昇基調に

2023.02.09

トラック運賃が緩やかながらも上昇基調に転じているようだ。トラックドライバーの労働時間が短くなり、ドライバー不足がさらに深刻化する「2024問題」への危機感をはじめ、燃料費・人件費の高騰を受けてトラック運送事業者の価格転嫁、値上げ交渉の成果が徐々にだが見え始めている。先月末、業界大手の佐川急便が4月からの宅配便運賃の値上げを発表したのに続き、6日にはヤマト運輸が同じく4月から宅急便などの値上げを行うことを明らかにし、今後は他の大手が追随する可能性がある。値上げが遅れている中小トラック事業者の底上げも課題となる。

12月は中長期・スポットともコロナ禍以降最高水準

日銀が発表している、企業向けサービス価格指数によると、「道路貨物運送」の11月(速報)の指数は「111・8」となった。コロナ禍の20年6月の「110・2」を“底”に、緩やかに上昇基調が続く。同指数は中長期契約運賃の指標という位置づけだが、22年は7月以降、「111」台が継続し、11月はコロナ禍以降で最高の水準に達した。

一方、スポット運賃の指標となる、全日本トラック協会の求荷求車情報ネットワーク「WebKIT」の成約運賃指数をみると、12月は「130」となった。22年度は8月以降、「120」台が継続し、前年同月の指数を上回って推移。年末年始に向けた物流需要が増大する12月は前月比6ptの伸びを見せ、12月としては19年度以来の「130」台となった。
値上げが浸透しつつある様子は、大阪府トラック協会の景況感調査の結果からもうかがえる。10~12月の「運賃・料金の水準」は、「上昇」が28・3%と3割弱となった。運賃交渉の努力が実ったのか「やや上昇」が大きく増えている。一方で、「低下」は3・3%と「上昇」を大きく下回っており、全体としての運賃水準の上昇基調が感じられる。

コスト100円の上昇で20円しか転嫁できず

ただ、値上げ幅は十分とまでは言えなさそうだ。帝国データバンクが昨年12月に行った価格転嫁に関する実態調査によると、業種全体で約7割の企業で多少なりとも価格転嫁できているが、価格転嫁率は39・9%と4割に届かない実態が明らかになった。中でも「運輸・倉庫」の価格転嫁率は20・0%と相対的に低く、「コストが100円上昇しても20円しか転嫁できていない」という状況が続いている。

中小企業庁が発表した昨年9月の価格交渉促進月間フォローアップ調査の結果でも、業種別で「トラック運送」は、受注者側で価格転嫁に応じてもらえた業種で最下位。価格転嫁の状況は「0割」が3割を超える。発注者側で価格交渉、価格転嫁に応じている業種でも「トラック運送」は最下位で、下請けに支払う側の元請けですら、荷主への価格転嫁が十分に行えていない様子がうかがえる。

佐川、ヤマトが値上げを発表、業界に波及するか

こうした中で、1月27日に佐川急便が4月からの宅配便等の価格改定を発表。物価高騰と「2024年問題」を見据え、宅配便のインフラと品質を維持・向上することを目的とし、飛脚宅配便の値上げ率は平均で8%程度となる。車両高騰や従業員およびパートナー会社の労働環境改善も狙いだという。6日にはヤマト運輸も宅急便などの届出運賃を4月から改定することを発表し、約10%の値上げとなる。

17年には、ヤマト運輸が法人顧客に一斉値上げを行い、この“ヤマトショック”を機に、大手トラック運送事業者がこれに追随。さらには中小トラック運送事業者も後押しされて、業界全体として値上げの機運が一気に高まった。今回は佐川、ヤマトに続く大手の動きや中小トラック運送事業者への波及が注目される。
(2023年2月9日号)


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