消防庁、リチウム電池の保管で規制見直し案公表
危険物倉庫関係者が注目していた、リチウムイオン蓄電池の保管規制緩和の方向性が明らかになった。消防庁の検討会はこのほど、リチウムイオン蓄電池を貯蔵する屋内貯蔵所の面積、階数、軒高制限の見直し案を公表。高感度天井スプリンクラー設備の導入などにより、これら規制を緩和しても安全性を確保ができるとした。ただ、施設の大型化が可能になる一方で、高感度スプリンクラーや貯水槽の整備など大きな投資を伴う見通しだ。
容易に消火できない樹脂製パレットは不可
一般に、リチウムイオン蓄電池の電解液は消防法で定める危険物(引火性液体)で、火災等が発生した場合には、電解液や可燃性ガスがセルの外部に噴出・着火し、激しく火炎を噴き出す。海外でも倉庫火災事例が報告されており、国内では、リチウムイオン電池を倉庫に保管する場合、消防法上の規制により、原則「平屋建て」で、「軒高は6m未満」、「床面積は1000㎡以下」となっている。
こうした中、電気自動車(EV)を普及させるため、大量の車載用リチウムイオン電池を貯蔵できるようリチウムイオン蓄電池を倉庫に貯蔵する場合の面積、階数、軒高の制限について撤廃要望が出され、消防庁は2022年3月に「リチウムイオン蓄電池に係る火災予防上の安全対策に関する検討会」を発足。12月の消火実験を経て、1月5日に第3回会合が開催され、見直しの方向性が示された。
検討会では、規制緩和の要望を受けて短期間で成果を上げるため、すでに実績のある海外の保険会社の基準を参考に、「天井のみにスプリンクラーヘッドを設ける場合」と「天井およびラック内にスプリンクラーヘッドを設ける場合」について実験を実施。消火実験に先立ち、リチウムイオン蓄電池の燃焼特性を検証するための燃焼実験を行った。
消火実験のうち、一般のラック式倉庫に設けるのと同じスプリンクラーでは、一定の火災の抑制効果はあるものの、上段の燃えぐさが下段への散水障害となった。また、樹脂製のパレットが溶融し、燃えながら下段に垂れ下がったことで、作動後もしばらく火勢が衰えず、現時点では有効な消火方法とは言えないと判断した。
天井に設置するスプリンクラー設備による消火実験では、スプリンクラー作動後迅速に火勢を押さえ込めたことを確認。使用したスプリンクラー設備と同等以上の放水性能があり、貯蔵方法も同等であればリチウムイオン蓄電池の火災を初期に消火することが可能で、貯蔵に係る規制を緩和しても火災安全性が確保されると判断した。
併せて、屋内貯蔵所が長時間の火災に耐えられるよう耐火構造とし、かつ、スプリンクラー設備が早期にかつ確実に放水できるよう、開放型のヘッドを用い、自動火災報知設備の感知器に連動して作動するようにする。なお、樹脂製のパレットは長時間炎がついたまま容易に消火できないことから、パレットは樹脂製以外とすべきであるとしている。
(2023年1月17日号)