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貨物鉄道は「公的ミッション背負う唯一無二の存在」=国交省

2022.08.02

国土交通省は7月28日、「今後の鉄道物流のあり方に関する検討会」(座長=根本敏則・敬愛大学経済学部教授)の第5回会合を開催し、鉄道貨物の輸送量拡大やJR貨物の経営自立支援に向けた提言をとりまとめた。提言内容はJR貨物の鉄道事業の強化策の指針として活用していく。中間報告では鉄道貨物輸送がカーボンニュートラル実現やトラックドライバー不足への有効な対応策であり、災害時・有事の物資輸送を担う公的インフラと明記。その上で貨物鉄道の課題を指摘し、鉄道輸送の改善を導く内容とした。

公的輸送手段として期待、一方で脆弱性も

貨物鉄道輸送はCO2排出量原単位が小さく、1編成で大型トラック最大65台分の貨物を1人の運転士で輸送できるなど環境性能に優れ、ドライバー不足に対応できるメリットを持つと明記。加えて「公的ミッションを背負う唯一無二の存在」として、平時の内陸部へのエネルギー輸送や災害時・有事の物資輸送を担う公的なインフラとして期待されていることを強調した。一方、2013年以降は輸送量(輸送トンキロ)が横ばいから減少傾向にあり、輸送機関別の分担率も約5%で変化がなく、期待に対して十分に応じられていない点も指摘した。また、地球環境問題への対応などからモーダルシフトの機運が高まる中、JR貨物の鉄道事業には脆弱さが解消されず、経営基盤強化を目的に30年度まで国鉄長期債務等処理法に基づく支援を継続することとしている。

こうした状況を踏まえ、中間報告ではJR貨物を中心に他の物流事業者、荷主など幅広い関係者が一丸となり、カーボンニュートラルなど政府目標を達成する必要を強調。そのためにJR貨物は経営自立化のための鉄道部門の収支改善と輸送量・輸送機関別分担率の拡大による社会貢献が必須になるとした。その目標に向け、JR貨物はKGI(最終目標指標)やKPIを設定し、国とともに達成状況を確認・公表すべきとした。今後JR貨物は国交省や鉄道利用運送事業者(通運事業者)と連携し、提示された課題に対応する取り組みを推進していく。

14の課題を提示し、貨物鉄道の拡充に道筋

提言では「貨物鉄道の輸送モードとしての競争力強化」「貨物鉄道と他モードとの連携」「社会・荷主の意識改革」の3つの視点から14の課題を抽出した。

競争力強化の視点から潜在的輸送ニーズの取り込みを重視。ブロックトレインの設定を増やすほか、貨物駅のコンテナ留置能力を高める。輸送力増強の必要性がある場合は、線路を保有するJR旅客会社とも協議する。また、一般的な12ftコンテナ以外の輸送ニーズに対応する重要性を指摘し、定温コンテナや31ftコンテナの活用や国際海上コンテナ(40ft背高)の海陸一貫輸送範囲の拡大に取り組む。

災害時の輸送障害への対応力を強化することが不可欠だとし、①輸送障害の発生抑制②迂回・代行輸送のための拠点駅強化③トラック・内航海運による代行輸送の強化④JR貨物・荷主・通運事業者・関係団体の連携促進――などを図る。
全国一元的な貨物鉄道輸送サービスの維持・発展に必要な費用を持続可能な形で負担するための方策を検討する。他モードに対してリードタイムや輸送品質で競争力を持つため、新幹線による貨物輸送の拡大を検討することも提言した。

社会・荷主に対し貨物鉄道のメリットをPR

貨物鉄道と他モードとの連携の視点からは、幅広い荷主や物流事業者に広報を行い、認知度向上を図るとともに利便性向上に努める。物流効率化が競争力につながる考えからパレット化輸送を促進する仕組みづくりを行う。また、ニーズの大きな駅を中心に運用効率を高める駅機能を強化、高度利用やアプリを活用した貨物鉄道のスマート化を図る。

社会・荷主の意識改革の視点では、貨物鉄道の特性や優位性に関する認知度の向上が重要だとし、CO2排出量原単位の小ささや1編成の輸送力の大きさを社会や荷主に向けて周知していく。荷主の商品が環境対応に配慮した商品であることをPRする「エコレールマーク」の認知度向上を図る。加えて、貨物鉄道輸送を利用するインセンティブをさらに強化するため、エネルギー使用量やCO2排出量を正確に算定できる仕組みを構築する。これにより省エネ法や温暖化対策法で規定された報告への活用や温室効果ガスの排出削減量や吸収量をクレジットとして国が認証する「Jクレジット制度」への申請やESG経営への融資呼び込みなどに活用するなどを提言した。
(2022年8月2日号)


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