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国内貨物輸送量は「コロナ前」水準に戻らず=NX総研

2022.07.14

NX総合研究所(本社・東京都千代田区、廣島秀敏社長)は8日、「2022年度の経済と貨物輸送の見通し(改訂)」を発表した。22年度の世界経済成長率は3・6%プラスと国際通貨基金(IMF)の見通しに準拠。その上で22年度の日本経済について、実質経済成長率は2・0%増と21年度の2・2%増よりも若干の減速を予測した。実質GDPはコロナ前の19年度の水準をわずかながら下回る見込み。22年度の貨物輸送量については、消費関連貨物では4・9%のプラスが予想されるものの、生産関連は0・5%減、建設関連は3・2%減と落ち込み、全体では0・6%減と再びマイナスとなると見込んだ。

国内貨物輸送量は再びマイナスに反転

オンラインによる説明会に出席した佐藤信洋シニアコンサルタントは、21年度の貨物輸送量は、上期が4・6%増と堅調に推移、下期は生産関連貨物の不振などを受けて1・4%増と増加幅は縮小し、通年では2・9%増と5年ぶりにプラスへ転換したと説明。一方、22年度について、「消費関連は4・9%増と前年より0・7pt上昇するものの、鉱工業生産の足踏みなどを受け、生産関連は0・5%減とマイナスに反転。建設関連は大規模土木工事の執行が期待できない中で3・2%減」と予測。消費関連と生産関連を合わせた一般貨物の輸送量を前年と比べると21年度の3・0%増から22年度は1・6%増と1・4pt低下するとし、「全体では0・6%減と若干ながら再びマイナスに反転し、コロナ前の水準にまで戻せない」とした。

22年度の品類別貨物輸送量をみると、消費関連は上期が6・7%増、下期は3・3%増となり通年でもプラス。生産関連は上期が5・1%減と落ち込み、下期は4・0%増と回復するものの通年では0・5%減。建設関連は上期が3・6%減、下期は2・8%減、通年では3・2%減と予測。

現在、国内では新型コロナウイルス感染症の第7波の襲来とも言われ、一部では経済への悪影響が懸念されている。これに関して佐藤氏は「(コロナ禍の第7波は)21年度ほどの下押し圧力はないと思われる。当然ながら今後の重症化率などを見ながらの判断となるだろうが、政府はコロナ対策が景気悪化につながらないよう舵取りしていかざるを得ない」との見通しを述べ、マイナスダメージを過大評価しないよう注意を促した。

営業トラックは2年連続の増加だが若干減速に

輸送モード別の貨物輸送量については、JRコンテナは21年度が1・8%減、22年度は前年度の反動もあり2・0%増と3年ぶりにプラスを回復。JR車扱は21年度が0・1%増、22年度は石油価格の高騰が需要を押し下げることで1・2%減と再びマイナス。営業用トラックは21年度が2・0%増、22年度は若干減速して1・5%増と2年連続のプラス。22年度は消費関連貨物が堅調な動きを示すが生産関連が伸び悩み、建設関連も低調な動きが続く予想。自家用トラックは21年度が4・0%増、22年度は4・4%減とマイナスに反転すると見込む。特積み貨物は21年度が4・2%増と17年度以来、4年ぶりに増勢をみせた。続く22年度は宅配便などを中心に1・6%増と堅調に推移する見込み。

内航海運は21年度が6・4%増、22年度は1・8%減。原材料や燃料の価格高騰が輸送量を下押しすると予測した。国内航空は21年度が12・1%増と13年度以来8年ぶりにプラスへ転換。22年度はコロナ禍で落ち込んだ供給力の回復が期待できることから11・2%増と前年に続き2ケタ増の予想。

国際貨物をみると、外貿コンテナの輸出は21年度が6・6%増、22年度は2・6%増。海上輸送の混乱などが輸送量を下押しすると予測した。輸入は21年度が4・3%増、22年度は生産財の荷動きが鈍化し、前年度よりもプラス幅は縮小し、2・9%増の見込み。

国際航空の輸出は21年度が29・7%増、22年度はプラスを維持するものの、増加は1ケタ台の4・2%増となる見込み。輸入は21年度が23・8%増と4年ぶりに伸長するものの、22年度は2年連続の増加だが、中国のコロナ対策による上海のロックダウンの影響などを受け、伸び幅は4・0%増にとどまると予想した。

直近の荷動き動向の実績は水面下に転落

製造・卸の事業者(739社から回答)を対象とした調査による荷動き指数の速報値も発表した。それによると22年4~6月期実績(見込み)指数は前期(1~3月)日12pt低下の「マイナス8」となった。実績(見込み)の指数がゼロ水準以下となったのは21年1~3月期の「マイナス16」以来、5期ぶりのこと。また、7~9月見通しも低下し、前期(4~6月)比4pt低下の「プラス3」となった。実績と見通しのいずれも22年は下降の傾向がうかがえる。
(2022年7月14日号)


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