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荷動き低迷、オリパラ対策が“逆風”に

2020.06.25

今夏の開催に向け準備してきた東京オリンピック・パラリンピック対策が、トラックの荷動き低迷に拍車をかけている。大会期間中の渋滞回避や交通量削減のため、工事の抑制や資材の発注停止を決めていたことから、緊急事態宣言が解除されてもなお荷動き回復の鈍化に拍車をかけている。トラック運送事業者の一部からは、新型コロナウイルスにより経済・消費活動が低迷していたところに、“モノの動きを抑制する”オリパラ対策という“逆風”が吹き、「9月まで荷量が戻らない可能性がある」と悲観的な声も上がっている。

コロナ、オリパラ対策でダブルパンチ

「コロナの第一波は収まってきているのに、なぜモノが動かないのか」――。東京都内の中小トラック運送事業者の経営者はため息をつく。4月7日に発令された緊急事態宣言は5月25日に全都道府県で解除された。経済活動の再開に伴い、輸送需要も徐々に回復していく期待があったが、「6月も暇な状態が続いている」という。

その理由として挙げられるのが「オリンピック対策」だ。今年は新型コロナの影響で大手ゼネコンが4月に工事を休止したこともあり、建材関連の荷動きは例年以上に落ち込んだ。ここへ来て、「7月になれば回復したかもしれない荷動きが、オリンピック対策のために抑制されている」とダブルパンチを受けている状況だ。

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、来年に延期が決まった東京2020大会(オリンピックが7月24日~8月9日、パラリンピックが8月25日~9月9日)では、交通量を削減するため、工事関連事業者に大会期間中を外した工期を要請。工事発注時期の調整や工事の一時休止、工事関連車両数削減などへの協力を求めていた。

東京2020大会が延期され、都も工事等の調整を1年後ろ倒しするとしているが、実際に現場は動いていない。「荷動きが悪いのは、どこまでがコロナのせいで、どこまでがオリパラ対策によるものなのか判断がつかないが、パラリンピックが終わる予定だった9月まで荷動きは戻らないかもしれない」と厳しい見方だ。

全日本トラック協会が5月に発表した景況感調査によると、1~3月期に一般貨物で輸送数量が「減少」した割合は59・3%、今後の見通しでは76・8%まで上昇すると予想されている。また、今後の景況感についても、43・5pt下がって▲125・2と大幅に悪化する見込みだ。

日本の総輸送トン数のうち、営業用トラックが輸送した建設関連貨物は2017年度に7億3152万6000tで構成比では24・3%を占めている。コロナによる4月の工事休止から連続し、オリパラ対策で建設関連資材や設備の搬入がストップすれば、トラック事業者の景況感の悪化は長引く可能性がある。
(2020年6月25日号)


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