トランコム、全ての経営資源を「はこぶ」に集中
トランコム(本社・名古屋市東区、恒川穣社長)は4月27日、中期5ヵ年経営計画「TRANCOM VISION 2025」(2021~25年度)を発表した。今後のさらなるトラック不足を見越した上で、主要戦略を「あらゆる経営資源をTransportに集中」に据え、輸送を主軸としたネットワーク構築とトップラインの成長を図る。この5ヵ年の設備投資額は約350億円を見込み、計画最終年度にはM&Aを除くオーガニックのみの成長で売上高2200億円(21年3月期実績比44・4%増)を目指す。
国内取扱輸送量の増大で売上高2200億円へ
構造的なドライバー不足に加え、24年度の運輸業における時間外労働の罰則付き上限規制施行を前に、輸配送モードを拡充するとともに、「はこぶ」を高度化したプラットフォームを荷主企業に提供することが競争優位性の発揮と、社会要請への対応につながるとの考え。パートナー企業とも連携しながら、トラックに留まらない多様な輸配送モードを用意するとともに、全社営業の強化と求貨求車サービスのさらなる高度化で、国内取扱輸送量を拡大する。
各事業におけるDX化も積極的に進め、幹線/支線配車システムの開発やパートナー企業とのシステム連係を推進。3PLなどを主軸とするロジスティクスマネジメント(LM)事業でも事業基盤を固めながら、輸送拡大につなげる。海外ではASEAN地区での成長を加速させる。
これに伴い、設備投資の内訳も、「はこぶ」機能の構築に向けた拠点投資が130億円と最大で、次いで情報サービス事業のDX化に約60億円、物流センターの自動化・省人化に約25億円を投じる。このほか、M&Aに約40億円、車両購入を含めた通常投資に約80億円を見込む。
一連の施策で、1日当たりの車両運行手配件数を20年度実績の8800件(幹線輸送市場シェア5・7%)から、25年度には1万5000件(10・0%)へ増やし、30年度には「はこぶ」プラットフォームを完成させ、2万3000件(15・0%)へ引き上げる。事業収入としては、物流情報サービスで毎年7%、LMで同5%の増収を計画するとともに、自動車部品輸送など新たな「はこぶ」サービスの拡大も図る。
M&Aによる成長分を含めずに目標値策定
4月28日にオンラインで開催された2021年3月期の決算説明会で、恒川社長は、「前中計(15~19年度)では増収分のうち約300億円をM&Aで積み増しできればという甘い考えを持っていたが、こうした成長はこの業界では難しいと感じた」として新中計ではM&Aによる成長分を含めず、目標への数字を積み上げたことを説明した。投資計画も同様に「前中計では圧倒的にM&Aへの投資を想定していたが、今回かなり考え方を変えた」。M&Aの基本スタンスは従前通り、規模拡大よりも機能拡充を目的とする。
中計全体の考え方については、武部篤紀取締役が「従来は生産から国際物流、国内輸送、ラストマイルまで一気通貫で進めてきたが、まずは『はこぶ』に注力し、様々な付加価値の付与とDXへの投資を行うことで、より便利で高度な物流を実現する」と話し、恒川社長も「これまでのような荷主と物流事業者の固定的な関係ではドライバー不足や脱炭素などの社会課題を解決できず、業界を横断した機能や仕組みを作る必要があると考えたことが今回の中計の根幹にある」と補足した。
中計の第1ステップとして、今期「まずは量を拡大する」
その上で、計画初年度となる今期(22年3月期)事業計画については、恒川社長が「まずは新しい仕組みを作るための材料を確保する1年であり、拡大戦略へのスタートの年」であることを強調。実際、今期業績予想は売上高1634億7000万円(7・3%増)、営業利益82億5000万円(0・1%増)、経常利益82億8000万円(1・4%減)、純利益54億7000万円(4・5%減)と利益面がやや弱含むが、その要因を「利益度外視というわけではないが、量をまず拡大することと、費用化されるシステム投資が結構あること」とした。
なお、今期計画における主要セグメント別の予想は、LM事業が売上高550億7000万円(0・5%減)、営業利益43億5000万円(5・4%減)、物流情報サービス事業が売上高914億7000万円(13・0%増)、営業利益33億8000万円(6・5%増)、インダストリアルサポート事業が売上高60億2000万円(2・4%増)、営業利益2億5000万円(34・6%増)としている。
(2021年5月11日号)