省エネ法、荷主評価のあり方見直しへ
省エネ法における荷主評価の在り方の見直しが検討されていることがわかった。2月19日に開催した総合資源エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギー分科会省エネルギー小委員会で運輸部門の省エネの取り組みの方向性のひとつとして示されたもので、現状のトンキロ法では積載率や燃費の向上の取り組みが評価しにくいことから、エネルギー使用量の算定方法の切り替えを促進するとしている。
積載率、燃費向上を評価しにくい
2050年のカーボンニュートラルの実現に向けては、電力部門の脱炭素化だけではなく、産業・民生・運輸部門の需要サイドで徹底した省エネを進めるとともに、使用するエネルギーの脱炭素化(エネルギー転換)を進めることが重要で、省エネルギー小委員会では具体的課題や対応策等について議論・検討を行っている。
小委員会で提示された、運輸部門における省エネ取り組みの課題と政策的方向性によると、自動車の燃費性能のさらなる向上とともに、輸送事業者・荷主の取り組み強化に関しては、省エネ法における荷主評価の在り方の見直しおよびAI・IoT等を活用した物流全体の効率化が必要であるとした。
18年の省エネ法改正により、輸送方法を決定する者を「荷主」と定義し、EC事業者を対象とするなどの見直しを行い、昨年4月から適用を開始している。荷主規制を通じた物流関係事業者の省エネ取り組みは重要だが、エネルギー使用量に係る算定方法の違いもあり、荷主の省エネ取り組みが適切に評価されていない可能性がある。
エネルギー使用量の算定方法の採用割合は18年度時点で、トンキロ法が60・1%と最多で、燃費法は26・5%、燃料法は13・4%となっているが、従来のトンキロ法では積載率や燃費の向上の取り組みが評価しにくい。このため、算定方法切替えの促進や、荷主の省エネ取り組みの評価のあり方の検討を進めている。
平均1t未満の小口化改善されず
また、1回の運送で運ばれる貨物の重量は減少から横ばいに転じたが、平均で1t未満である状況は変わらないなど小口化は改善されておらず、営業用トラックの積載効率は直近では約40%まで低下。輸送機器単体の省エネだけでは限界があることから、サプライチェーン全体の効率化・省力化を進める必要性が指摘された。
AIやIoT等の新技術を活用できれば、サプライチェーン全体で大規模な物流効率化・省力化が可能であるとし、小売事業者を含めたサプライチェーン全体の関係事業者が連携して伝票やパレット等の標準化・共通化、データの共有を行い、 AI・IoTを活用してサプライチェーン全体の物流の効率化を図る取り組みの実証を実施するとした。
このほか運輸部門の脱炭素技術の確立状況も報告され、18年のCO2排出量が7万7000tの商用車に関しては、EV、FCV(燃料電池車)の本格商用化に向けて運用面での実証が実施され、合成燃料等、既存自動車の脱炭素化に貢献する技術開発もあり、エネルギーの脱炭素化と合わせ、電動化を推進するとした。
なお、省エネ法では、物流関係で輸送事業者・荷主に対し、省エネ取り組みの目安となる判断基準を示すとともに、保有車両トラック200台以上等の「特定貨物輸送事業者」、年間輸送量3000万トンキロ以上の「特定荷主」には、輸送および委託輸送にかかるエネルギーの使用状況等を報告させ、取り組みが不十分な場合には指導・助言、合理化計画の作成指示等を行うこととしている。
(2021年3月2日号)