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鉄道輸送拡大へコンテナを往復利用=北越コーポ

2020.07.09

北越コーポレーション(本社・東京都中央区、岸本晢夫社長)は、コンテナの往復利用により鉄道輸送を拡大する。今年度は、新潟工場(新潟市東区)から北関東の顧客向けの輸送をトラックから鉄道にシフト。新潟工場は4月から段ボール原紙の製造を開始しており、紙製品を出荷するコンテナに、原料となる段ボール古紙を積んで新潟工場に戻す。夏以降、飲料メーカーと協業し、新潟向けの飲料製品も同じコンテナで運ぶ。調達物流や共同物流を組み合わせることでコスト抑えながら中距離でのモーダルシフトを実現し、将来的なトラックドライバー不足の深刻化に備える。

「転がし積み」対応の20ftコンテナ導入

主力の新潟工場では2018年10月から、鉄道コンテナ輸送を拡大。従来は12ftコンテナを利用していたが、二次配送拠点を経由しない直送比率を向上させるため、巻き取り紙の「転がし積み」にも対応できる20ftコンテナ(私有)を導入。積載率を高めるため不要な装備をなくすことで通常8・7tしか積載できないところを10t積めるようにし、パレット貨物も想定し、ラッシング装置も取り付けた。
第1弾として、新潟工場から関西方面の顧客向けに20ftコンテナによる鉄道輸送(写真)をスタート。「大阪貨物ターミナル駅へ9基、名古屋貨物ターミナル駅へ3基、京都貨物駅へ3基、姫路貨物駅へ1基と計16基を1日に運行させている」(高橋範男営業推進本部物流企画部物流企画担当課長)。5t積みの12ftコンテナの2倍の量を一度に輸送できるため、トラックドライバー不足を緩和するとともにCO2排出量の削減にも貢献する。

昨年7月から、名古屋地区の顧客に納品した後のコンテナに、紀州工場(三重県紀宝町)から製紙用原料を帰り荷として積んで新潟工場に戻すスキームを構築。コンテナの往復利用により、CO2排出量を約45%、ドライバーの運転時間を約60%削減したことが評価され、今年6月には、日本物流団体連合会の第21回物流環境大賞で「物流環境保全活動賞」を受賞した。関西でのコンテナの往復運用も模索している。

帰り荷の確保では飲料メーカーと協業も

さらに、JR貨物の3月のダイヤ改正に合わせ、新潟工場から北関東の顧客への輸送をトラックから鉄道にシフト。12ftコンテナには巻き取り紙の「転がし積み」ができないため「縦積み」し、熊谷貨物ターミナル駅近隣の中継倉庫のヤードでトラックに積み替えて、埼玉県内の顧客に配送する。9月以降は20ftコンテナ3基を投入する計画で、熊谷貨物ターミナル駅から顧客への直送も可能とする。

新潟から北関東までの輸送で鉄道を使うとコスト高になるが、新潟工場が4月から段ボール原紙の製造を開始したことに伴い、北関東で回収された段ボール古紙をコンテナに積んで新潟工場に戻し、往復利用することでコストを抑制する。リードタイムの制約上、20ftコンテナ3基と12ftコンテナ10基を併用し、夏以降、12ftコンテナの帰り荷で飲料製品を運ぶ計画。「製紙メーカーと飲料メーカーによる協業の先駆け」(高橋氏)となる。

需要減で在庫過多、直送比率向上が課題

主力の新潟工場で製造する印刷・情報用紙の需要は近年減少傾向で推移していたが、新型コロナウイルスの感染拡大がさらに追い打ちをかけている。関本修司取締役営業推進本部長兼物流企画部長(段ボール事業部担当)は5月の出荷量について、「新潟工場は6~7割の出荷量まで落ち込んでおり、5、6月は生産調整も行った。大口需要家のちらしや機内誌、旅行会社のパンフレットなどの需要減の影響が大きい」と話す。

インターネット通販需要を見込み、新潟工場では段ボール原紙の製造にも参入。ただ、「製紙業界全体をみると、3、4月は通販や加工食品などの“巣ごもり”需要で段ボール原紙の出荷は対前年比100%を超えたが、5月に入ると飲料製品用などで需要は減少に転じ、一服感がみられる」(関本氏)という。今後は、段ボール原紙事業とともに、耐水性や耐油性に優れたプラスチック代替の紙素材の販売強化などに活路を見出したい考えだ。

目下の物流の課題となっているのが、需要減に伴う在庫の過多とコストの上昇。「紙の需要は観光、行楽といった人の移動と連動するため、新型コロナの影響で在庫が積み上がっている」という。コスト増につながる消費地での保管と二次配送を減らすため、直送比率のさらなる向上に取り組むとともに、「他社との競争ではなく、共同で総需要減と戦う」ため、他の製紙メーカーとの共同物流も検討していく。
(2020年7月9日号)


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