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濃飛西濃運輸が富加物流センターにAGVを導入

2020.03.31

濃飛西濃運輸(本社・岐阜県関市、小森紳司社長)は19日、富加物流センター(岐阜県富加町)で自動搬送機(AGV)2台をメディア向けに公開した。同社では昨年5月に上越支店(新潟県上越市)でもAGV2台を稼働。AGVの本格導入は、セイノーグループで初の試みとなる。さらに、年内をメドにデバンニングの自動化も検討するなど、協働ロボットによるスマート物流センターの構築を進める。

富加物流センターは敷地面積約5万2960㎡、延床面積1万7543㎡の平屋建て倉庫で、大手ホームセンターの専用ロジスティクスセンターとして稼働している。取り扱いアイテム数は2500SKUに上り、コンテナなどで海外から輸入された商品を一時保管、仕分け後、各所に発送する。センター内には大型の自動仕分け機も導入されている。
今回AGVを導入したのは、富加物流センターの在庫エリアでピッキングされた商品を、自動仕分け機のソーター投入口まで移送する作業。ピッキングは作業者が行い、商品を積み込んだカゴ車をAGVが自動で持ち上げ、ソーター投入口まで運ぶ。搬送の指示はタブレットで行い、AGVは床面に貼付した磁気テープを辿って走行する。ソーターに到着するとカゴ車を自動で降ろし、空になったカゴ車を積んで在庫エリアに戻る。

AGVには愛知機械テクノシステムの「Carry Bee」を採用。ほぼ直角に曲がる動線であっても横転せず、安定して運ぶことができる点が決め手となった。また、AGVが荷物を脱着する機構も、富加物流センターで使用されるカゴ車の仕様に合わせて設計された。RMS(ロボット管理システム)などのシステム構築はセイノーグループのセイノー情報サービスが担当し、豊富なノウハウを用いて現場の作業とAGVをスムーズに連携した。

なお、一連の取り組みは「令和元年度岐阜県IoTコンソーシアムワーキンググループ事業費補助事業」にも認定されている。
今回AGVに移行したのは従来、庫内従業員が電動三輪車で運んでいた作業の一部。AGVによる作業は電動三輪車よりスピードが劣るが、「富加物流センターの周辺は人口も増加傾向にはなく、庫内で働く作業員の確保が難しくなっている。費用対効果だけを見るのではなく、将来的な人手不足を見越して導入を決めた」と小森社長は説明する。

デバンニング作業の自動化へ実証実験を実施

同社が次に検討するのが、デバンニング作業の自動化だ。富加物流センターには名古屋港で陸揚げされた海上コンテナが、1日当たり約10本、月間約200本搬入される。ばら積みが多く、40ftコンテナの荷降ろしには3~5人で2時間半ほど掛かり、とくに夏場はコンテナ内が50℃を超える高温環境となることから、作業者への負担が課題となっていた。

そこで、デバンニング作業の自動化に向けて、今年2月17日から11日間に渡って、蘭Copal Handling System社の「コンテナアンローダー」の実証実験を行った。コンテナアンローダーはカメラ・センサーを備えた吸着カップ付きの「プルプレート」がコンテナ内のカートンを認識して吸着し、コンベアに載せてコンテナ外に搬出する仕組み。

一度に複数個のカートンを吸着できることが特徴で、作業性が大幅に向上。コンテナ1本あたりの荷降ろし作業は約1時間で完了し、「想像以上に動きが速かった」と小森氏も手応えを得る。作業者も女性のオペレーター1人が運転席でレバーを操作するのみ。「デバンニングはおそらく、今後最も人材を集めにくくなる作業であり、導入を前向きに検討したい」と話す。

北陸中心の拠点展開、人材不足は大きな課題

富加物流センターに先駆けてAGV2台を導入した上越支店では、従来、作業員が台車を手押しして行っていた1~2階間の搬送を自動化した。とくに重要だったのがエレベーターとの連携で、AGVがワンフロア内を行き来するだけでなく、エレベーターを自在に出入り・昇降できるようRMSを構築した。さらに人の動線と区別することで作業者の安全性も確保している。

セイノーホールディングスでAGVが本格導入されているのは濃飛西濃運輸のみで、デバンニングの自動化も実現しているグループ会社はまだない。その背景には、同社がロジスティクス事業に強みを持つことに加え、新たな取り組みを積極的に進める企業風土があるという。

小森氏は「当社はターミナル併設の物流倉庫が多く、各拠点でも検討を進めたい」とした上で「北陸を中心とした拠点展開をしていることから人材不足は課題で、10年後には人が全くいなくなる――というリスクもある。導入実績はまだ少ないが、徐々に台数増やすなどして自動化技術を取り入れていきたい」と展望する。
(2020年3月31日号)


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