吉田流通センターに自動フォーク導入=富士Fロジ、日通など
富士フイルムロジスティックス(本社・横浜市港北区、三ツ井忠社長)は1月31日、吉田流通センター(静岡県吉田町)に自動フォークリフト2台を導入した。同センターの荷役業務を担当する日本通運とフォークリフトメーカーの三菱ロジスネクストとの3社共同プロジェクトとして開発を進め、稼働に至ったもの。同日催された「可動開始記念式」では三ツ井社長が挨拶し、「来期からの新中期3ヵ年経営計画でも、日通と三菱ロジスネクストとともに自動フォークの導入拡大を進め、物流の単純作業から人を解放し、付加価値物流を推進したい」と意欲を示した。
レーザー誘導式、ラックフォークタイプを採用
今回導入されたのは、三菱ロジスネクストのレーザー誘導式無人フォークリフト「RACKFORK Auto」。倉庫内各所に貼付された反射板を用いてフォークリフトが位置を把握するため床面への磁気棒の埋設工事が不要で、既存倉庫への導入や、拡張がしやすいことが採用の決め手となった。さらに、前・右・左の3方向で荷役可能なラックフォークタイプとすることでラック間の通路幅を削減し、保管効率も向上させた。
RACK FORK Autoが配備されたのは、吉田流通センターD棟の1階約2600㎡の保管エリア。同倉庫は富士フイルムグループディスプレイ材料事業の商品を扱っており、自動フォークでは、近接する生産工場から搬入される、ロール状フィルムの入出庫業務を担う。
商品は通常、1日に約200ロールが運び込まれており、まずはこのうちの半量を自動フォークが荷役する。大型車で搬入された商品は、ロケーション番号と商品情報が入力されたRFIDタグを貼付した後、ロールコンベアから自動フォークがピッキング。倉庫内を無人走行し、指定のラックへ格納される。
日中に入庫作業を行った後、15時に出荷オーダーを受け、出庫作業は夜間に実施。出庫時は自動フォークが指定の棚から商品を取り出し、トラック積込み前の仮置き場まで自動で搬送され、1日の作業量は最大122ロールを想定しているという。なお、フォークリフトのバッテリーは最長16時間稼働で、朝と夕方に作業者が交換する。
自動フォークが稼働する保管エリア内は完全に無人となり、ロールコンベアへの積み付けと、トラックへの積込みのみ、フォークマンが担当。これにより、従来4人体制だった倉庫作業員は1人に削減された。ピッキング指示は富士フイルムロジスティックスのWMSから日通のサーバー経由で自動フォークに送信。格納場所は、オーダー順のピッキングを前提に最短な動線を事前に設計した。
導入前には自動フォークの作業安全性や商品への衝撃値なども測定したが、とくに衝撃値については人力による作業よりも品質が高かったという。安全性についても、人や障害物を認識して確実に停止することを確認。倉庫施設内が完全に無人となる夜間作業についても「かなり念入りに検証した」と玉木和樹センター長は話す。万が一、自動フォークが10分以上停止した場合には複数の担当者のスマートフォンにアラートが配信され、即時に対応できるスキームも構築している。
稼働に先駆け、1月27日からはトライアル運用を開始したが、「緊急停止は一度もない」と玉木氏。作業能力も、入出庫とも最大130ロールまで可能と見られ、今後の作業拡張性にも期待が寄せられるという。
中計で最新技術による省人化・省力化を推進
吉田流通センターは富士フイルムロジスティックスの国内物流業務を扱う「生産物流ユニット」の主要拠点。富士フイルムグループ基幹工場のひとつである吉田工場の物流を、日本通運とともに30年以上賄ってきた。センターはA~D棟の4棟から成り、全体の倉庫面積は約2万3100㎡に上る。
富士フイルムロジスティックスでは、中期3ヵ年経営計画(17~19年度)において最新技術を活用した物流の省人化・省力化を掲げる中、「機械化との相性が良い」とされる大物・嵩もの品を扱う同センターの業務に注目し、AGVなどの検討を開始。そうした中、17年に日通側からの提案を受け、三菱ロジスネクストと3社で実稼働に向けた開発を進めてきた。
今後は、当初目指した無軌道AGVの導入も前向きに検討。自動フォークについても、今回の稼働を試金石とし、他拠点への展開も視野に入れる。三ツ井社長も「当社の東HUBセンターなども、従来の多層階建ての倉庫からワンフロア化したことで機械化がしやすくなっている」と話し、最新技術のさらなる活用を視野に入れる。
単純作業から人を解放し、付加価値物流を実現
31日に開かれた「可動開始記念式」で三ツ井社長は「従来の物流は、人力中心のオペレーションと安全第一の上に成り立っていたが、付加価値のある物流に向けて、革新的にインフラを変えていくパラダイムシフトの時代に突入している。付加価値物流は『共同する物流』『つながる物流』そして『解放する物流』の3要素から成り、自動フォークの稼働はまさに『人を作業から解放する物流』。これが私は一番大事だと思っており、効率化のみならず安全への第一歩でもある」とコメント。
日本通運中部ブロック地域総括兼名古屋支店長の古江忠博執行役員も、「20年後も業務を維持・継続するには新たな対策が必要――との危機感が自動フォーク導入のきっかけになった。人手不足という社会的な背景と平均年齢が50歳を超える現場の実態、そして先端技術の活用といった世の中のトレンドを受けて3社の共同プロジェクトチームが発足し、“ワンチーム”となって成し遂げた」と述べた。
続いて、富士フイルムロジスティックスの三ツ井社長、藤本和人・生産物流ユニット長、日本通運の古江氏、白石政典・静岡支店長によるテープカットが行われた後、三ツ井社長が起動スイッチを入れ、自動フォークによる作業がスタートした。
(2020年2月13日号)