自民党トラック議連が貨物自動車運送事業法改正案を公表
自民党トラック輸送振興議員連盟(細田博之会長)が20日に開催した総会で、貨物自動車運送事業法の改正案の概要が明らかになった。トラックドライバーの労働条件改善・事業健全化の確保のため、参入規制の強化のほか、2023年度末までの時限措置として、標準的な運賃の告示制度の導入や国土交通大臣による荷主への働きかけ等の規定の新設などが盛り込まれた。所用の手続きを経た上で、臨時国会での成立を目指す。
国土交通大臣による荷主への働きかけも規定
規制の適正化では、事業許可にかかる欠格期間を2年から5年に延長するとともに、許可取り消しを受けた会社の子会社等や処分逃れを目的として監査後に廃業した事業者等の参入を制限。事業の休廃止にかかる手続きを、事後届出制から事前届出制に改める。事業許可の基準についても、安全性の確保や車両の台数、車庫の規模などについて、経済的基礎(事業用資金等)の許可基準を明確化。また、約款の認可については、原則として運賃と料金とを分別して収受する旨を明示する。
また、事業者に対しては、点検・整備など輸送の安全にかかる義務を明確化。保険料等の納付等について、事業の的確な遂行のための遵守義務を設けるとともに、これらを遵守しない場合の命令規定を新設する。
荷主対策の深度化では、貨物自動車運送事業者が過労運転や過積載の防止の義務などの法令を遵守して事業を遂行できるよう、荷主に対する配慮義務を新設。荷主勧告制度の対象に軽貨物自動車運送事業者を追加する。
23年度末までの時限措置として新設する国土交通大臣による荷主への働きかけ等の規定では、大臣はトラック事業者の違反原因となる恐れのある行為を行っている「疑い」のある段階から、当該荷主の情報を関係行政機関の長と共有。当該荷主の理解を得るための働きかけや要請、改善されない場合には勧告・公表を行うことができることとする。働きかけについては関係行政機関の協力を得て実施し、独禁法違反が疑われる場合には公正取引委員会に通知する。
また、荷主への交渉力が弱い中でコストに見合った対価を収受し、法令遵守した持続的な運営が行えるよう、23年度末までの間、法令遵守して運営する際の参考となる運賃として「標準的な運賃」の告示制度を導入する。
今回の事業法改正の背景には、24年度からトラック運送事業の業務について時間外労働の限度時間が設定され、その担い手である運転者の不足により物流が滞ることがないよう、緊急に労働条件を改善しなければならないことが挙げられる。
総会の席で、細田会長は「働き方改革はトラック事業者にとって痛し痒しのところがある」として時間外労働規制や労働力不足の環境を指摘。全ト協の坂本克己会長はトラックドライバーの労働条件の改善のための原資確保の必要性を強調するとともに、新しいルールに基づく公正な競争のあり方を提示した。
(2018年11月22日号)