ズームアップ 阪神港で強まるドレージの受注制限
台風21号の影響で、海上コンテナドレージの混乱が続いている。阪神港では連日のターミナル混雑により回転率が悪化し、海上コンテナドレージ会社の受注制限も目立つ。「安値」「近場の配送」「20ftコンテナ」「混雑するターミナルからの搬出入」はとくに敬遠される。名古屋港、京浜港でも同様な状況にあり、ドライバー不足による人件費の上昇、燃料の高騰も背景に、海貨業者、船会社、荷主がドレージ会社から“選別”される時代になってきた。
「もうやりたくない」「安値はお断り」
台風21号で記録的な高潮被害に見舞われた神戸港六甲アイランドのターミナル。被害の大きかったターミナルから他のターミナルにシフトした影響で、連日混雑が続く状況だ。「安いドレージを受けさせられていた業者が、今回の台風後の混乱をきっかけに、『もうドレージはやりたくない』と話すのを耳にする」と阪神港のドレージ会社の経営層は話す。
神戸港より深刻なのは大阪港。神戸港に寄港できないコンテナ船が大阪港へ配船がシフトされてターミナルの混雑が悪化。大阪港は輸入港であるため、空コンテナの返却が集中し、回転率が低下。ドレージ会社が受注を絞っている。「仕事を選べる」ため、近場で料金が安い仕事や40ftよりも料金の安い20ftの仕事は断っているという。
だが、こうした状況でも「なかなか値上げに踏み切れない」という大阪港のドレージ会社の声も聞こえてくる。「大阪は繁閑の差が大きく、繁忙期で強気に出てしまうと閑散期に仕事がなくなってしまう――という思い込みが根強い。値上げに尻込みする“悪しき慣習”が残っている」。
名古屋で値上げの動き、東京の混雑は日替わり
他方、今回の台風で大阪港揚げが名古屋港揚げにシフトしていることもあって、もともとドライベー不足が顕在化しつつあった名古屋港ではドレージ会社の値上げの動きが活発化。ドレージ会社の直接の荷主にあたる海貨業者も、真荷主に転嫁せざるを得ない状況になっているという。
京浜港でもドレージの手配が難しい状況に変わりはない。東京港では、慢性的に混雑しているターミナルで台風の影響により本船が遅延し、本船荷役を優先して行う結果、連日、“日替わり”でターミナルが混雑。そのため、「荷主から問い合わせがあっても、ドレージ会社としては推薦できる船会社がなく困っている」(京浜港のドレージ会社)。
荷主に対して混雑ターミナルの使用変更や長時間待機が生ずる場合は待機料の要請を行っているものの、「現実的にコンテナが取れない」とも。海貨業者も台風後のドレージ手配の苦慮について、「これまでにない深刻な事態」として、荷主のランク付けをし、一定の条件の荷主に対してのみドレージを手配している状況だという。
(2018年10月4日号)