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インタビュー 国際物流総合展 事務局長 寺田大泉氏

2018.09.11

昨年から顕在化している「物流危機」。荷主企業と物流事業者は今、労働力不足による“運べない危機”に直面しており、これを乗り越える事が業界全体の喫緊の課題だ。今年で13回目を迎える「国際物流総合展」が東京ビッグサイトで9月11日~14日まで開催される。マテハンメーカーやソリューションベンダー、そして物流事業者による最新提案が期待される。(インタビュアー 西村太郎)

物流の未来に触れる展示会

― 今回の開催規模は?
 寺田 現在(7月末)の出展者数は475社(前回は460社)、来場者は6万7千人(同6万4千人)を見込んでおります。ホールも前回より2ホール増やし、東京ビッグサイト東の1~6ホール及び8ホールの合計7ホールで開催いたします。
過去最大級の規模となり、現在の物流に対する関心度の高さがうかがえます。

― 今回のテーマの意図について教えてください。
 寺田 今回は、物流の“今と未来”の対比を意識しました。
“今”については、足元の課題を認識し、解決を探す場として。一方“未来”については、今後訪れる様々な状況に対して備える、という意図をもっています。出展企業や来場者など物流業界の方々と、この展示会を通じて、一緒に考えていきたいという想いも込めています。

― その物流業界の課題ですが、どの様に分析していますか?
 寺田 少子高齢化などにより、労働力不足が全産業で課題となっていますが、中でも物流業界は深刻です。例えば輸配送を担うトラックドライバーなど自動車運転職の有効求人倍率は、昨年12月の時点で3・09倍と高い数値ですし、庫内作業者の確保も年々難しくなっていると聞きます。

― 労働集約型産業である物流業界にとっては非常に大きな課題です。
 寺田 加えて、昨今のEC市場の隆盛や産業構造の変化により、物流の多頻度小ロット化も進んでいます。これに労働力不足が重なって「物流危機」が顕在化しました。これを様々な手法で乗り越えることが課題と認識しています。また、更なるグローバル化への対応も必要です。国内の人口減少に伴い、今後市場は縮小していくでしょう。製造メーカは勿論、物流事業者もグローバルに展開していく必要があると思います。

― さらに国際的な競争が強まっていくこととなります。
 寺田 荷主企業は、より戦略的にロジスティクスを構築していき、競争力を強化、市場を拡大していく必要があります。また、グローバル企業においては特にROEなどの国際的に評価される経営指標の重要性が高まってくるでしょう。これも、ロジスティクスの高度化がひとつの鍵になると感じています。

― それらの課題を認識して、未来につなげる解決策を模索する場であると。
 寺田 ここ数年の基本的なコンセプトは、来場者にとって「課題解決の場である」ことです。そこを強く意識し、テーマ選定をしております。来場者の方々には、多くの情報に触れていただき、今の課題解決に役立てると同時に、ロジスティクスの未来の姿を感じていただきたいと思います。

IOTやAIに期待

― 注目される展示内容は?
 寺田 トラックの自動運転や無人倉庫など、ひと昔前まで夢物語であったものが現実のものとなりつつあります。今回は、労働力不足の解決に向け、今までにない新しいテクノロジーを活用した、様々なソリューションや商品が発表されることと思います。ひとつの方向性としては、自動化・省力化による生産性の向上で、その鍵としてIotやAI、ロボティクスやビッグデータといったテクノロジーに期待が寄せられております。

これら先進の技術を応用した、庫内作業の自動化・省人化を実現するロボットやマテハン機器、パレット、無人搬送車、トラック輸送における配車計画やバース予約システムなどの先進的ソリューションに期待しております。

― 物流の共同化やプラットフォーム化もトレンドです。
 寺田 ここ数年、物流業界では今までにない共同化やプラットフォーム化、シェアリングビジネスモデルなどが生まれてきています。物流は経済活動であると同時に社会インフラでもあるはずで、競争原理による部分最適ばかりでなく、協調や共同による全体最適を指向する必要があります。
その為には、これまであった、商習慣や管理手法などの前提条件を良い意味で疑うことが必要かもしれません。既存の習慣などを少し変えるだけで、効率化に繋がるケースもあるはずです。そういった考え方や視点からの提案や発表に注目しています。

展示会のさらなる価値創造に向けて

― 特別企画やプレゼンテーションセミナーはいかがでしょうか?
 寺田 出展者によるプレゼンテーションセミナーは2会場、4日間合計で72セッションを行います。定員は各回100名となっています。また、特別企画では、「拠点最適化ソリューション」として、物流拠点新設や集約など旺盛なニーズに応えていきます。

― 集客に向けてのPRの注力事項は?
 寺田 海外からの来場者や国内の遠方からの来場者増に注力しました。海外においては特に中国をはじめとしたアジアを中心に広報活動を強化しました。現在来日に向けて、各国から多数の問い合わせを受けております。前回の海外来場者数(1108人)を上回るよう引き続き活動を強化していきます。
また、遠方から長い時間をかけて来場する方々にもご満足いただけるよう、「国際物流総合展」ならではの価値の創造に注力しました。

― 価値創造の具体的施策は?
 寺田 本展の来場者は、抱える具体的な課題を解決するための製品やソリューションを求めて来場されます。そのため、商談のスピードが早い点は、出展者よりご評価をいただいています。今回も、この部分を強化しています。その為のツールとしてwebを活用し、来場者と出展者を結ぶ機能「マッチングシステム」を今回もリニューアルして稼働させています。会期前に来場者の課題を出展者が把握できるサービスであり、来場者にとっては事前に具体的な内容を知ることが可能です。出展者・来場者共に無料でシステムをご提供いたします。パソコンはもちろんスマートフォンからのアクセスも可能です。

― 今回はカンファレンスの実施にも力を入れました。
 寺田 これも価値創造の施策です。展示会の併催カンファレンスとして行う「ロジスティクス講演会」は前回を上回る6講演を予定しています。
また、JILSとしてロジスティクスフォーラムも実施する予定で、“グローバル”“人材活躍”“連携・協業”などのキーワードのもと最新動向や事例を発表する予定です。両カンファレンスとも、参加費用は無料となっており、是非聴講いただきたいと思います。

― 出展者と来場者双方の満足が重要ですね。展示会の成功を期待しております。
 寺田 前回のアンケートでは、多くの来場者が具体的な課題を持って来場し、商談に繋がるスピードが速い点など、出展者・来場者の80%以上に「満足」以上の評価をいただきました。今回はそれ以上の方に満足いただける展示会を目指します。
物流をめぐる技術の進歩は著しく、元来、ハードとソフト、そして人の力を組み合わせての価値創造は、日本が得意とする分野です。物流の各プレイヤーが現状をしっかり認識し、よりよい社会の実現に向けて何をすべきか、発見する場、考える場となることを願っております。

【プロフィール】
寺田 大泉(てらだ・たいせん)
1965年、神奈川県出身。1992年、日本ロジスティクスシステム協会の設立時から同協会に参画。2015年4月、事務局長に就任。同年6月、理事に就任


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