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「告示」改正へ、労使の議論は平行線=厚労省

2021.11.04

厚生労働省は10月29日、トラック、バス、ハイヤー・タクシーの改善基準告示の改正作業を行う第6回労働政策審議会労働条件分科会自動車運転者労働時間等専門委員会を開催した。トラックは10月1日から開始した実態調査の結果を踏まえ、年明けのなるべく早期に見直しの方向性を議論することを確認。意見交換では、「年間総労働時間の3300時間に休日労働を含めるか否か」が焦点となり、過労死防止の観点から「含めるべき」とする労働側の主張に対し、経営側は長時間労働の原因となる荷主への強い是正命令なしに「含めるのは無理がある」として、議論は平行線となった。

過労死防止へ「休日労働含める」と労働側

労働組合側から出席した全日本運輸産業労働組合連合会(運輸労連)中央副執行委員長の世永正伸委員は「改善基準告示の改正の主目的はドライバーの過労死を防ぐことにある。『年間総労働時間は休日労働も含めて3300時間以内、月総労働時間は275時間以内』が原則だ」と述べ、若年層確保には長時間労働の削減が不可避であると強調した。

全国交通運輸労働組合総連合(交通労連)トラック部会事務局長の貫正和委員は「過労死防止の観点からみても、現状は1日の休息時間を8時間と定めているが、日本労働組合総連合会(連合)がインターバル時間を11時間設けるよう基準を示している通り、ドライバーも11時間とすることが適切だ」と主張した。

経営側は「融通の利く内容とすることが重要」

経営者側の全日本トラック協会副会長の馬渡雅敏委員は「これまでの主張通り、トラックでは年間3300時間に休日労働を含めるのは無理がある」と強調。荷種の違いや長距離輸送やエリア内配送など業務によって運行形態が異なることを勘案すべきだ」と述べ、例外規定を設けるなど「融通の利く内容とすることが重要だ」と提言した。

さらに、「長時間労働発生の主要因は荷主だ。特に着荷主の指示による待機時間の発生や、契約にはない荷役作業など不合理で見直すべき商慣習がある」と指摘。「ドライバーは荷主の指示を〝命令〟として受け止めざるを得ない。ドライバーには自由がなく、まるで現代の〝奴隷労働〟だと言えるのではないか」と語気を強め、厚労省主導による是正を訴えた。

公益側として出席した立教大学教授の首藤若菜委員は馬渡委員の発言を受け、「荷主の都合により長時間労働が発生している実態に対しては、荷主勧告制度を活用して対処すべき。悪しき商慣習も今後の是正に向けて努力していくことが必要だ」と理解の意を示し、行政の取り組みを促した。
(2021年11月4日号)


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