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【レポート】特積み会社の「倉庫併設型ターミナル」とは?

2020.11.26

特積み会社による物流施設のリニューアルが増えている。中でも目立つのが、開店から数十年が経過して老朽化した路線便ターミナルの移転や建て替えに伴う、倉庫保管機能を併設した複合型施設の開設だ。路線便のターミナルと同一施設内に在庫を持てば、出荷時の横持ちが不要となり、輸送コストを削減できるとともに出荷締時間の後ろ倒しも可能になるなど、荷主企業の物流効率化につながる。特積み会社としても集荷の手間が省かれることで業務効率を向上できる上、荷主企業の囲い込みも図れるなどメリットは大きい。特積み会社が開設する「倉庫併設型ターミナル」の最新動向をまとめた。(掲載は社名50音順)

来年大口物流センター稼働
 2~3階で3PLを展開=エスラインギフ

エスラインギフ(本社・岐阜県岐南町、堀江繁幸社長)が来年4月に稼働を控える「大口物流センター」(愛知県大口町)は、1階を同社の路線便ターミナルとして活用し、2~3階倉庫部分ではグループ会社のエスライン各務原がアパレル量販店向けの在庫保管および仕分け・検品作業などを行うことで、3PL事業から輸配送に至る一括物流サービスを提供する。

大口物流センターは敷地面積7356㎡、倉庫面積9778㎡の鉄骨造3階建て(事務所は5階建て)施設。投資額は20億円で、同所による予想売上高は年間16億円を見込む。2~3階部分で保管、流通加工された商品を、横持ちなく1階のターミナルから路線便や貸切便で出荷できるため、荷主企業の利便性を高められるとともにエスラインとしても集荷の手間が省ける。また、2階に導入するピースソーター機能を、エスラインギフの路線便を利用する荷主企業へシェアする仕組みも検討する。

グループ2社が同一施設内に入居するのは、エスライングループとして初めての試みだが、今回の施策でグループ会社同士の連携強化にも期待を寄せる。同社では、今後もターミナルの近くに倉庫を構えることで3PL業務の受託を目指す方針にある。

大口物流センターに先駆け、今年10月にはエスライングループで大手量販店を中心とした商品の保管・構内作業・店舗配送および家具家電の配送、セッティング業務を行うスリーエス物流が「第3物流センター」(愛知県一宮市、倉庫面積1万1597㎡)を開設し、同所でも保管・加工業務と輸配送サービスを一貫して提供している。

ロジ・トランス拠点拡充
 2月に深川支店が竣工予定=西濃運輸

今期スタートした新中期経営方針(~22年度)の重点戦略に「〝特積みのセイノー〟から〝ロジのセイノー〟へ」を掲げ、ロジ・トランス機能のさらなる強化を図る、セイノーグループ。ターミナル一体型DCによる「ロジスティクス」機能と、日本全国への輸配送ネットワークによる「トランスポーテーション」機能を兼ね備えた「ロジ・トランス」拠点をさらに拡充するとともに、ファクトリー機能も追加することで、より高付加価値な物流サービスを提供する。
ロジ・トランス拠点の主要な開設計画のうち、西濃運輸(本社・岐阜県大垣市、小寺康久社長)が来年2月に竣工予定なのが、深川支店(東京都江東区)だ。既存の深川支店を移転し、倉庫機能を併設した施設にリニューアルするもの。1万1366㎡の敷地に、1階部分をプラットホーム(86m×28m)、2階の一部と4~6階を物流倉庫として活用する複合型の物流施設を新設する。倉庫部分の面積は1万1964㎡に上る。
同所に加え、22年1月には龍ヶ崎支店(仮称)の竣工、23年には名古屋西支店の移転新設も控える。この3拠点では、24時間365日稼働で、ケース品からパレット積み商品までオペレーションを自動化する「無人物流」を実現させる方針にある。また、21年10月にALFALINK相模原Ⅰで新拠点を開設するほか、22年以降の竣工予定では3拠点が計画中、1拠点が企画中、5拠点が用地交渉中にあり、計12拠点へ647億5800万円の投資を計画している。

中部ロジセンター開設
 倉庫TC路線の複合拠点=中越運送

中越運送(本社・新潟市中央区、中山元四郎社長)が2月に開設した「中部ロジスティクスセンター」(愛知県一宮市)も、営業倉庫とTC(通貨型拠点)、路線便の3機能を備える複合拠点。県外では、同社最大の埼玉ロジスティクスセンター(埼玉県加須市)に次ぐ規模で、中京・関西圏で初の営業倉庫となる。

中部ロジスティクスセンターは敷地面積約1万1900㎡、延床面積約8900㎡の3階建て。1階に全天候ヤード約2800㎡と荷捌き場約2800㎡を備え、倉庫スペースは1~3階の約5000㎡となる。開設時の倉庫内従業員数は約60人で、車両は大型車6台、4t車24台、2t車3台、1t車3台の計36台を配備。立地は名神高速道路・一宮ICから約6㎞ほどの場所に位置する。

同所は名古屋営業所(名古屋市西区)の路線便機能を移転・拡張したもので、倉庫スペースを豊富に用意することで、メーカーらの一時保管需要にも応える。同地域は愛知県内に製造工場を持つメーカーなどによる倉庫需要が強く、中部ロジスティクスセンターもほぼ満床状態という。取り扱い商品は、食品用フィルム原紙や衛生陶器、住宅資材、ラベル素材など多岐に渡る。

また、同センターはこれまでの中越運送の施設と異なり、外観や内装などのデザインを現場主導で決定。現地の荷主ニーズを把握し、実際に施設を利用する社員の判断を最優先することで、使い勝手の良い施設を目指すとともに、現場のモチベーションアップにも期待する。

同社ではこのほかにも、ことし10月に新潟東港で危険物低温倉庫を稼働するとともに、来年6月には新潟県上越市で全天候荷捌き所を備えた普通倉庫と危険物低温倉庫の新設を予定するなど、高付加価値型物流施設の開設が相次いでいる。

「南港支店」を移転
 総延床面積を倍増=TXJ

トールエクスプレスジャパン(TXJ、本社・大阪市中央区、山本龍太郎社長)は5月に、南港支店を大阪市住之江区へ移転した。この“新南港支店”は移転前施設からターミナル面積を拡張するとともに、上層階に保管スペースを設けた、倉庫併設型ターミナル。国内貨物輸送量が減少傾向にある中、売上高の92%を特積み事業が占めるTXJでは、原料の調達から一時保管、流通加工、出荷、配達までトータルで請け負う“一括受託”を今後の成長戦略に据えており、新南港支店はその戦略拠点といえる。
新南港支店は、大阪南港のマルチテナント型施設の1~3階に入居し、1階は路線便のターミナル、2階は事務所。3階は営業倉庫として運用する。1階ターミナル面積は8141㎡、3階倉庫面積は9330㎡となり、総延床面積は旧南港支店から倍増する。1~3階間は荷物用エレベータで荷物の移動が可能。庫内設備は今後、荷主企業の要望に合わせて柔軟に調達していく方針にある。車両は約60台を配備し、従業員数は70人ほど。
場所は、阪神高速4号湾岸線・南港中ICから至近。さらに、南港ポートタウン線南港東駅からも徒歩圏内で、従業員の通勤アクセスも良好となっている。旧南港支店からも約1・5㎞ほどの立地であり、既存荷主のオペレーションも大きな変更なく移行できた。
倉庫部分は日本郵便や、JPトールロジスティクスとグループ間の機能を補完し合う営業体制で推進しており、雑貨や機械部品、空調機関連品など多様な荷物の保管需要が寄せられている。なお、新南港支店の倉庫部分の運用はTXJが担当する。

高崎支店を稼働
 来年厚木支店も移転新設=新潟運輸

新潟運輸(本社・新潟市中央区、坂井操社長)は昨年8月に、倉庫併設型ターミナルの「高崎支店」(群馬県高崎市)を開設した。関越自動車道・高崎IC近くの好立地に、敷地面積2万4300㎡、延床面積約7600㎡2階建ての施設を建設したもの。1階を路線便のターミナル、2階を倉庫として運用し、出荷指示を受けた荷物は1階のターミナルからすぐに路線便で発送することができる。保管・出庫から輸送まで横持ちなく、同支店で一括して扱えることが大きな強みとなっている。同所は新潟運輸のメイン路線である新潟~関東便の中継拠点としても稼働する。

さらに、来年8月には神奈川県厚木市の「厚木支店」を海老名市へ移転した上で「海老名支店」としてオープンする計画にあり、この新支店も3階建ての倉庫併設型ターミナルとなる予定。延床面積は既存の厚木支店から約7900㎡増え、ターミナルは760㎡から2100㎡へ約3倍に拡張。2~3階の倉庫面積は5800㎡を確保する。建設用地は取得済みで、厚木支店から相模川を挟んだ立地。倉庫部分は既に荷主企業が決まっているという。

新潟運輸では今期、新潟県内の「三条支店」(三条市)と「上越支店」(上越市)でも、それぞれ5000㎡、3300㎡の倉庫を増設する計画。関東の荷主企業による北信越地域向けの在庫保管など旺盛なニーズに応える考えにある。

トラックの手配が難しくなっている昨今において、荷主企業が消費地の近くに在庫を置くニーズは増えている。こうした需要に応えるため、今後も既存の老朽化施設を改修・増設したり、移転・新設する形で倉庫を増やしていく方針。

前橋支店を6月にオープン
 可児と越前でも新施設計画=福山通運

今年3拠点を新設した福山通運(本社・広島県福山市、小丸成洋社長)。このうち、6月にオープンした「前橋支店」(群馬県前橋市)は、路線便のターミナルに倉庫設備を備えた“ロジスティクスターミナル”となり、集配業務のみならず、流通加工や保管機能を兼ね備える。

前橋支店は、福山通運グループとして群馬県内5店所目の施設で、敷地面積1万1570㎡、延床面積1万908㎡の地上3階建て、鉄骨造。倉庫設備に加え、太陽光発電装置や冷暖房を完備し、自家用給油設備も備える。庫内には貨物用エレベータ1基と垂直搬送機1基を設置。車両は大型6台、中型7台、小型23台、貨物軽1台を配備した。

関越自動車道・前橋ICから車で10分の場所で、圏央道、北関東自動車道の主要幹線道路へのアクセスに優れる。取扱エリアは、従来、高崎支店が担当していた前橋市と中継エリアとなっていた渋川市、北群馬郡(吉岡町・榛東村)を直配エリアとし、沼田市・利根郡(みなかみ町・昭和村・川場村・片品村)を中継エリアとする。また、首都圏および東北、中部エリアを広範囲にカバーし、倉庫業務から国内配送まで包括したサービスを展開する。
福山通運では同所のほか、今年は2月に「浜松西営業所」(静岡県浜松市、敷地面積9891㎡、延床面積6638㎡)、3月に「一宮支店」(愛知県一宮市、敷地面積1万7930㎡、延床面積1万9425㎡)を開設。さらに、今後の計画として、岐阜県可児市と福井県越前市に倉庫併設型の新ターミナルを開設する予定にある。

関西最大の集配拠点が完成
 保管に加え航空便にも対応=名鉄運輸

名鉄運輸(本社・名古屋市東区、内田亙社長)は9月に、関西地区最大の集配拠点となる「名鉄トラックターミナル関西」(大阪市西淀川区)をオープンした。

同拠点は、敷地面積2万526㎡、施設は2階建てで、延床面積7864㎡。1階が荷捌きホーム(約4200㎡)で、2階が倉庫(約3600㎡)。2階倉庫へはスロープ式でアクセスできる。

ターミナル内には淀川支店が移転して関西エリアの基幹店として特積み貨物の広域集配を行うほか、関西名鉄運輸による一般貨物、名鉄ゴールデン航空による航空便にも対応する。

場所は阪神高速11号池田線の加島ICから5分、塚本ICから15分の交通アクセスに優れた立地にあり、伊丹空港から5㎞、大阪港から18㎞と航空、海上輸送の結節点としての機能にも優れている。

本社ターミナル移転拡張
 危険物、保税、保冷庫併設=ラニイ福井貨物

ラニイ福井貨物(本社・福井県福井市、藤尾秀樹社長)では来年1月に、本社と併設する路線便ターミナル施設を移転・新設する。新施設敷地内には危険物や保冷、保税に対応した倉庫も開設し、路線便と貸切便による輸配送機能に加え、多様な保管サービスを複合的に提供する。
新拠点は北陸自動車道・福井ICから100mほどに位置する3万8123㎡の敷地に、4棟の施設を建設。総延床面積は1万2573㎡となり、現在の本社ターミナルから2・4倍に拡大し、トラックは180台を配備する。
このうち、2階建ての本社事務所棟(施設面積1394㎡)には路線便の荷捌き場(4341㎡)、一般品を扱う「第1倉庫」(2182㎡)を併設。また、別の棟では4℃以下で管理する冷蔵倉庫(2993㎡)と15~18℃管理の定温倉庫(163㎡)による「第2倉庫」と、保税倉庫として国際貨物を扱う「第3倉庫」を運用する。併せて、危険品倉庫の「第4倉庫」(441㎡)と、整備工場棟も開設する。
倉庫からターミナルへの横持ちが不要となることで、荷主企業の輸送コスト削減とリードタイム短縮、利便性の向上につながる。倉庫部分は、福井県内に製造工場を持つメーカーなどの利用が決まっており、保冷スペースも乳業メーカーの北陸地域向け配送拠点として活用される見込みにある。
倉庫併設型のターミナルは同社として初めての試みだが、今後も、本拠地かつ注力エリアの福井県内において、同様のコンセプトによる営業所の改築や新設などを検討していく考え。さらに、今回の新施設敷地内には増設余地もあり、常温自動倉庫の新設を視野に入れた「第2期工事」も、来期以降、計画を策定していく。
(2020年11月26日号)


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