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中央運輸、医薬品の中継輸送サービス開始へ

2020.04.07

中央運輸(本社・東京都中央区、赤澤善博社長)は3年内をメドに、GDP(医薬品の適正流通基準)対応の積み替え拠点を活用することで、医薬品長距離輸送の中継輸送を可能とする「メディカルクロスドックステーション」構想を具体化する。同社およびスズケングループが東西で稼働する、温度管理やセキュリティ、防虫防鼠などGDP基準をクリアした医薬品物流センター「メディカルクールターミナル(MCT)」で、東北や九州・中国地方から来たトラックと関東および関西へ向かう車両をクロスドックし、高度な医薬品輸送品質を維持したまま、長距離輸送における法令順守や乗務員への負担軽減につなげる。実施に当たっては5G回線を利用した情報共有システムの構築なども視野に入れる。

具体的には、東北発関西向けの医薬品長距離輸送では中央運輸の「岩槻MCT」(さいたま市岩槻区)を中継拠点とし、同所からは中央運輸が手配した車両が納品先まで輸送する。同様に、九州・中国発関東向けの輸送についても、エス・ディ・コラボの「六甲MCT」(神戸市西区)で中央運輸の手配車両に積み替え、納品先まで運ぶ。各MCTからは、医薬品の取り扱い実績を持つ車両が輸送を担当。東北や九州・中国地方から荷物を運んできたトラックはMCTでの折り返し運行が可能となり、乗務員不足への対応や改善基準告示で定められる拘束時間の遵守につなげられる。
医薬品のクロスドック輸送においては積み替え時の温度逸脱が最も懸念されるが、岩槻MCTと六甲MCTにはオートシェルターが完備されており、中継拠点における外気暴露を最小限に抑制。庫内は24時間の温度監視や入退出管理も徹底し、温度やセキュリティ品質を担保した医薬品物流に最適な環境下で、輸送や一時保管が行える体制となっている。さらに、今後は5G回線を活用した積み替え作業時のリアルタイム動画配信なども検討する。なお、積み替えの対象となるのはパレット単位の荷物のみとしている。

すでに、東北~関西間では医薬品メーカーと連携した岩手県発のテスト運行がスタートしており、早期の実稼働に向けた調整を進める方針。併せて、東北~関西間および九州・中国~関東間の長距離運行が必要となる医薬品輸送事業者や荷主企業などに幅広く利用を提案していきたい考えだ。他方で、対象とする荷物は医薬品に限定せず、「高度な温度管理が求められる精密機器など、多様な商材の輸送での利用も想定される」と赤澤社長は話す。

医薬品業界では東北や中国地方などに製薬会社の工場が多数立地し、消費地への長距離輸送が発生している。しかし、運輸業界では長距離運行を中心に乗務員不足が深刻化している上、乗務員の拘束時間管理も厳格化。医薬品輸送においては温度やセキュリティ管理をはじめとしたGDPへの対応も求められ、輸送事業者の負担は増している。こうした中、「温度やセキュリティ管理、防虫防鼠に対応した施設で積み替えを行い、長距離輸送を“分割”することで荷主企業に安心感を与えると同時に、輸送事業者を法令違反などのリスクから守りたい」(赤澤社長)との考えから、今回のメディカルクロスドックステーション構想に至った。

新中計で、持続可能な医薬品物流構築へ

中央運輸では、今期からスタートした中期3ヵ年経営計画のテーマに、①医薬業界のロジスティクスプラットフォーマーになる、②個々に頼ることのない組織力の整備、強化、③シェアリングを推進し協創環境を構築する――の3点を掲げる。メディカルクロスドックステーションは、「シェアリングを推進し協創環境を構築する」施策の一環。中計ではメーカー、卸、物流会社の持つ情報の共有化による人手・リソース不足の補完に向けて、まずは運送会社間の情報共有を進める。

「医薬業界のロジスティクスプラットフォーマーになる」としては、CO2排出量の削減をはじめとする、持続可能な医薬品物流の構築を目指し、医薬品共同配送の強化を推進。「個々に頼ることのない組織力の整備、強化」では今月1日に組織改編を行い、管理本部内の人事課を人事部に格上げした。研修や教育、採用活動を充実させることで、強固な人材と組織力の実現を図る。
(2020年4月7日号)


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