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ズームアップ 日販、業界連携で輸配送改革を加速

2017.06.08

「今後も出版輸送を維持・継続していくためには、取次の自助努力はもちろん、業界全体が協力し、改革に挑戦しなければならない」――。
日本出版販売(日販、本社・東京都千代田区、平林彰社長)では今年度から輸配送改革を加速させている。長引く“出版不況”で配送数量が減少する一方、コンビニ向けの配送件数は増加。また、配送方法の複雑化など様々な課題を抱えている。トラックドライバー不足が加わり、出版輸送は危機的状況にさらされており、一方ではAmazonが出版社との直接取引を強化するなど、これまで出版サプライチェーンの主導的役割を果たしてきた取次も転換期を迎えている。

最大手の日販では4月1日付で「輸配送改革推進室」を新設するとともに、流通環境の変化に対応した物流を目指す3つのプロジェクトチーム(PT)を発足。自社だけでなく、出版関係業界団体や取次他社との連携を通じて、納品時間指定の緩和、自家配送エリアの共配化、業量の平準化など輸配送環境の改善に向けた施策も進めていく。

「輸配送改革推進室」を新設

取次が直面する“輸配送の危機”の背景にあるのが「雑誌の低迷」。1996年をピークに出版物の売上高は右肩下がりだが、とくに落ち込みが目立つのが雑誌。「出版社、取次、書店ともに雑誌の利益を中心に経営をしてきた。雑誌は毎日発売され、その配送網を使って書籍を“相乗り”させてきたが、基軸となる雑誌が低迷したことがターニングポイントとなった」と酒井和彦専務は説明する。
輸配送の危機的状況を自社および出版流通関係者全体で解決するため、4月に「輸配送改革推進室」を新設。雑誌の販売量減少に対応した物流センターのあり方を検討する「雑誌物流再構築PT」、書店の減少やニーズの変化を踏まえた「書籍送品物流再構築PT」、書店の業態・売り場変化に対応し、手帳や文具、雑貨といった書籍以外の「開発品」の物流の構築を目指す「開発品物流構築PT」を発足させた。

阪南エリアで共配に切り替え

取次他社や出版業界のサプライチェーンの川上、川下と連携した輸配送改善の取り組みも進めている。日販、トーハン、大阪屋・栗田の取次大手3社は幹線・各エリアで共同配送を実施してきたが、1社で業量を確保できる大都市圏の一部では自家配送を行っている。業量の減少が進んだことから、16年4月から、従来は自家配送だった大阪・阪南エリアを共配にシフト。トラック9台分を削減し、積載率向上を図った。
「これからは取次各社が業量の情報を開示し、手を組んでいかなければならない」と流通計画室運輸グループの椿辰雄グループリーダーは話す。「阪南エリアは3社が同一の運送会社に自家配送を委託していたため共配に移行できた。ただ、自家配送の委託先は中小の運送会社が多く、デポのスペースに余裕がない」などハードルは高いが、引き続き自家配送エリアの共配化を模索する。

エリア配送の非効率解消にも取り組む。日販では15年に書店とコンビニの協力を得て、首都圏自家配送エリアを再編。コンビニは店舗ができてから送品開始までの時間が短く、店舗が増えるたびに“付け焼き刃的”に運送会社に委託してきたが、エリアごとに書店とコンビニの運送会社を一本化。行政区分ごとに1運送会社に委託することとし、最寄りのデポから配送する体制を構築した。

こうした非効率の解消を自家配送だけでなく共配エリアにも水平展開していく考え。椿氏は「1店舗に運ぶ荷物の量を増やすために、取次業界全体で業量情報を共有すべき。運送会社は『出版物を止めてはならない』という使命感を言葉以上に体で感じてくれている。誰にでもできる仕事ではない」とし、ドライバーの負荷軽減や業務の見直しの必要性を強調する。

「休配日」増やし、発売日見直しも

待機時間、附帯作業の削減は「荷主責任」と位置付け、改善に取り組む。出版輸送では、大型車の積載率を上げるために「手積み」「手下ろし」となっているが、荷役効率に寄与するパレット化の可能性も探る。宅配便を利用している「開発品」について出版便との混載も進める。

運送会社の負担を軽減するには、サプライチェーンの川上、川下の協力が不可欠だ。日本出版取次協会を通じてコンビニ本部の協力により4月からコンビニへの時間指定納品の緩和が実現。日本雑誌協会の協力で稼働日数の見直し、業量の少ない土曜日の「休配日」を増やす取り組みを進めている。業量の平準化は運送会社の負担軽減、長時間労働対策に寄与することから、書籍についても中長期的に発売日の見直しを要望していく。

書店の経営支援、業務代行も

出版流通全体で取次経由が占める割合は全体の5割。逆風の中で、取次の位置付けや機能はどう変わるのか。酒井氏は「出版流通の真ん中で、取次が物流、商流・決済、情報機能を担っていかなければ出版業界を支えられない」と強調。取次の使命として「顧客接点の拡大」を挙げ、「400弱の市町村から書店がなくなっている中で、消費者と本が出会える環境づくりに取り組む」と話す。

強化していく機能のひとつが「開発品」の流通機能だ。中小の書店の経営は厳しくなっており、消費者が本に触れる機会を増やすため、店頭に書籍以外の多様な商品をそろえ魅力的な店舗づくりが必要。独特な商慣習を持つ書店流通にメーカーが参入しやすい環境を整備するのも取次の重要な役割だ。書店の経営支援の観点から、発注など書店が行っている業務の一部代行も拡大していく。

(2017年6月8日号)


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