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ズームアップ 法人郵便物の集荷廃止、その後――

2018.09.18

日本郵便が6月末に法人郵便物の集荷を廃止する方針を示したことは、郵便物を大量発送する企業に衝撃を与えた。こうした企業の悩みに応えようと、軽貨物便会社やDM会社などを中心に郵便物の集荷代行サービスも登場。一方で、9月現在でも、会社によっては「条件付きで、従来通り集荷に対応してもらっている」ところがあるのも実態だ。

日本郵便では、ヤマト運輸による宅急便の値上げと総量抑制を背景に「ゆうパック」の取扱量が急増し、人手不足が顕在化。これまでは、大量の郵便物を郵便局やポストへ持ち込むのが難しい法人顧客などに対して、無料で集荷にも対応してきたが、今回、その廃止を決めたもの。今年5月ごろから、企業に対して通達文書などが渡され、6月末から集荷の対応を止めることが通知されていた。

この決定による“集荷難民”の発生が危惧される中、バイク便や軽貨物便で都市部の企業を回る会社などからは、「集荷代行サービス」が相次いでリリースされた。先陣を切ってサービス化したロジクエストの石井敏志・セールス&カスタマーサービスグループ副グループ長は「定期的に個人宛の郵便物を大量に発送するような銀行や保険会社、証券会社、税理士事務所などで、専任のメール室担当者を持たない会社からの引き合いが強く、日本郵便が通達を出した6月ごろには多いときで一日に数十件の問い合わせがあった」と振り返る。

同社にも、郵便局局員から郵便物の集荷廃止が通知され、「同じように困っている会社が他にもあるはず」と考え、商品化した。軽貨物便の配達員が顧客の指定時間に訪問し、郵便物と差出表を預かり、郵便局へ持ち込む。差出表は当日中に荷主へ戻すケースが多い。通数の確認は荷主と郵便局員が行うため、ロジクエストのドライバーはケースに入った郵便物を運ぶことが仕事となる。

同社Webサイトには『1回の発送は1000通まで』とされているが、実際には「軽貨物便車両に積み込める量であれば対応は可能」(石井氏)。料金については郵便物の量で変わるが、Webサイトにある『3800円(税抜き)~』との記載の通り3000円台半ば~5000円台の受注が主流で、集荷時や郵便局窓口での待ち時間も想定し、待機料として10分につき500円(税抜き)を定めている。

郵便局による当日分の持ち込み締切時間が17時であることから、集荷依頼が夕方15~16時に集中する点が運用面における課題となるが、同社ではランチタイムに多いデリカサービス(中食宅配)の配達を受託していることもあって、その波動を吸収できることが大きな利点。「年度内の目標として東京23区内におけるニーズの半分を獲得したい」と石井氏は話す。

ロジクエストのほかにも同様のサービスを展開する会社は軽貨物便会社などで多く、配送マッチングサービス「PickGO」を展開するCBcloud(本社・東京都千代田区、松本隆一社長)では、PickGOに登録される軽貨物ドライバーが郵便物の集荷を代行し、リアルタイムの位置確認にも対応する。バイク便や軽貨物便事業を展開するソクハイ(本社・東京都品川区、木村章夫社長)やDMポスティング会社などでもサービスを開始している。

他方で、ここにきて代行サービスへの引き合いそのものは落ち着いているという。企業に話を聞くと、郵便局員から「ゆうパック2点、クリックポスト2点を毎日発送してくれれば、従来通り集荷に対応する」などの条件を提示され、それに応えている会社も少なくなさそうだ。今回の集荷廃止も公式な発表はなく、ある程度、現場レベルの裁量に任されている向きも見られ、その方針が今後変わる可能性は否定できない。また、集荷代行会社によると、東京都内以外からの引き合いはまだ寄せられていないという。

さらに言えば、郵便物の集荷が信書便事業に当たるかどうかもグレーのままとなっており、特定信書便事業の認可を持たない会社が代行サービスを提供しているケースもある。すべては日本郵便の“さじ加減一つ”となっており、引き続き、同社の方針が多くの企業の対応に影響を与えそうだ。
(2018年9月18日号)


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