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いまこそオープンなプラットフォームが必要

BtoB領域で圧倒的な存在感を示す輸送事業を中心に、自動車販売事業などを多角的に展開し、「総合物流商社」としてのスケールアップを目指すセイノーホールディングス。物流が大きな転換期を迎えつつある今、どのような時代認識のもとで成長戦略を描いているのか——。インタビューシリーズのトップバッターとして、オープンプラットフォーム構築の重要性を唱える田口義隆社長に登場いただいた。(インタビュアー 西村旦・本紙編集長)

物流危機を乗り越える手段は3つしかない

 

――昨年あたりから「物流危機」という言葉が盛んに伝えられるようになってきました。まずは、こうした状況に対するご認識について教えて下さい。

田口 「物流危機」のファンダメンタルは何と言っても労働力不足に尽きます。そして、この潮流は今後も長期的に続いていくことは明らかです。国の政策を大胆に変え、移民制度などを導入しない限り、国内の労働人口が減っていくことは避けられないでしょう。この前提が今後の物流を見ていく時のベースになりますが、それを乗り越えていくための対策は大きく3つあると考えています。

1つ目はシェアリング。ヤマト運輸さんが先行してやっているように貨客混載で運ぶ、あるいは他社と手を組んで共同で運ぶというようなことです。2つ目は自動運転などに代表される省人化・無人化・自動化。そして3つ目が女性や高齢者の働き方です。労働のピッチを短く、きめ細かくして対応するということです。

対策は概ねこの3つに集約されます。このうち自動運転については法規制やインフラ整備の問題があるため、シェアリングに比べると効果が出てくるのはだいぶ遅れると考えています。

 

――自動運転や隊列走行は、どのくらいのスパンで実用化が可能だと見ていますか?

田口 まだまだだと思います。5年先でも視野に入ってこないのではないでしょうか。現在、特区で実証実験を開始していますが、実験だけでも1〜2年はかかるでしょう。また、特定エリア内での自動運転は始まったとしても、もっともやらなくてはならないのが高速道路での長距離輸送の自動化、つまり隊列走行です。これは現在の特区制度では対応できません。実用化に向けては、交通事故が起きた場合の対応など安全面が最大の課題になると考えています。事故が起きた際に、誰がどのような責任を取るのか――このあたりをしっかり法整備しなくては実用化には踏み切れません。そう考えると、5年というスパンでは入ってこないというのが現実的です。10年で入るかどうか、といったところではないでしょうか。

 

――商業ベースで見た場合、最短でも10年はかかりそう・・・。

田口 ですから、その前に労働力確保の方策を工夫したり、シェアリングを先行して進めていくことになるだろうと思います。

 

――ただ、すぐにではないにせよ、隊列走行などは将来に向けて大きな可能性を持っています。現時点でのセイノーHDとしての取り組みスタンスは?

田口 R&Dはやっていきますが、大きな投資はしません。なぜならば、現時点では回収が難しいからです。今後、政府主導で進めば、そこには参加していきます。タイミングを見計らっていくことになるでしょう。

 

――隊列走行の事業化は1社単独ではなく、当然そこにシェアリングの概念が絡んでくると思います。プラットフォームができれば、そこに乗っていくということでしょうか?

田口 福山通運さんと提携しているのも、将来的にそこをやらないといけないと考えているからです。セイノーグループだけでやってもあまり効果はありません。一般論として、プラットフォームはできるだけオープンにしなければ有用性が発揮できません。

例えば、いまトラックの待機時間の長さが大きな問題となっており、バース予約システムの開発が進んでいます。簡単に言うと、患者が何時間も待っている総合病院型から診察時間がきっちり決まっている歯医者型に変えていくことで生産性を向上させようというものです。当社もシーオスさんが開発したトラックバース積降予約システムを利用して、大塚倉庫さんと共同でトラックの荷卸時刻の事前予約を行い、待機時間の短縮で効果を求めています。ですが、もう少し大きな視点で見ると、「荷主A社はこのシステム、B社は別のシステム」では互換

性がなく、却って複雑になってしまいます。政府主導で共通のプラットフォームにしていかないと、結局

意味のないものになってしまう可能性があるわけです。例えば、多くの荷主さんと取引のある会社さんの場合、荷主ごとに違うアプリをスマホに入れて・・・というのは大変だし無駄ですよね。

 

――黎明期というか、初期段階でシステムは統一したほうがいいわけですね。

田口 そう思います。競争で自然淘汰を待つのは時間がかかるし、生産性も悪くなります。しかし、いまの状態ですと、自然淘汰を待って集約されるというプロセスにならざるを得ないでしょう。本来であれば、政府が「働き方改革」のコンテンツのひとつとして共通システムをつくればいい。オープン型でアクセスしやすいことを前提に一定のルールを整備すれば、みんなそこに乗ってくると思います。

25m フルトレーラ導入で「運び方改革」を推進

 

 

「配送費は実費」と謳えばベクトルは変わっていく

 

――いま、「物流」が世間からかつてなく注目を集めている状況です。そのこと自体はどのように受け止めていますか?

田口 間違いなくいいことです。運送費や物流費はこれまで、製品単価に含まれる経費という存在でしかなく、常に圧縮を余儀なくされていました。通販でも「送料無料」という言い方をしますが、それだと我々物流事業者は経費圧縮という限りなくゼロに向かっていくベクトルしか持ち得ません。それを例えば、「配送費は実費」と謳ってもらえば、送料は利用者負担に変わっていきます。いまはまだ、そこまでの意識変化に至っておらず過渡期の段階ですが、物流の重要性や存在意義が改めて注目されるという意味でもいい流れが始まっていることは確かです。

 

――ネット通販の拡大で、商流がBtoCにシフトしています。今後は、メーカーがモノを売る場合もアマゾンを通じて販売していくような形が主流になっていくことも考えられます。BtoB分野が主戦場であるセイノーグループにとって、物量が減っていく懸念がありますが・・・。

田口 一定量は減っていくでしょうね。とくに、これまでデパートで販売されていたものが、ネット通販で宅配されるという形で、ラストワンマイルでの運び方が変わることで川下での物量に影響が出ることは避けられません。ただ、原材料の仕入れから製造までの工程、つまり部品を集めて生産ラインに投入するといった上流工程における物量はそれほど大きく変化しないと思っています。

 

――となると、今後はより上流工程を攻めていくことになる・・・。

田口 物流機能としてはそうなるでしょう。総合物流商社という流れの中では、今後は海外からの半製品や完成品の仕入れも多くなるので、海外とりわけアジア圏はバリューチェーンとして必要不可欠なものになっていきます。

 

「空間効率」から「時間効率」へ運び方を変えていく

 

――物流危機の根幹にある労働力不足という課題に対して、セイノーグループとしてどのように対処していきますか?

田口 まず当社グループの立ち位置は、BtoBにほぼ特化しています。宅配などtoCとの大きな違いは土日や祝日の配達が少なく、その点でドライバーなどへの負荷が比較的に少ないという違いがあります。また、toBネットワークとしては業界の中でも優位性があり、採用面などでは比較優位性があると思います。

ただ、むしろ今後は、小売業や他のサービス業といった異業種との競争、労働力の奪い合いという面が強くなっていくでしょう。労働人口が逼迫していくことは間違いないので、しっかりした対策が必要になっていきます。

 

――具体的にはどんな取り組みが考えられますか?

田口 労働環境と賃金体系の2つに尽きます。労働環境では時間に対する負荷をいかに軽減できるか。また、賃金面では評価制度の見直しを含めていかに上げていけるか。今のところ、業界内では比較的優位性が有ると思いますが、さらなる労働環境や条件の向上がない限り、将来的に事業継続性が担保できなくなるという危機感を感じています。その点については労働組合ともよく話し合っています。組合も、従業員の立場でありながら、事業継続性など経営者目線で考えてくれており、感謝しています。

 

――長距離幹線ドライバーの場合、その日に自宅に帰れないという勤務形態が若年層から敬遠されているという声もあります。そこでセイノーグループではフルトレーラの導入や中継輸送など「運び方改革」にも取り組んでいます。

田口 色々な手法を打っていますが、もっとも有効なのは、ユニットロード化によって従来の「空間効率」から「時間効率」重視に変えて、時間密度を濃くしていくことだと考えています。11t車を例にとると、これまでは2時間かけて2000個の荷物を荷

台に積み、2時間かけて150㎞の距離を移動し、また2時間かけて荷物を降ろす――つまり6時間拘束となっていました。これがロールボックスを使ってユニットロード混載することで、積み込みに15分、輸送に2時間、荷卸しに15分の計2時間半で業務が完結できるようになります。もう1回転しても5時間しかかかりませんから、ドライバーの拘束時間も短縮され、輸送効率も向上し働き方

も改善します。あくまで机上の計算ではありますが、基本的にはそうした方向に進んでいきたいと思っています。

 

――ロールボックス化はこれまで、積載効率が落ちるという理由から特積業界でもなかなか進みませんでした。

田口 その通りです。ただ、これからは11t車の積載率が仮に70%に下がっても、2回転できれば140%になるという考え方がより重要になってくるはずです。本来はもっとスピード感を持って進めたいのですが、当社の場合、幅広い形状の荷物を運んでいることもあって、なかなかロールボックスの導入が進まなかったという経緯がありました。当社は社会使命として、荷物の制限はかけていませんので。

 

――「NOと言わない、SEINO」という社会使命ですね。

田口 そこで最近は、「メガエキス」という積合せ貸切サービスを商品化し、ロールボックスに入りにくい荷物をそちらに逃がすようにしています。いま、このサービスが爆発的に伸びており、本来の特積み輸送は形状の整った荷物を効率よく回せるようになってきています。

 

――それによって運行便の定時発着率が高まり、輸送のダイヤグラム化が進みます。

田口 定時発着ができるようになると、今後はお客様が「この便を押さえる」という形で予約ができるようになっていきます。現状では、お客様のところに行かないと、いつどんな荷物がどのくらい出るのか分かりません。それが事前につかめるようになれば、お客様の利便性も高まり、当社の輸送効率も向上します。労働力不足が進めば、当然キャパの奪い合いという流れになっていきますので、お客様がデジタルにスペースをブロックできるような仕組みをつくっていければと考えています。

 

――それが「良循環」ということですね。輸送距離の長いところでは鉄道コンテナの利用も拡大しています。

田口 我々がお客様に提供している機能は到着時間のスピードと、いかに安心・安全に運ぶかです。逆にそれさえ担保できればモードは何でもいいわけです。今後ドライバー不足がさらに進めば、鉄道輸送はより重要になっていくでしょう。

 

経済はオープンでないと循環していかない

 

――田口社長が提唱するOPP(オープン・パブリック・プラットフォーム)の概念に基づいて、福山通運をはじめとする提携が広がりを見せています。OPPの考え方を改めてお聞かせください。

田口 経済はオープンでないと循環しません。「花見酒」という有名な落語があります。2人が樽酒を運んでいて、1杯5銭で売ると2両儲かる計算ですが、途中で1人が5銭を払って1杯呑む。次にもう1人がもらった5銭で1杯呑む。それを繰り返し樽酒がなくなったとき、売上げは最初の所持金の5銭だけだった――というお話です。つまり、クローズドなところでは価値は生まれず、オープン化して多くの人を巻き込きこむことが必要だということです。

大事なことはまず、オープンであること。そして、プライベートでなくパブリックであること。パブリックとは互換性があるということであり、逆にそうでないとオープンに対する足かせになってしまい、利用者の幅も広がりません。必要以上のルールはつくらず、開放的(オープン)かつ誰もが使える(パブリック)なプラットフォームをつくり、そのプラットフォーム上で利用者がそれぞれの価値を見出していけることがなにより大事だと思います。

 

――限られたリソースをシェアしていくことにも通じます。

田口 ドイツが提唱する「インダストリー4.0」に対抗して、経産省を中心とした日本政府が打ち出した「コネクティッド・インダストリー」もこれとまったく同じ考えです。ドイツではシーメンスとSAPが中心にやっていますが、日本はそれぞれの業種業態で圧倒的に強いプレーヤーがいるケースばかりではありません。しかし、それぞれが持っている情報を繋げていくことで、ものすごく大きなことができるようになります。

例えば、トヨタ自動車さんのクルマは世界中に走っていますが、そこから得られる情報をIoTで吸い上げてオープンシステムで運用することで、より使いやすいクルマづくりや渋滞が起きにくい交通システムを構築することも可能になります。こうした「コネクティッド・インダストリー」は今後の日本の切り札になるのではないかと考えています。

 

物理的融合から情報的融合に進んでいきたい

 

――福山通運との取り組みでは、どのようなコラボレーションを考えているのですか?

田口 当初は人手不足という足元の課題にどう対応するかというテーマから始まりましたが、この後に「コネクティッド・インダストリー」の概念が打ち出され、目指す方向性が同じだと感じました。

第一段階としては、物理的・空間的な融合である共同輸送などを展開していますが、その先のステップとして情報的融合――つまり両社が持つ情報の互換性を高めていけばもっと強くなれると思っています。そして3つ目が金融的な情報

融合です。我々のお客様の中にも動産担保、つまり「この商品で1ヵ月後に100万円入るのなら、いま95万円を欲しい」というお客様もいます。将来的には、この分野でも面白い事業が可能になると考えています。

 

――田口社長は以前、「顧客の荷動きを日々見ていることで、銀行よりも早く会社の状況が正確に分かる」と話されていました。ファイナンスする際にもリスクが回避できる、と。

田口 当社の場合、倒産リスクは銀行の10分の1以下です。運賃回収ができなかったというケースはほとんどありません。銀行はデータを見ながらバックミラーで貸していいかを判断していますが、当社の場合はお客様の日々の荷動きという形で足元が見えますので、そこが強みになっています。我々は金融工学こそできませんが、顧客に対するキャッシュフローのサポートはできますし、銀行とも一緒にやっていけると思います。

 

――さきごろ阪急阪神エクスプレスに33%を出資しました。その狙いは?

田口 当社グループの軸は常にお客様目線です。お客様が必要とされている機能――ゴルフに喩えれば、良く飛ぶドライバーは持っているが、いいユーティリティがない。それなら良いところと組んでいけばいい――ということです。

国際物流について言えば、当社グループは長らくシェンカーさんと提携しています。シェンカーさんは海貨に強みを持っており、ロジスティクス分野でも自動車部品の在庫管理などを世界的に展開しています。一方、阪急阪神エクスプレスさんは日系企業であり航空フォワーディングに強みを持っています。シェンカーさんが持っている網とはまた違うものを持っており、お客様に対しても、より幅広いメニューを提供することができます。

 

――顧客のバリューチェーン構築をサポートしていく中で、ニーズに応じてシェンカーや阪急阪神という豊富なメニューを提供できるメリットは大きいですね。

田口 可能な限りワンストップで提供していきたいと思います。お客様にとっても、担当者が何人もいるよりも1回のやり取りで済むほうが便利なはずです。将来的には、当社でもシェンカーさんでも阪急阪神さんでもインボイス1本で請求できるようになれば、お客様も楽になります。あくまで軸はお客様目線であり、いかにお客様の繁栄に寄与できるかが基本です。

 

ロジを強化することで「情報逆流」が起きてくる

 

――従来から圧倒的な強みを持っていたトラック輸送に加え、国際物流、コールドチェーンとメニューが広がってきました。

田口 物流として提供できる機能はだいぶ整ってきました。ただ、さらに強くしていかなければならない分野があと2つあります。それは「ロジスティクス」と「金融」です。中期経営計画でも強化すべき分野として「ロジ」「国際」「金融」を挙げています。金融については先ほども言いましたが、お客様のキャッシュフロー・コントロールにどのようなソリューションが提供できるかを含め、大きな可能性が広がっています。モノがあるところには必ず金融がある、ということです。

――ロジスティクスについてですが、私がイメージするのは東京・新木場で稼働した大規模施設「セイノー ロジ・トランス」です。ターミナル上層階に倉庫スペースがあることで、そこに顧客の荷物を在庫すれば集荷の手間が省け時間効率が高まります。流通加工など付加価値をつけることも可能です。

田口 提供機能としてはその通りです。ただ、ロジを強化する目的は他に2つあります。ひとつは「情報逆流」。コンシューマーがいま何を求めているかの情報をお客様に〝逆流〟させることができれば、お客様の事業はもっと強くなります。そして、もうひとつは「流動管理」です。ロジ機能を強化することで、どこでどんなモノが溜まっているかが分かるようになり、例えばAという場所よりもBに持っていったほうが高く売れるということが見えてきます。この2つの機能をお客様に提供できるようになれば、「セイノー ロジ・トランス」などの〝箱〟がもっと生きてきます。

 

――ビッグデータで吸い上げた情報を使って、顧客に対してコンサル的なことができるし、そこに金融機能を絡めることも可能になる・・・。

田口 初期段階として、混載貨物情報とお客様の商業情報を同一のプラットフォーム上でやり取りすれば、それだけで情報逆流が起き始めます。残念ながら、現段階ではそういう情報提供のやり方はまだできていません。いまは「ここからここまでモノを運びなさい」という情報だけで完結しており、当社としてバリューチェーンをコントロールできていません。

ロジ強化で「情報逆流」を進める

 

 

他の業種業態と連結していく力が必要になる

 

――M&Aについてもここ数年積極的に取り組んでいるように見えます。どのような基本理念をお持ちでしょうか?

田口 アライアンスの組み方には、オペレーションの提携、営業の提携などがありますが、その最後の段階として資本的な提携、つまりM&Aがあります。ただ、M&Aまで進むには理念を共有しないと難しいと思います。逆に理念共有まで至っていないなら、まずは業務提携からスタートさせるということです。

 

――いま、セイノーグループに必要なものとは?

田口 セイノーホールディングスとしての現在の立ち位置から言うと、他の業種業態と連結していく力が大事だと思っています。セイノーグループは地域に立脚した会社としてスタートし、自動車販売を含めてトラック関連で大きくなってきました。その強みをさらに発揮するためには、別のインダストリー、多様な業種業態と常に情報交換していくことが大事です。それによって、バリューチェーン全体の中でどこがお金を生む瞬間になっているかが見えるようになってきます。また、それが見える人材を育成・開発していくことがこれからの最大のテーマでもあります。

他産業とつながっていく力が必要…

 

 

運賃だけにフォーカスすると議論が矮小化される

 

――最後に。「モノが運べない」リスクが顕在化する中で、物流各社が適正運賃の収受に動いています。運賃・料金収受についてはどのようなお考えをお持ちでしょうか。

田口 繰り返しになりますが、セイノーグループのベースにあるのは「お客様の繁栄」です。ただ、それは運賃を下げてお客様のキャッシュフローを軽くすることではありません。当社が支えるバリューチェーンがあるから製造が安定する、全体効率が向上する――といった形でお客様の繁栄に貢献していくことを目指していきます。

例えば、商品価格に占める物流費は約8%、間接経費は約20%と言われています。仮に運賃を10%下げたところで商品価格に与えるインパクトは全体の0・8%に過ぎません。それよりもバリューチェーン構築で間接経費を10%引き下げたほうが、全体に与えるインパクトは2%になり、お客様に喜んで頂けるはずです。

物流業界全体で適正運賃・料金を収受しようという動きが顕在化しており、当社グループとしても適宜、お客様にお願いしています。ただ、運賃というところだけを見ると、議論が矮小化されてしまいます。我々に仕事を任せていただいたら、たとえ相応の運賃を支払ったとしても、バリューチェーン全体の工程が改善されるというのが理想です。

 

――運賃だけにフォーカスするような議論はあまり生産的ではない。

田口 人件費や燃油費など仕入値や原価が上がる時はあります。そこで値上げをしなければ、我々もお客様も細っていってしまいます。ですが、値上げはしますが、他でしっかり知恵を出します――私はその方がずっとサステナビリティがあると思っています。

田口義隆(たぐち・よしたか)
 1961年4月生まれ。85年西濃運輸入社。セイノーアメリカ社長、西濃運輸取締役、常務、専務、副社長を経て、2003年6月代表取締役社長に就任。05年10月にセイノーホールディングスに商号変更、同社代表取締役社長。岐阜県トラック協会会長など公職多数。