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物流に“開発”という概念を入れていく

ここ数年、物流業界で「センコー」の存在感が急速に高まっている。世間の耳目をひく積極的なM&A戦略やスピード感のある事業展開により、業績面でも急成長を遂げている。そのセンコーグループを強いカリスマ性で牽引しているのが福田社長だ。いま最も注目される経営者のひとりである福田氏に、自身の経営理念や物流の課題、今後のグループ戦略について聞いた。
(インタビュアー/西村旦・本紙編集長)

今後は海上輸送の比率を高めていく必要がある

 

――このところ台風、地震などの自然災害が多発しています。

福田 7月に発生した豪雨災害では、広島、岡山を中心に山陽線が長期間にわたってストップする事態になりました。当社はかなりの物量を貨物鉄道で運んでいるため、レールが長期間にわたって不通になることで影響がありました。とくに関西~九州間の代替としてRORO船など4隻を使ってコンテナを輸送しました。

今回の一連の災害を受けて、今後は海上輸送のウエイトをより高めていく必要があると感じています。当社は昔から海運事業も展開しており自社船を保有していますが、ケミカル船などの専用船が中心です。今後はRORO船による輸送力も強化していきたいと思います。

 

――今年4月にセンコーの海運部の事業を承継した「センコー汽船」を設立しています。

福田 災害リスクを踏まえると、今後の国内幹線輸送はトラック、鉄道、海運それぞれの長所を活かしつつ、それらを効果的に使い分けていくことが大切になります。例えば、関西などから九州向けに幹線輸送する際、鉄道の場合は小倉(北九州)を経由する形になりますが、海上輸送であれば大分や宮崎などを一直線で結ぶことができるので、輸送距離も短くなりますし、リードタイムもそれほど変わりません。将来的には北海道発着の物流についても船舶を使った輸送を増強していきたいと考えています。

センコー汽船が運航するアスファルト専用船

 

――鉄道コンテナ輸送については引き続き力を入れていきますか?

福田 当然やっていきます。当社はここ数年、鉄道へのモーダルシフトに注力しており、すでに多くの実績を積んでいます。今年度の「物流環境大賞」(主催・日本物流団体連合会)でも、当社の鉄道モーダルシフトの取り組みが大賞を受賞しました。ただ、今後の自然災害の発生リスクなども考慮すると、海運を含めたより幅広い輸送の選択肢を持っておく必要があります。

それに関連して、長距離を中心としたトラック幹線輸送についても、ドライバー不足や働き方改革が進む中で、トレーラ化や中継輸送の拡大に取り組んでいます。中継輸送では、例えば関西~九州間であれば広島周辺の拠点に中継機能を持たせるなど、車両とドライバーをスイッチさせるドッキング輸送を展開しており、すでに全国で100ルート近くまで拡大しています。今後も実施ルートを増やしていきます。

 

外国人労働者の就労緩和は避けられない

 

――その人手不足ですが、センコーグループとしての現状はいかがでしょうか?

福田 不足感は常に感じていますが、もっとも足りないのは、やはりドライバーです。また、物流センターなどで働くパートやアルバイトについても恒常的に不足しているのに加えて、人件費単価も上昇しています。当社グループでいま、パートと派遣社員合計で約1万5000人が働いていますが、単価上昇によるコストアップも大きくなっています。

 

――福田社長は、かねてから外国人労働者の就労を進めるべきだと発言されています。

福田 物流業界の労働力不足を解決していくためにも、外国人労働者の就労規制をもっと緩和していく必要があります。当社では昨年、ベトナム・ハノイの職業訓練校と提携しましたが、今年12月から初めて40名が技能実習生として来日する予定です。物流関連ではまだ、自動車整備と工業包装の分野でしか就労が認められていませんが、今後は対象業種や枠をもっと広げて欲しいと考えています。

 

――今年4月の機構改正でも「外国人就労支援室」を設置しています。

福田 政府も外国人就労規制を緩和する方向に進んでいますが、もっと広げていかないと物流業界は大変なことになるという危機感があります。ドライバー不足はますます進んでいますし、内航の船員不足も深刻です。物流業界の関係者の中には「日本人の雇用が奪われる」「賃金が下がるのではないか」といった懸念があるかもしれませんが、私はその心配はいらないと考えています。なぜなら、日本人だけでは足りない労働力を外国人でカバーしていくことであり、日本人の労働力を奪うことはありません。また、賃金についても、当社は技能や能力が同等であれば、日本人も外国人も水準を一緒にしていきます。

 

――将来的にドライバー職への外国人就労が認められた場合、技能的には問題はないでしょうか?

福田 運転技術の面ではまったく心配していません。当社は中国・上海にある「上海邦徳職業技術学院」と2016年に業務提携して、物流学科の生徒を対象に当社グループの社員が定期的に研修を行っています。また、タイやベトナムでも同様の取り組みを進めています。将来的にはこうした外国人を日本に呼んで働いてもらいたいと思っています。当社には「クレフィール湖東」という研修施設もありますので、日本でもしっかり研修を積むことができます。

 

――将来を予見して、常に先手先手で課題解決に向けて手を打っている印象があります。労働力不足が到来することを、以前から予測されていましたか?

福田 かなり前から危機感を持っていました。例えば、物流センター内に保育所を設置する取り組みは今でこそ増えてきましたが、当社は10年以上前からやっています。当時から、地域によっては保育所がなくて女性パートを確保しにくいという状況が起きていたため、子どもさんと一緒に出勤できる環境を整備しました。06年に初めて泉北第2PDセンター(大阪府泉大津市)に開設し、今年10月には2号倉庫が竣工した加須PDセンター(埼玉県加須市)でも保育所を開設しました。現在、全国6ヵ所に設置しています。

 

新技術を自分たちの手で開発していく

 

――AIなどを活用した省人化・機械化に向け、今年4月に「AI化プロジェクト」「ロボティクスプロジェクト」を立ち上げ、さらに7月には次世代技術の開発・販売を行う新会社「イノバテックスタジオ」を設立しました。

福田 イノバテックスタジオは社員の提案を受けて、ゴーサインを出しました。いま社員が13名いますが、このうち半分は米国やフランス、インド出身のITエンジニアです。たまに私も職場に行きますが、出勤時間やオフィス席もフリーで、「これがセンコーのグループ会社か?」というような自由な雰囲気です(笑)。労働力不足の解決もさることながら、単純労働や重量物などの作業は可能な限りヒトからロボットに置き換えていくべきで、いつまでも人間がやるような時代ではありません。そういうAIや次世代技術の開発に取り組むようにプロジェクトや新会社に指示しています。

 

――物流事業者が新技術の開発主体になっていくというコンセプトは画期的だと思います。

福田 これまでの省人化・機械化というのは、マテハンメーカーの既製品を導入したり、一部アレンジして運用することが一般的でした。それを今後は、自社で開発まで手掛け、メーカーに製作してもらう――そういう方向にシフトしていければと考えています。我々には物流現場で蓄積したノウハウや知見があります。それを吸い上げることで、より使い勝手の良いソフトやハードが開発できる可能性があります。AIを活用して間接業務や事務作業をロボットに置き換えていくRPA(Robotic Process Automation)やコールセンター業務の音声ガイダンス化、AIによる配車業務の自動化などに取り組んでいく考えです。

センター内で稼働する無人フォークリフト

 

物流には“開発”の発想が足りない

 

――様々な施策や取り組みを見ていても、「まず、自分たちでやってみよう」という前向きな姿勢を感じます。

福田 私は04年に社長に就任しましたが、それ以前から「物流事業者には“開発”という発想が足りない」と思ってきました。ですから、私が社長になったら経営に“開発”という発想を採り入れて、一定のコストを投じていこうと考えていました。メーカーは常に莫大な開発コストを投じて、自社の商品や業務をイノベーションしています。

 

――確かに、センコーという会社の事業戦略やスタンスは“開発”というキーワードで紐解くと分かりやすいですね。

福田 例えば、当社の「クレフィール湖東」は、より優秀な人材を“開発”するために必要な機能であり施設です。多額な運営コストを掛けていますが、物流事業者にとってもっとも重要な「人材」の開発コストだと捉えれば高いものではありません。

 

M&Aはお互いの事業成長とシナジーが大切

 

――御社のM&A戦略は対象業種も幅広く、同業他社とは違った特色があります。それも“開発”という視点で見ると分かりやすいですね。

福田 私が初めてM&Aに関わったのは30歳過ぎです。当時、トラックが足りずに毎日車両集めに走り回っていました。そうした時に、運送会社の買収を担当しました。以来、M&Aに関わっており、社長になってからさらに加速しています。

 

――福田社長の経営手法のひとつにM&Aがあるわけですね。その対象も、物流企業にとどまりません。

福田 当社は物流事業部門だけでなく、商事部門、ビジネスサポート部門、ライフサポート部門がありますから、M&Aの対象は必ずしも物流だけではありません。例えば、商事部門では昨年9月、傘下の家庭日用品の卸会社である丸藤が、オクムラというスリッパの製造会社を買収しました。これなどは、商品を仕入れて販売しているのだから、自分たちでメーカー機能も持ってしまおうという発想です。こうした提案が常に社員から上がってくるようになっています。

 

――当然、物流とのシナジーも考えている。

福田 もちろんです。オクムラの場合は、生産工場のある中国から日本への物流で、高コストの倉庫を上海港で借りるなど非効率な物流体制になっていました。当社で物流を手掛ければ、もっと低コストで効率的にできることが分かっていたので、物流改善を通じて経営をもっと良くすることができるという判断もありました。

 

――自らが“運ぶモノ”を生み出していくという発想もありますね。

福田 川上に製造という「ものづくり」があって、川下には「販売」があります。我々はその真ん中にいるわけです。真ん中にいるからこそ、川上にも川下にも広げていける。可能な限り「ものづくり」から「販売」までを手掛けたいというのが、当社グループの戦略です。

 

――一般的に世の中のM&Aの成功率は低いというイメージがあるのですが、センコーの場合は高い確度で成功しているように思います。その秘訣とは?

福田 秘訣と言えるものはないですが、相手先のトップとしっかり対話することが大切です。もちろん、財務諸表などの経営数値をしっかり把握するのは当然のことです。

かなり昔のことですが、ある物流会社の買収を担当した時、相手先の役員が私の泊まっている旅館に夜やってきて、土下座をしながら「会社をよろしくお願いします」と言われた経験があります。もちろん、「やめて下さい」と逆にお願いしましたが、買収される側にとって会社が買われるということはそれほど怖いものなのです。その気持ちはよく分かります。ですから、グループ化した会社に役員を派遣する際も、「相手を見下すようなことは絶対にするな」と必ず言っていますし、それをくどいほど徹底しています。

また、可能な限り自主独立経営とし、強引にセンコーの色に染めることはしません。もちろん、良くないと思ったところは変えるようにお願いしますが、その会社なりの生い立ちや文化などは極力尊重するようにしています。そのあたりの当社の思いやスタンスを感じていただいて、相手先の社員の皆さんもやる気になっていただけていると思います。

 

社員の健康のためフィットネスクラブを買収

 

――ライフサポート部門では、フィットネスクラブの運営会社も傘下に入れました。

福田 山梨を本拠地としている会社ですが、この会社を買収した狙いのひとつは社員の健康です。当社グループでは約4万2000人が働いていますが、全員が健康な人生を送ってもらいたいと願っています。そこで、運営会社には今後、当社の大型物流センターの近くにフィットネスクラブを出店して欲しいとお願いしています。また、東京・潮見にある東京本社の隣接地にホテル建設を進めていますが、その敷地内にフィットネスクラブを開設する予定です。東京本社に勤務する約800人の社員が利用できるようにしたいと考えています。

 

――飲食事業にも力を入れています。

福田 すでに、クレフィール湖東でレストランを運営しているほか、東京や大阪でも飲食店を経営しています。建設中のホテルの2階にも直営レストランを開店することが決まっています。こうした飲食店の運営は通常、外部に委託してしまうケースが多いですが、私は「自前でやれ」と言っています。

 

――それは何故でしょうか?

福田 外部に委託すれば非常に楽だし、一見効率的に見えます。しかし、管理するだけではビジネスとして広がりがありません。例えば、レストランを運営すれば、仕入れをはじめ色々な課題が生じますが、それらの課題に向き合って解決することでノウハウが蓄積でき、ビジネスとしての広がりが生まれてきます。

物流でも同じことが言えます。仮に、大阪から長野へトラックで輸送する案件があるとします。通常であれば、長野から大阪にやってくる運送会社を探して、その帰り便を傭車しようとします。しかし、私は敢えて「大阪発の自社トラックで行け」と指示します。そうすると、指示された人は長野で帰り荷を探さなくてならないため営業するようになり、その結果ビジネスが広がっていくのです。できるところは可能な限り自分たちでやることがビジネスを広げていくには大切なのです。これも、ある意味で“開発”という考え方に通じるものがあります。

 

国内の拠点展開は5年後にはペースダウンする

 

――物流事業について伺います。国内では依然としてハイペースで拠点展開を進めています。

福田 確かにいまは急ピッチで物流拠点を新設していますが、今後は開発ペースも落ちていくと思います。国内貨物の総物量は増えておらず、今後は人口減少もあってゆるやかに減少していくでしょう。では何故、当社が伸びているかといえば、自家物流が営業物流に転換する動きが続いているからです。これまでメーカーや量販店などが自社で行っていた物流をアウトソーシングする際、当社グループがその受け皿になっているということです。最近は、ドラッグストア関連からの受注が増えているほか、ファッション関係でも受託領域が広がっています。

それに加えて、昔からある古い倉庫が最新鋭の倉庫に置き換わってきているという流れもあります。ただ、いずれにせよ、国内の物流需要のパイが大きくなっているわけではないので、あと数年で伸びは鈍化していくと考えています。

 

――どのくらいの時間軸で考えていますか?

福田 5年くらいで限界に達するかもしれません。そうなると、業者間競争がより一層激しくなるでしょう。そうした状況の中でどれだけ伸ばしていけるかが今後の課題だと思います。

 

3温度帯事業は国内外でもっと拡大する

 

――そうなると、やはりグローバル展開が不可欠になってきますね。

福田 少し前まで当社グループのグローバル事業は遅れていましたが、ここ数年、かなり積極的に展開しており、社員からはもっと海外に出たいという声も増えています。17年4月にはシンガポールに本拠を置くフォワーダー・スカイリフト社を子会社化したほか、今年9月にはタイのベストグローバル社を傘下に収めて国際フォワーディング事業を強化しています。スカイリフト社はアジア域内に強く、IATA(国際航空運送協会)の免許も持っています。また、ベストグローバル社は欧州にも強く、今後は日本を経由しない三国間の輸送需要も取り込んでいけるようになります。さらに、スカイリフト社では、日系量販店の店舗配送業務など新たな事業領域にも取り組んでおり、シナジーが出ています。

17年にグループ化したスカイリフト社

 

――国内外とも3温度帯の物流センターを拡大しています。

福田 14年に子会社化したランテックが大きく寄与しています。ランテックは今年に入って3拠点(広島支店第2センター、大阪支店南港センター、福岡支店センター増床)を増設しており、8月に新設した「加須PDセンター・2号倉庫」はセンコーとランテックが共同運営する初の3温度帯センターです。また、海外でもセンコーとランテック、シノトランスによる3温度帯の「北京物流センター」が11月稼働するほか、タイ・バンコクでも現地外食チェーンとの合弁会社が19年に新物流センターを稼働させる予定です。3温度帯物流に関しては、日本でもまだまだ成長する余地はありますし、海外ではアジアを中心にもっと需要が高まると考えています。

ランテックと共同運営する「加須PDセンター・2号倉庫」
中国で稼働した3温度帯拠点「北京物流センター」
来年にはバンコクでも3温度帯の大型拠点が稼働(完成予想図)

 

――今後、進出を考えているエリアや国は?

福田 広げていきたいのはアジアではインドネシアやインド。欧州では近く、ドイツに駐在員事務所を開設する予定です。

 

軽貨物事業への進出も検討していく

 

――国内輸送ですが、グループの直営車両の比率を引き上げる計画を進めています。

福田 いま直営と傭車の比率は4対6くらいですが、今後直営車両を増やしていき、できれば5対5の比率にしていきたいと思っています。現在、センコーグループとしての直営車両は6000台弱ですが、これを8000台まで増やしていきます。協力会社による傭車を減らしていくわけではなく、直営を増やすことで全体の車両台数を増強するという考え方です。

 

――ドライバー不足が進む中で、直営化による輸送安定化は欠かせない施策だと思います。

福田 それに加えて、今後は軽貨物事業にも進出したいと考え、いま事業化に向けた検討を進めています。これが実現すれば、直営車両はさらに増えることになります。

 

――どういう事業コンセプトでしょうか?

福田 eコマースの急拡大を受けて、ラストワンマイルの需要は確実に増えていきます。これまで宅配事業はヤマトさん、佐川さん、日本郵便さんの3社が中心でしたが、宅配危機の顕在化を受けて、今後はエリアごとに事業者にラストワンマイルを委託する動きが増えてくると考えています。できれば当社もその一端を担いたいと思っています。

今後の働き方改革とも密接に関連しますが、例えば当社の社員が個人事業主として軽貨物事業を行うことも考えられるかもしれません。午前中は当社で働いて、午後から個人事業主として軽貨物のドライバーになることもあるかもしれません。今後は多様な働き方を認めていく方向で制度づくりを進めていかなければなりません。

 

多様な働き方を可能にする制度に変えていく

 

――ある意味で“副業”を認めていくということにもつながりますね。

福田 副業については、長時間勤務になってしまう可能性があり、そこは気を付ける必要があります。例えば、センコーで目一杯働いて、他でも勤務する――そういうことは労務管理上も認められません。しかし、当社の管理が行き届く形での副業、つまり当社が副業を斡旋するものであれば可能だと思います。また、社員の定年後の再雇用を進めていくという意味でも、軽貨物事業は有効な手段になると思います。

 

――人材を確保していくためにも、多様な働き方を認めていく制度にしていく必要があります。

福田 例えば、首都圏の社員は1時間半、2時間もかけて通勤していることも少なくありません。そうであれば、自宅の近場にサテライトオフィスをつくって、そこに出勤するようにしたらいい。最近、千葉県内に研修施設を購入しましたが、サテライトオフィスとして活用することも検討しています。

 

我々は失敗を重ねて成長してきた

 

――同業他社の声を聞いても、御社の営業力と現場力は脅威に映っているようです。福田社長から見たセンコーグループの強みとはどこにあるとお考えですか?

福田 当社は85年に小売り・量販店向けの物流業務に進出しました。これがひとつの契機になって、会社が大きく変わってきたように思います。それまでの当社は住宅やケミカルなどの物流業務が中心で、扱うモノやロットもトン当たりなど大きな単位での物流が主流でした。それが小売り物流に進出してからピース単位の細かいものに劇的に変化していきました。正直言って、当初は何回も失敗を重ねました。ただ、組織もヒトも失敗を重ねることで成長します。当社は過去の失敗事例集を残しており、それを社内で共有しています。その積み重ねが当社を強くしていったひとつの要因だろうと思っています。

それと、これは私が新人の頃に言い出したのですが、物流コンサル部門を立ち上げたことも当社の業容拡大に大きく役立ちました。70年にシステム開発部を立ち上げて、当時の物流企業では珍しい理系の学生の採用を始めました。現在はグループ内に150人の物流コンサルタントを抱えており、08年には「ロジ・ソリューション」として独立させました。

「組織もヒトも失敗することで成長する」

 

10年後、物流事業者の数は確実に減る

 

――最後に。今後の物流業界はどうなっていくと考えていますか?

福田 10年後を見ると、物流事業者の数はおそらく減っているでしょう。いま、トラック事業者だけで約6万3000社ありますが、中小事業者では後継者がいないという話をよく聞きます。実際、そうした会社から買ってくれないかという声がかかることもあります。そうした会社が当社に限らず、大手事業者に組み込まれるという流れは強まっていくでしょう。

また、大手事業者間でも再編は進むと思います。資本提携でなくとも、協働や連携といった動きはさらに加速すると見ています。

福田泰久(ふくだ・やすひさ)
1969年センコー入社。93年取締役、97年常務、03年4月ロジスティクス営業本部長、同年6月副社長を経て、04年6月代表取締役社長。17年4月センコーGH発足に伴い同社社長に就任(センコー社長兼務)。46年8月生まれ、関西大学経済学部卒。