物流不動産の社会的認知が高まってきた
プロロジス
代表取締役社長 山田 御酒 氏
2000年代初頭から日本で本格化した物流不動産ビジネス。3PLやECの事業拡大という追い風もあり、いまや物流業界において必要不可欠な産業に成長した。その立役者のひとりが草創期から業界を牽引し、いまも第一線で活躍するプロロジス社長の山田御酒氏だ。その山田氏に物流業界の現状や物流不動産の課題と将来、物流インフラを支える公的な役割のあり方などを聞いた。
(インタビュアー/西村旦・本紙編集長)
物流危機の課題――日本式の過剰サービスはやめるべき
――昨年来、トラックドライバー不足に起因した「物流危機」が顕在化しました。物流施設の開発事業者としてこうした状況をどのようにご覧になっていますか?
山田 当社はあくまで物流不動産の開発会社であり、当事者ではないという前提にはなりますが、カスタマーとの会話のなかで「このままではもたない」という声はかなり以前から出ていました。それがここに来て、国内景気の好調もあって一気に顕在化したというのが大まかな構図だと思います。直接的には、ヤマト運輸の問題提起が契機となって物流業界全体の問題として改めて浮上してきたわけですが、それ以前は物流事業者が内部努力で何とか凌いでいました。それがいよいよもたなくなって、〝危機〟や〝クライシス〟という表現で社会一般にまで一気に認識が広がったということだと思います。
ただ、こうした危機は、実はメーカーなど製造業の分野では以前からあったことです。それをメーカー各社は製造拠点を海外に移したり、製造ラインの機械化・自動化などで乗り越えてきたという歴史があります。それに対して、物流業界ではそのための努力をあまりしてこなかった…というか、大きな問題として捉え切れていなかったという面はあると思います。そうしたところに、予想よりも早くEC化の波が押し寄せ、さらには働き方改革などが複合的に絡んできてしまった…。その意味では起こるべくして起こった現象だとも考えています。
――物流業界の構造的課題が広く認識されたことについてどう評価していますか?
山田 よかったと思います。結果論ではありますが、本当にどうにもならなくなる前に社会全体で課題を共有できたことは評価できます。その点において、ヤマトさんのような知名度の高い会社が声をあげたことは大きな意味を持っています。ヤマトさんのDNAでしょうが、誤解を恐れずに問題提起されたことは勇気ある決断だと思っています。
――「物流危機」には単なる労働力不足だけではなく、様々な要因が複合的に絡んでいるとも思います。そうした課題を乗り越えていくには、どのような〝処方箋〟が必要でしょうか?
山田 課題のひとつとして、日本式の過剰サービスがあるのではないでしょうか。ECでも最近は注文したその日に届くようなサービスもありますが、それを望む人が果たしてどれだけいるのか、通常サービスの範囲内でそこまでやる必要があるのか――。もし当日配達を望むのであれば、エクストラなコストを支払えばいいわけで、実はサービスを供給する側も、される側もそこまでは望んでいないような気がします。「送料無料」という表現の是非も含めて、そこは改めて考えていく必要があると思います。
ただ、そうはいっても、労働力不足という抜き差しならない実態があり、生産年齢人口は今後も間違いなく減り続けていきます。いかに人手に頼らない物流システムを構築できるか――IoTやAIなどを活用しながら自動化や省人化を進めていかなければ、具体的な解決にはつながっていきません。
倉庫の無人化は「やろうと思えば、すぐにできる」
――その最先端技術ですが、将来的に技術革新が進んで労働力不足をカバーできるようになるまで、どのくらいの時間軸を見ておけばいいとお考えですか?
山田 プロロジスは全世界で事業を展開していますが、諸外国の事例を見るとかなりのスピードで最先端技術の導入が進んでいます。例えば、自動運転の走行実験も海外では本格的に進んでいますが、日本の場合は道路事情などもあり取り組みが遅れています。ただ、完全自動走行になるかを別にすれば、3~5年以内には実用化の段階まで入ってくると思います。高速道路のトラック隊列走行についても、技術的にはそう大きな課題もなく、かなり早い段階で実用化できるのではないでしょうか。ただ、技術的な面をクリアできても、事故が起きた場合の責任体制のあり方や道徳的な課題は残るでしょう。そこは少し時間がかかるかもしれませんが、ある意味で〝割り切り〟の問題でもあります。
――倉庫オペレーションの無人化についてはいかがでしょう?
山田 最近、スイスやドイツ、北欧のプロロジスの施設を見てきましたが、現実的に無人に近いオペレーションをしている倉庫もありました。ですから、答えは「やろうと思えばすぐにもできる」です。実際、技術レベルはそこまで到達しています。ただ、貨物の種類によってできることとできないことがあります。例えば、パレットなどモジュール化された貨物であれば日本でもすぐに無人に近いオペレーションが可能ですが、形状がばらばらな貨物をハンドリングすることはなかなか難しいと思います。
ちなみに、よく「完全無人化」という言い方がされますが、倉庫内に完全に人がいなくなるということはありません。というのも、仮にオペレーションが無人化されたとしても、システムの稼働状況を監視する人は必要です。ですから、作業員100人が必要だった倉庫の人員が20~30人のレベルまで下がるというのが、近い将来のイメージではないでしょうか。
――日本式の過剰サービスというお話が出ましたが、そこがオペレーションの省力化を難しくしている面もあります。
山田 小口多頻度多品種の物流形態など、日本特有の難しさがあります。先ほども言いましたが、標準サービスをもっと簡易にして、それ以上のサービスを望むのであればプラスのコストを支払うという方向にシフトしていく必要があります。消費者の啓蒙も含めて、そちらの方向に進まなければならないし、実際にそうした動きが出てきているように感じます。その先に、合意の折衷点としてのサービスレベルが自然と形成されることが望ましい。というのも、今後の物流の大きな前提として、EC化は間違いなく進むからです。
ECは間違いなく拡大する。その前に手を打つべき
――現在の日本のEC化率は約5%と言われています。
山田 そうです。そして近い将来、数年以内には間違いなく10%まで増えるでしょう。諸外国を見ると、どこの国でも直近5年間でEC化率は倍に伸びており、米国で8~9%、欧州で12%程度となっています。それもあって、最先端技術によるイノベーションや過剰サービスの見直しなどを、かなりのスピードで進めていく必要があります。いまでもパンクしかけているわけですから、早く手を打たないと本当に物流が止まってしまいます。
――EC化の流れが商流を変え、商流の変化は当然〝物流の形〟を変えていきます。日本のEC化率はどこまで高まると見ていますか?
山田 あくまで私見ですが、小売業全体の売上げのうち、2~3割がECにシフトしても何ら不思議ではありません。諸外国の事例を見ても、EC化率とスマートフォンの普及率には強い相関関係があります。欧州ではとくに英国のスマホ普及率が高くなっています。そしていま、それを超えようとしているのが中国です。中国は固定電話のインフラが整っていなかった分だけ、スマホの普及が一気に進んだ面があります。
物流不動産は確固たる産業カテゴリーに成長した
――「物流不動産」という業態、ジャンルはこの10数年で一定のポジションを占めるようになりました。草創期からこの業界を見てきたお立場として、現在の状況をどのように見ていらっしゃいますか?
山田 これは一貫して申し上げていることなのですが、プロロジスの世界本社がある米国では、不動産事業において古くから「インダストリアル」という確固たるセクターがあります。しかし、日本では、物流企業は自社投資で倉庫を建てて保有するというスタイルが中心で、倉庫を賃借するという発想があまりありませんでした。そこに2000年代初頭、プロロジスが新しいビジネスモデルを日本に持ち込んだわけです。当時はよく「日本では無理だ。通用しない」と言われてきましたが、私は「絶対そんなことはない」と言い続けてきました。それが10数年の時間を経て、ようやく認知されるようになってきました。いまでは、物流施設が必要になると、先ず良い賃貸物件がないかを探し、なければ自前で建てようという形で、発想の順番がまったく逆に変わりました。
また、物流不動産業界は、これまで当社をはじめとする外資系企業が中心でしたが、近年では日本の大手不動産デベロッパーや商社、さらには生命保険会社まで参入するようになり、不動産のセクターとしても住宅、オフィスビル、商業施設と並んで確固たるカテゴリーとして認知されるようになりました。私自身、日本でもそうした時代が来ることをずっと願ってきましたので、そのことは率直に嬉しく思っています。たぶん、我々のような外資系企業だけでは、ここまで認知は高まらなかったと思います。その意味では日本の錚々たる不動産デベロッパーや商社に参入していただけたことは、ライバルではあるものの歓迎すべきことだと思っています。
――先日、業界団体である不動産協会の中に、物流不動産を対象とした「物流事業委員会」が発足しました。これも不動産業界の中で認知が進んだ証だと言えますね。
山田 その通りだと思います。7月に第1回の委員会が開催され、私が委員長に就任しました。不動産協会は大手を中心に会員が構成されている非常にレベルの高い協会です。そこに物流不動産専門の委員会ができたことは、物流不動産が不動産業界の中で確たるポジションを占めるようになった結果だと思います。委員会は発足時、13社からスタートしましたが、順次、参加メンバーを増やしていきたいと考えています。
――物流事業委員会の具体的な活動内容とは?
山田 当面、3つの柱を考えています。まず第一に、しっかりとしたマーケットデータを収集・整理し、提供していくことです。現状でも一部の民間会社がデータを調査・提供していますが、各社とも条件がばらばらで、例えば「先進的物流施設」の定義も各社ごとに違っています。多くの事業者がREITに上場していることもあり、内外の投資家に公正かつ正確な情報を提供していくことは、非常に重要な任務だと考えています。
二つ目は、広い意味での社会貢献です。物流不動産が一定の認知を得たということは、同時に公的な存在としての社会的な責任も増すことを意味します。物流という社会インフラの一端を担うものとして、地域や社会に貢献していくことは当然のことだと思います。そこで、例えば地方自治体などと連携して、物流施設が地域の防災拠点としての役割を担っていくことを考えています。こうした活動はすでに個別事業者単位では行っていますが、一定の基準などを設けて業界単位として活動していくことが大事です。
そして三点目が、行政などへの政策提案・提言機能の強化です。昨年発生したアスクル倉庫火災の際にも、行政側としっかり連携して情報を共有していくことの重要性を痛感しました。また、行政側からも「どこを窓口にしていいか分からない」といった声もいただきました。今後は国や自治体などに対しても、委員会が窓口となって業界単位で提言や要望を伝えていきたいと考えています。
ファンドマネージャー的な業者とは考え方が明確に違う
――物流不動産が、物流業界においても欠くことのできないジャンルを形成したことは間違いありません。だだ、最近の動向を見ると、目先の施設開発だけが目的化しているような物件が散見されるようにも思います。そうした状況についてはどうご覧になっていますか?
山田 物流不動産といっても、細かく見れば色々な業態があります。例えば、日本の大手デベロッパーにとってみれば、物流不動産の事業ポーションはまだまだ小さいでしょうし、商社などもそうです。それに対し、当社のように物流不動産専業の会社もあります。一方、投資家の資金を使って、自分達のリスクはあまりとらずに開発を行うファンドマネージャー的な存在の業者もいます。
そうしたファンドマネージャー的な業者にとっての最大の目的は、とにかく利益を出して投資家の期待に応えることです。つまり、投資家から預かったお金の使い途は、必ずしも物流不動産である必要はないわけです。私はそうしたビジネスのやり方を否定するつもりはありません。ただ、我々とはビジネスに対する考え方が明確に違うということだけは断言しておきたい。プロロジスは米国で30年以上、日本でも約20年、物流不動産事業を続けてきており、いまこの瞬間だけ儲かればいいという発想はまったくありません。一般のあまりご存知ない方からすると、同じようなビジネスをやっているように見えるかもしれませんが、そこは違うとはっきり申し上げたいと思います。
参入が一気に増え、一時的に供給過剰になっている
――物流施設の現在の供給状況についてはどう考えていますか? エリアによっても事情は違いますが、一部で供給過剰感も指摘されています。
山田 中長期で見れば、物流施設の開発余地はまだまだあります。なぜならば、EC需要は今後も伸びていきますし、物流業務のアウトソーシングの流れはさらに高まるからです。3PL大手の事業拡大は続いていますし、今後も彼らに物流業務を委託していく需要は高まっていきます。そうした時に、旧来型の古いスペックの物流施設では商売できませんので、最新型の施設需要は安定的に続くと考えています。
ただ、今現在という切り口で見ると、一時的に施設が供給過剰になっている面は否定できません。先ほども申し上げたように、ここ数年で多様な事業者が一気に参入して施設開発を進めたことで、供給スペースが増えてしまった面は確かにあります。また、本当に物流の適地なのかと思うような立地で開発を進めているケースも散見されます。
これは不動産業界に限らずどんな業界でも同じですが、事業には波や周期があります。そういう意味では、いまはマーケットの状況はピークに近いところにあるのかも知れません。そうであるならば、マーケットはいずれ必ず後退局面に入ります。その時にすべての事業者が持ちこたえられるとは考えにくいでしょう。実際、リーマンショックの時にも撤退した事業者は少なからずありました。
――今後、後退局面に入ることは間違いない?
山田 タイミングや落ち方の幅は私にも分かりませんが、難しい局面に入っていくことは間違いないと思っています。どんな産業でも参入と淘汰が繰り返されるものですが、不動産事業は一般的に参入障壁が低いと言われています。ごく簡単に言ってしまえば、資金さえあればできるわけです。ただ、入るのは簡単ですが、出ていくのも早い…。つまりは事業を続けていくことが難しいのです。米国では30年以上続く不動産会社はほとんどいないというのが実情です。
――今度の物流施設需要をECと3PLが両輪となって牽引していくことは間違いないと思います。ただ、その一方で最近、メーカーなどの荷主企業が直接、物流施設を賃借する事例も増えているように思います。
山田 荷主企業がもっと主体的に物流に関与しようという意思が反映された動きだと思います。その背景には、物流を〝見える化〟するとともに、自分たちが〝選択権〟を持ちたいという考え方があります。具体的には、物流施設を荷主が直接借りて、倉庫内のオペレーションや配送業務をそれぞれ専業者に委託する――つまり機能ごとに委託先を切り分ける動きが一部で顕在化しています。そうすることで、各機能のコストが明確に見えるようになるというメリットがあります。3PLに一括で丸投げしてしまうと、良くも悪くも物流の中身がブラックボックス化してしまい、いざ委託先を替えようとしても自社の物流実態が把握できず、結局3PLに再委託せざるを得ないということがあるからです。
ただ、私見も含みますが、こうした動きは今後それほど増えないように思います。というのも、いざやってみても、専門のスタッフを置く必要があるなど、業務が煩雑になって手が回らないという状況に陥ってしまうからです。実際、そうした声をよく聞くことがあります。結局のところ、一括委託のメリットとデメリットをどう見るかということですが、今後は揺り戻しの動きも出てくるのではないでしょうか。
BTS型施設の開発に注力し、差別化を図る
――山田社長はかねてから、プロロジスの強みはビルド・トゥ・スーツ(BTS)型施設の開発が多いことだとおっしゃっています。その理由を改めて教えて下さい。
山田 先ほど不動産ビジネスは参入障壁が低いと言いましたが、要は資金さえあれば、物流施設を開発することはそれほど難しくありません。土地を用意し、設計事務所に図面をお願いすればそれなりの施設はすぐに建てることができます。あとは、仲介会社を通してカスタマーを確保さえすれば、仕事はそれなりにまわっていきます。ただし、これは汎用性の高いマルチテナント型施設に限った場合です。
これに対し、BTS型施設の開発はそう簡単にはできません。どのような立地に、どういう機能を持った専用施設が欲しいのか、お客様と1年、場合によっては2年以上の時間をかけてじっくり話し合います。図面を何度も引き直したり、非常に手間と時間のかかる作業を繰り返して最終的なスペックを決定するというプロセスを踏んでいきます。つまりBTS型施設の開発は、時間と労力に加えて、物流に対する専門知識や経験値がないとできない仕事なのです。加えて当社の場合、設計業務もインハウスで行うことができますので、情報が外部に漏れることはありません。物流に対する知見やノウハウを含めて、高い信頼を得ている所以だと自負しています。実際、マルチテナント型施設に関しては他社の施設を借りることはあるものの、BTS型施設についてはプロロジスにしか依頼しないというお客様も数多くいます。
――物流への〝思い〟が違うということでしょうか。
山田 物流施設にとって、デザインやレストランなど共用部分の充実や付加価値向上は大事な要素です。実際、施設内に託児所を開設したのも当社が最初ですし、そうした部分にも力を入れています。しかし、物流施設である以上、物流施設としての機能が優れていることが基本であり本質です。プロロジスはそこにこだわってきました。免震構造や太陽光発電、断熱性・耐久性に優れたサンドイッチパネルの採用などは当社が最初に始めたものですが、これは物流施設としての機能をどう高めていくかという本質的な部分における取り組みです。そうした点をおざなりにして、付随的な部分だけを前面に押し出しているのは、本末転倒だと言わざるを得ません。
それと、BTS型施設と1社借りのシングルテナントを混同して同じような使い方をされている向きもありますが、これはまったく別ものです。BTSは文字通り〝あなたのためにつくる〟ことであり、事前の話し合いや準備といった積み上げがあって初めてできるものです。カスタマーを募集した結果として1社借りになったというのとはまるで違うわけです。新規参入業者の中で、BTSにしっかり取り組んでいるところはそれほど多くありません。
――一部に供給過剰感も指摘されているなか、プロロジスとしてはBTS型施設の開発を積極的に手掛けていくことで差別化を図っていく。
山田 BTS型施設をしっかり開発していくことで、他社との差別化を図っていくことは戦略のひとつです。当社の開発実績を見ていただければ明らかですが、ここ数年、件数ベースではBTSの開発のほうが多くなっています。今年についても、6~7件手掛けるうちの4~5件はBTS型施設になっています。ただ、マルチテナント型のほうが1件あたりの規模が大きいので、金額ベースでは五分五分か、ややマルチの方が多くなってしまいます。
BTS型施設は、先ほど申し上げたように手間も時間も掛かりますが、その分契約期間も長く、ビジネスとしての足場は強いものがあります。欧米ではBTSが基本となっています。
入居企業の〝物流支援〟にも力を入れていく
――最近、物流施設としての機能性をより高めるための付加的な取り組みが各社で進んでいますが、プロロジスとしての方向性は?
山田 大きく2つのポイントがあります。まず一点目は物流施設開発会社としてできることですが、トラックバースの状況をタイムリーに把握・コントロールできる「スマートバースシステム」の導入を進めています。ドライバーの待機時間の短縮化が大きな社会課題となる中、バースの状況を〝見える化〟することで入居企業のスムーズな業務進行を支援していきます。すでに今年1月に稼働した「プロロジスパーク市川3」で導入しているほか、今年10月に稼働予定の「プロロジスパーク京田辺」でも導入していく計画です。
また、施設への来館者受付をスマートフォンで行える「入退館受付システム」も採用しています。当社の施設には毎日、カスタマー企業の従業員が数多く出入りしています。正社員だけでなく、パートやアルバイトの方も多く、毎日異なる人々が出入りしているケースもあります。そのため、入退館の管理が煩雑になり、混雑することも少なくありません。そこで予めスマートフォンのアプリで登録を行い、ダウンロードしたQRコードをエントランスのサイネージにかざすだけで受付可能なシステムを導入し始めました。それによって、管理業務の負担が軽減され、セキュリティの強化にもつながります。今後は新規施設を中心に導入を積極化していきます。
さらに、「プロロジスパーク千葉ニュータウン」「プロロジスパーク市川3」では芝刈りロボットも導入しています。敷地内の芝刈作業を自動で行うとともに、共用部の車路も掃除してくれるので、美観や安全性の向上につながるほか、管理コスト削減にも貢献します。また、施設屋根面に敷設された太陽光パネルの管理などは、これまで目視で行っていましたが、ドローンによるチェックを試験的に導入しています。効果が確認でき次第、本格的に運用していく考えです。
――施設の運営・管理面から入居企業へのサポートを強化していくということですね。もうひとつのポイントとは?
山田 入居企業の物流業務の運営、つまり〝本業〟の部分をいかにサポートしていけるかです。当社では例えば、アッカインターナショナルとの協業を通じて、荷主企業に対して無人搬送ロボットによる自動化を支援しています。また、お客様から「一緒に効率化を考えて欲しい」といった要望を数多く受けています。我々としてはさらにもう一歩も二歩も進んで、お客様の物流を支援したいと考えており、いまノウハウや知見を蓄えている段階です。ただ、お客様への支援を深めることによって、当然、色々な情報を知り得る立場にもなるので、そのあたりは慎重に取り組む必要があります。
――広い意味でのコンサルティング的な業務に対するニーズがある?
山田 こうしたことは、程度の差こそあれ物流不動産各社もおやりになっていますが、プロロジスには欧米での実績やノウハウがあります。とくにロボットなどの省人化・無人化技術については、海外での事例をフィードバックできることはアドバンテージです。将来的には、入居企業からの相談事を解決できるコンサルティング機能をインハウスで持ちたいと考えています。
山田御酒(やまだ・みき)
2002年プロロジス入社。プレジデント兼日本共同CEO、プレジデント兼CEOなどを経て、11年6月から代表取締役社長。同社入社以前はフジタに26年間勤務。営業本部営業統括部長などを歴任。1953年生まれ。山口県出身。早稲田大学商学部卒。