物流大手、スタートアップへの出資加速
物流大手によるスタートアップへの出資の動きが加速している。人手不足をはじめとする物流の制約要因が顕在化するなど、物流の構造変革が加速する中、事業の持続可能性の確保や新たな成長ドライバーを見つけるため、新技術やユニークなビジネスモデルを展開しているスタートアップに投資する事例がここにきて目立つ。CVCファンドを創設する物流会社も徐々に増えてきた。
タイミーに物流大手4社が出資
NIPPON EXPRESSホールディングスは先月末、〝スキマバイトサービス〟を運営するスタートアップ企業であるタイミーに出資した。今後、現場系の人材確保が難しくなることが予想される中、「働きたい時間」と「働いてほしい時間」をマッチングする機能を持ったタイミーとの連携を強めることで、物流現場を支える人材の安定的な確保に力を入れる。
NXHDは2023年1月にCVCファンド「NXグローバルイノベーション投資事業有限責任組合」を創設。これまでに倉庫シェアリングのsouco、インドのデジタルフォワーダーなどに出資しており、今回のタイミーで4社目となった。
タイミーには他にもAZ‐COM丸和ホールディングス、セイノーホールディングス、福山通運の大手3社が出資しており、同社のビジネスモデルへの期待感の高さがうかがえる。
CVCファンド通じて多彩な企業へ出資
セイノーHDはタイミー以外にも、運送マッチングプラットフォームを展開するハコベルを22年8月に子会社化したほか、今年1月にはラストワンマイル分野でソリューションを提供するウィルポートにも出資してグループ会社化した。また、23年7月には「Value Chain Innovation Fund」を創設してスタートアップなどへの投資も加速している。
なお、ハコベルは昨年10月に実施した第三者割当増資で福山通運、山九、日本ロジテムの3社が出資。物流業界の共通PF化に向け経済圏の拡大を進めている。
三菱倉庫も昨年4月にCVCファンドの運用子会社であるMLCベンチャーズを設立するとともに、同年6月に「MLCイノベーション1号投資事業有限責任組合」を創設した。今年に入って投資活動を本格化し、業務用ロボットのugo、ラストワンマイル物流サービスのBLUE BATON、リニア駆動型ロボット開発のCuebusの3社に相次いで出資した。
ヤマトホールディングスが20年4月に設立した「KURONEKO Innovation Fund」は、物流領域にとどまらない出資活動を展開している。すでに10社を超えるスタートアップやベンチャーに出資しているが、ファッションECを展開する60%、超小型衛星のパイオニアであるアクセルスペースホールデングス、空間コミュニティPFを展開するスタールポートなど多彩な顔ぶれが並ぶ。
JR貨物は自動運転トラックの運行会社に出資
JR貨物は今月、レベル4運転技術を活用した幹線輸送サービスの実現を目指すT2に出資した。貨物鉄道と自動運転トラックを連携させたモーダルコンビネーションを推進することで、安定的な輸送を実現していく。将来的に、鉄道が自然災害などで寸断された場合の代替輸送手段として自動運転トラックを利用することも検討していく。
T2は26年に東京~大阪間での自動運転トラックの運行開始を計画。すでに60億円を超える資金を調達しており、JR貨物以外にも三井倉庫ロジスティクスや大和物流が出資している。
(2024年2月29日号)