道路貨物運送、3割が価格転嫁できず=公取委
公正取引委員会は14日、転嫁円滑化施策施策パッケージに基づく法遵守状況の自主点検の結果を公表した。業種別で「道路貨物運送業」は、受注者の立場で取引先事業者(発注元)との取引価格でコストの上昇分の価格転嫁ができていない割合が3割にのぼる。価格の交渉の場で明示的に協議せず、従来どおりの取引価格に据え置いた割合も3割を超え、調査対象業種の中で最も多い。一方、発注者の立場でも価格転嫁の受け入れ割合が5割未満と最低で、受注者、発注者双方の立場で価格転嫁への対応が進んでいない状況が浮き彫りとなった。
発注者で「おおむね転嫁受け入れ」は5割未満
公取委および中小企業庁は、転嫁円滑化施策パッケージに基づく取り組みとして、法違反が多く認められる業種について、事業所管省庁と連名により、関係事業者団体に対して、傘下企業による法遵守状況の自主点検の実施を要請。自主点検の結果等について、「法遵守状況の自主点検結果報告書」として取りまとめた。
発注者の立場でコストの上昇分の価格転嫁を受け入れているか聞いたところ、道路貨物運送業では「おおむね転嫁を受け入れている」が48・4%と5割未満で19業種中最も低かった。「一部転嫁を受け入れている」は34・3%、「ほとんど転嫁を受け入れていない」は17・3%だった。
受注者の立場では、「おおむね転嫁できている」は20・5%と2割にとどまった。「一部転嫁できている」は47・5%、「ほとんど転嫁できていない」は32・0%と3割を超える。価格転嫁について「明示的に協議することなく、従来どおりの取引価格で据え置いたことがある」割合は32・8%で、一方、価格転嫁を拒否した割合も15・2%あった。
5割で法令遵守の管理体制を構築せず
毎年9月と3月の価格交渉促進月間のタイミングで、発注先からの価格交渉・価格転嫁の要請に積極的に応じているかについては、27・1%が「いいえ」と回答。「買いたたき」「減額」「支払遅延」に関する法令遵守の管理体制では、「構築していない」が50・6%と5割を超え、対象業種中最多となるなど意識の低さもみられた。
大企業と中小企業がともに成長できる持続可能な関係を目指す「パートナーシップ構築宣言」に関しては、宣言済みは9・8%で1割に満たない。「宣言していないが、検討中」は42・4%あった。「宣言しておらず、宣言することも検討していない」は15・3%、「そもそも知らなかった」が32・5%だった。
こうした結果を踏まえ、所管する国土交通省は、一般貨物自動車運送業、集配利用運送業について「発注者、受注者のいずれにおいても価格転嫁を受け入れていない、またはできていない事業者が一定数あったことから、引き続き、こうした取引適正化に向けた取り組みを継続する」としている。
(2022年12月22日号)