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【レポート】物流DXで注目の「倉庫シェアリング」

2022.11.24

荷主など倉庫のユーザーと空き倉庫をマッチングして保管スペースの有効活用につなげる「倉庫シェアリング」が広がりを見せている。新たなマッチングプラットフォーム(PF)が次々と登場。「総合物流施策大綱」に基づき、物流DXの加速に取り組む国土交通省も、倉庫分野での物流効率化に向け、倉庫シェアリングの普及に前向きの姿勢を示す。有力PFは機能を拡張し、存在感が高まる一方で、普及には様々な課題が残る。

配送手配の支援や求貨求車など機能を拡張

倉庫シェアリングが台頭した背景には、新型コロナウイルス感染拡大による巣ごもり需要の増加と、それに伴うEC市場の拡大による荷量の増加がある。マッチングPFなどを活用した倉庫シェアリングにより、荷主は荷物の一時的な保管先を確保でき、倉庫事業者は倉庫の遊休スペースを有効活用できるなどのメリットがあり、こうした潜在需要の掘り起こしを狙ったサービスが生まれている。

マッチングPFのパイオニアであるsouco(本社・東京都千代田区、中原久根人代表取締役)では全国1500超の倉庫から、荷主のニーズに合った倉庫をマッチング。荷主が荷物の情報を登録すると、soucoが条件に見合った倉庫を検索し、荷主と倉庫を結ぶ。「段ボール」「パレット」「カゴ台車」などユニットロード化された荷物の保管が可能で、冷凍冷蔵にも対応。全国一律の従量課金制で、荷主は申込みから最短3日で倉庫を利用できる。昨年7月にはトランコムと資本業務契約を締結。同社の求貨求車サービスのパートナー企業約1万3000社の車両情報をもとに、荷主の配送車両の手配を支援することで、保管と配送をワンストップで提供する。

三菱商事が今年1月に新設した子会社のGaussy(本社・東京都港区、中村遼太郎社長)は、倉庫シェアリングサービス「WareX」を展開している。「WareX」は寄託案件に特化した倉庫マッチングプラットフォームで、荷主は希望の条件に合った倉庫を選び、案件ごとに「WareX」と契約。荷主は倉庫の検索から見積もり、契約をオンラインで完結できるほか、保管した荷物の入出荷もオンラインで一元管理できる。なお、Gaussyにはプロロジスや三井不動産といった物流不動産デベロッパーなど7社が出資したことも注目を集めた。

〝当事者主体〟のマッチングを展開するのは押入れ産業(本社・東京都港区、森田浩史社長)。同社が提供する「ロジセレクト」は、荷主は掲載された情報から条件に合った倉庫を選ぶと、物流会社との直接取引・契約ができる。賃貸と寄託の両方に対応しており、仲介手数料・事務手数料は無料で、掲載料は1年目が無料と低めに設定されている。サービス開始当初は押入れ産業の加盟企業の情報のみを掲載していたが、現在は非加盟企業も掲載が可能。今年7月にはサービスの機能拡張として求貨求車の機能を持つ掲示板「運送版コミュニティサイト」を追加した。

「危険物」や「小規模」スペースのマッチングも

危険物物流最大手のNRS(旧・日陸、本社・東京都千代田区、戸木眞吾社長)が今年1月から提供している「AnyWareHouse」は、専門性の高い危険物倉庫のマッチングに特化したサービス。危険物を保管する場合、消防法など各種規制に適合した倉庫を用意する必要があり、マッチングは危険物の知識を有した担当者が行わなければならず、一般倉庫と比べてハードルが高い。同PFでは荷主とNRSの協力会社の危険物倉庫をマッチング。NRSが元請けとなって協力会社の倉庫へ再寄託する仕組みとなっている。

シェアリングエコノミーが消費者に広く浸透する中で、倉庫の小口ユーザーをターゲットにした新たなサービスも登場している。約5坪からの利用を可能にした東京倉庫(本社・東京都品川区、磯部尚志社長)の「クラフィット」や約3坪から利用できる月島倉庫(本社・東京都中央区、北川真理子社長)の「ちょ庫っと」は、倉庫とトランクルームの中間のスペースを小口ユーザーがシェアするという広義のシェアリングサービスだ。

物流不動産も倉庫シェアリングに注目。IHI(本社・東京都江東区、井出博社長)と野村不動産(本社・東京都新宿区、松尾大作社長)は、国内では初めてとなる物流施設内での立体型自動倉庫のシェアリングを提案。横浜市金沢区で開発する「Landport横浜杉田(仮称)」では、施設内に最大5000パレットが保管可能な立体型自動倉庫を設置。入居企業が荷量の変動に応じてシェアできる倉庫スペースを提供する。

荷主と倉庫、両方が安心できる仕組みが必要

倉庫シェアリングは様々な課題も残しており、荷主・倉庫が利用に踏み出せない理由になっている。PFによっては対象となる荷物の種類に制限が設けられていたり、PF提供側が〝元請〟的な立場となり、荷主と直接のやり取りができず、PF側が提供する入出庫サービスを使う必要があるなど、一部サービスの使い勝手も利用のハードルになっているケースもある。

荷主が自社の荷物を預けるには倉庫に対する信頼が重要な要素だが、PFによっては倉庫の登録が「匿名」になっているケースもあり、保管や荷役の品質面で、荷物を預けることに不安を覚える場合もあるようだ。また、倉庫側にとっても、再寄託において、元請けの責任がある以上、普段から取り引きし、信用できる倉庫以外には荷物を預けづらい。また、取り扱いの難しい荷物は再寄託にあたり荷主の承認を得る必要があるなど、シェアリングになじみにくいとの見方もある。

物流DX促進のためには、倉庫を探す荷主と空き倉庫のマッチングのデジタル化による効率化は欠かせない。荷主側と倉庫側が安心して倉庫シェアリングを行えるための仕組みづくりが求められるとともに、ECやケース貨物など比較的標準化されている貨物を対象に、シェアリングを広げていくことが普及のカギになりそうだ。
(2022年11月24日号)


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