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【トラックドライバー】全ト協が過労死等事故防止計画策定へ

2017.08.03

全日本トラック協会(坂本克己会長)では、トラックドライバーの過労死や健康起因事故防止対策を強化する。昨年10月に公表された厚生労働省の「過労死等防止対策白書」で道路貨物運送業が過労死の最も多い業種と指摘され、4月に専門のワーキンググループを発足。来年2月をメドに、「過労死等防止計画」を策定する。また、近年トラックの健康起因事故が増加傾向にあることを踏まえ、ハイリスク者の可視化など予防対策支援にも乗り出す。

過労死、道路貨物運送業が最多

厚労省が6月30日に発表した2016年度の「過労死等の労災補償状況」によると、脳・心臓疾患に関する事案では業種別(中分類)で道路貨物運送業は請求件数145件(前年度比12件増)、支給決定件数89件(7件増)でいずれも最多となった。また、事業用貨物自動車が第1当事者となる死亡事故件数は年々減少傾向にある一方で、04年以降、脳血管疾患、心血管疾患などの健康起因事故報告件数は増えている。

健康起因事故は「運転者の疾病により事業用自動車の運転を継続できなくなったもの」として事故後30日以内に国土交通省に「自動車事故報告書」の提出が義務付けられており、交通事故を伴わず休憩中に体調不良で運転を中止したケースも対象。15年5月には「自動車事故報告書等の取扱要領」の一部改正にかかる自動車局長通達が出され「脳疾患、心臓疾患および意識喪失」に起因すると思われる事故が速報の対象となった。

健康起因事故の運転者数が最も多いのはバス、ハイヤー・タクシー、トラックの順だが死亡運転者数でみるとハイヤー・タクシーに次いでトラックの順(バスは死亡事故なし)。病名別にみるとトラックでは9割が脳・心臓・血管疾患が死因となっている。全ト協では運送事業者と運行管理者が実施すべき健康管理のポイントを示した「トラック運送事業者のための健康起因事故防止マニュアル」の改訂版を今年3月に公表した。

血圧計配布、ハイリスク者可視化も

4月には、トラック業界で計画的かつ実効的な過労死防止対策に取り組むため、労働安全・衛生委員会に「過労死等防止計画策定ワーキンググループ」を発足。長時間労働対策、健康管理対策、過重労働対策等を行動計画として策定し、道路貨物運送事業における過労死等の実態や過労死事例、労災認定要件、防止対策実施に向けた論点整理・因果関係、過労死等の防止対策立案とともに報告書にまとめる。

防止計画策定に先立ち、陸上貨物運送事業労働災害防止協会(陸災防)、労働者健康安全機構とともに「過労死等防止・健康起因事故防止セミナー」を全国47都道府県で開催。また、高血圧が脳・心臓疾患となっていることから、乗務前点呼時の血圧測定を業界で普及させるため、血圧計54台(全国47都道府県トラック協会、北海道7地区)を配布し、事業者に貸し出す取り組みもスタートした。

さらに、健康起因事故につながりやすいハイリスク者の可視化とシステムに基づく予防対策推進をサポートするため、トラック事業者に特化した「運輸ヘルスケアナビシステム」の構築に着手。定期健康診断の結果を基に“事後措置”の徹底を支援するのが狙いで、今年度は10月31日まで40社・約2000人の参加を募り、システムのトライアル(実証実験)を実施する。

(2017年8月3日号)


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