【寄稿】対ロシア制裁措置へのご協力を 財務省関税局業務課長 小多章裕
2月24日以降のロシアによるウクライナ領土における軍事行動は、武力の行使を禁止する国際法に明らかに違反する侵略であるとともに、力による一方的な現状変更を認めないという第二次世界大戦後の国際秩序の根幹を揺るがすものです。そして何より、ウクライナでは現に人々が家を失い、戦火から逃げまどい、そして命を落としています。このようなロシアの非人道的な行動は、決して許されるものではありません。一刻も早くロシア軍をウクライナ領から撤退させ、これ以上の被害者が生まれることを防がなければなりません。
こうしたロシアの暴挙に対し、自由主義社会は団結して制裁を課す姿勢を示しています。我が国も当然その一翼を担い、プーチン大統領以下のロシア要人の資産凍結等の金融制裁を行うとともに、輸出入に関して次のような制裁措置を打ち出しています。まず、2月26日(閣議了解、以下同じ)にロシア向けの国際輸出管理レジーム対象品目(大量破壊兵器の開発等に用いられるおそれが高い特定の品目をいいます)の輸出とウクライナ東部の親ロシア派が現に支配する地域(ドネツク州およびルハンスク州の一部)との間の輸出入を禁止することとし、次いで3月1日にはロシアの軍事関連団体に対する輸出の禁止とともに、ロシアの軍事能力の強化に資する可能性のある半導体等の汎用品の輸出を禁止する方針を決定。さらに、8日には石油精製関連品目のロシア向け輸出も禁止することとしました。また、3日と8日には、上記の対ロシア制裁と同様の措置(石油精製関連品目の輸出禁止措置を除く)を、ロシアを支援するとされる隣国ベラルーシに対しても講じることを発表しています。
政府としてのこれらの方針に従い、財務省関税局・税関においては、経済産業省をはじめとする関係機関と緊密な連携を図りながら、これまで以上に厳正な通関審査・検査を実施し、対ロシア制裁の実効性の確保を図ってまいります。
事業者の皆さまにも、こうした我が国および志を同じくする国々が実施する各種の措置へのご協力をお願いいたします。事業者の中にはロシアとの間でビジネスを行っておられ、経済制裁の応酬の中で大変厳しい状況に置かれている事業者もおありのことでしょう。ロシアとビジネスを営む事業者がすべからく今回の侵略に加担しているということにはなりませんが、対ロシア制裁を効果的なものとするためには法令に従って必要な規制を課すことはやむを得ません。また、直接ロシアとの取引がない事業者の貨物であっても、従前より通関に時間がかかるといった形でご不便をおかけする可能性もあります。しかし、どうかご理解いただきたい。戦後の我が国がここまで経済発展を遂げたのも、皆さまが安心してビジネスを行ってこられたのも、そしてこれから成長していくことができるのも、自由と民主主義、そして何より平和があるからだということを想起し、ご理解いただければと思います。
今回のロシアによるウクライナ侵略は、遠いヨーロッパでのスラブ民族の内輪揉めではありません。私たちが当然だと思ってきた自由で開かれた国際経済システムが失われることにつながりかねない出来事、我が事として認識し、ご対応いただけることを期待します。
ロシアに対する制裁措置を実効性あるものとし、自由世界を守り、平和を回復するために、ご理解とご協力を是非ともお願い申し上げます。
(2022年3月17日号)