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フィジカルインターネットへロードマップ提示=経産省/国交省

2022.02.15

経済産業省と国土交通省は9日「フィジカルインターネット実現会議」の第5回会合を開催し、次世代の物流システムとされるフィジカルインターネット(PI)を、2040年までに実現するロードマップ案を提示。PIを通じて物流の抱える様々な課題の解決を図る。また、PIが目指すべき価値として「効率性:世界で最も効率的な物流」「強靭性:止まらない物流」「良質な雇用の確保:成長産業としての物流」「ユニバーサル・サービス化:社会インフラとしての物流」の4つを掲げた。今回の議論を踏まえ、3月4日に開催する第6回会合でロードマップを正式に策定する。

PIで〝運べなくなる危機〟に対応

ロードマップでは現在は物流サービスを受けるコストが上昇基調にある「物流コストインフレ」期にあると規定。トラックドライバー不足に加え、24年4月からの時間外労働上限規制の適用による輸送供給力の低下、カーボンニュートラルの要請などにより「貨物が運べなくなる」危機を指摘。物流を支えるドライバーなどの賃金上昇を図りつつ物流生産性の向上により物流供給力を増加させることが重要だとした。

PIによる課題解決では、①輸送機器(自動化・機械化)②物流拠点(自動化・機械化)③サプライチェーンの垂直統合(BtoBtoCのSCM)④水平連携(標準化・シェアリング)⑤物流・商流データプラットフォーム(PF)⑥ガバナンス――の6つのテーマに焦点を絞った。

輸送機器の自動化・機械化では、高速道路でのトラックの自動運転や自動配送ロボット、ドローンによる物流サービスを実現するほか、物流や商流のデータを活用することでトラック運送の積載率を向上し、ドライバーの長時間労働を削減する。

物流拠点の自動化・機械化では、AIやIoTなど先端技術を活用することで物流施設の可視化を進め、省力化・自動化の加速により物流施設の装置産業化を図る。

サプライチェーンの垂直統合では、ユニットロードシステムの確立や従来の商慣習を見直すことでサプライチェーンの高度化・合理化を推進。現在のサプライチェーンが30年代ごろになると消費者情報や需要予測を取り込んだ全体の最適化を図る「デマンドウェブ」へと発展すると予想し、環境変化に対応した物流システムを構築する。

企業・業種を超え、機能やデータをシェアリング

標準化やシェアリングによる水平連携では、ユニットロードなどハード面とEDIの仕様などソフト面で標準化を推進。現在の総合物流施策大綱(21年度~25年度)の次のステージとなる26~30年度には、企業や業種を横断する物流機能とデータのシェアリングを普及させる。データ連携の在り方は物流EDI標準を基礎とし、内閣府「SIPスマート物流サービス」プロジェクトの物流標準ガイドラインの提示する業務プロセスやコード体系を活用する。

物流・商流データPFでは26年度以降には業界ごとに本格的運用が始まることを想定。業界別のPF間の調整を自動・自律的に行うAI自動交渉技術を活用し、生産・出荷・販売に加え、決済や保険など金流や気象情報、交通情報なども広範に取り込んだ業種横断型PFを構築する。

ガバナンスでは、26年度以降は物流・商流PFの公平性・開放性をどのように確保するかが課題となると想定。計画的な物流の調整や、PFを利用する場合の荷主が支払う費用や物流事業者の利益などのシェアリングに関するルール形成が必要となる。また、イノベーションが起きた場合、有効に社会実装するための規制改革も検討していく。

ロードマップ案に対しては一部の委員から、物流コストインフレの強調がドライバーの賃金上昇を妨げることないよう留意すべきとの指摘もあった。
(2022年2月15日号)


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