荷動きは年末に向けて順調に推移=日通総研・短観
日通総合研究所(本社・東京都港区、永井裕社長)は10月29日、9月に実施した「企業物流短期動向調査」(日通総研短観)の結果概要を公表した。それによると、国内向け出荷量の動向を示す荷動き指数は4~6月実績はプラス16となり前期(1~3月)よりも32pt上昇した。続く7~9月実績はプラス6となり前期4~6月よりも10pt低下したものの、10~12月の見通しは4pt上昇のプラス10にまで高まる見込み。多くの荷主が当面の荷動きは順調に推移するとみているようだ。
業種別では7~9月実績は鉄鋼・非鉄、化学・プラスチック、パルプ・紙、一般機械、電気機械、窯業・土石、金属製品など9業種がプラス。10~12月見通しは鉄鋼・非鉄、一般機械、その他の製造業、化学・プラスチック、窯業・土石、パルプ・紙など11業種がプラスとなると想定し、荷動きの回復がみられる業種が増えていた。
同日開催のオンライン説明会に出席した佐藤信洋プリンシパルコンサルタントは7~9月の荷動き指数が前期よりも落ち込んだ要因として、製造業の1割を占める輸送用機械(自動車など)が半導体不足の影響を受け、減産したことを指摘した。輸送用機械の荷動きの推移をみると4~6月実績はプラス34と高い水準だったが、生産の停滞が顕著となった7~9月実績はマイナス17と一挙に51pt低下した。続く10~12月の見通しはマイナスから脱したもののプラス1にとどまり、10月以降の荷動きは回復か低調が続くのかを見極めがつかない様子がうかがえる。
輸送用機械以外の業種ではマイナスとなった繊維・衣服、木材・家具、生産財卸やゼロ水準の精密機械を除いたすべての業種は10~12月見通しの出荷量はプラスとなった。佐藤氏は「荷動きの回復が全業種に広がってきている」と指摘した。
荷動きの持ち直しで輸送需要は増加
「一般トラック、特積みトラック、宅配便、鉄道コンテナ、内航コンテナ・RORO船、国内航空」の6モード別の輸送機関別利用動向を見ると、7~9月実績と10~12月見通しのいずれにおいても、一般トラック、特積みトラック、宅配便は指数がプラスとなり自動車運送の利用動向の高さが目立った。一方、国内航空、鉄道コンテナ、内航コンテナ・RORO船は指数がマイナスとなった。鉄道コンテナがマイナスとなったのは西日本での大雨により山陽線が不通になったことが影響。国内航空はコロナ禍による旅客減便に伴う貨物輸送の供給不足が要因となったようだ。
指数の増減の推移をみると7~9月実績は4~6月実績に対し、いずれも低下していたが、10~12月見通しは6モードのうち国内航空を除いた5モードで動向指数は7~9月よりも上昇する傾向がみられ、荷動きの持ち直しに伴って輸送需要が増加していることがうかがえる。
トラック運賃の上昇は続いていく
「一般トラック、特積みトラック、鉄道コンテナ、内航コンテナ・RORO船、国内航空、倉庫保管量」の6機関の運賃・料金の動向をみると7~9月実績では5機関で低下がみられたが、10~12月見通しでは総じて上昇が見込まれた。佐藤氏は「燃料価格が高騰していることが運賃・料金の上昇につながっている。特にトラックは燃油費の上昇だけでなく人件費をはじめとする諸経費も増加するなど下がる要素は見当たらない。当面は運賃の上昇基調が続くだろう」と予測を述べた。
(2021年11月4日号)