貨物輸送量は5年ぶり増加=日通総研/貨物輸送の見通し
日通総研(本社・東京都港区、永井裕社長)は2日、オンライン会見を開き、「2021年度の経済と貨物輸送の見通し」の3月調査改訂版を発表した。21年度の国内貨物総輸送量は前年度比3・5%増の43億6800万tと予想した。会見に出席した佐藤信洋プリンシパルコンサルタントは「貨物輸送量がプラスとなるのは5年ぶりのこと。ただ、前年度は6・3%減と落ち込みが大きかったため反動増もあり、19年度の45億430万tと比べると3%減となり、コロナ以前の水準まで戻し切れていない」とした。
消費関連貨物は対前年1割超のプラスが見込まれるが19年度の水準よりも約1割下回る見通し。生産関連貨物は7・6%の伸びとなるが前年の1割強のマイナスの反動もあり19年度の水準には至らない。大規模な公共工事などがない建設関連貨物は5・3%の減少と予測した。予測の背景として佐藤氏は「21年度の国内の実質国内総生産は前年度比3・8%増と20年度の4・6%減からプラスに転換すると見込んだが、前年の大幅な落ち込みの反動から個人消費、設備投資、輸出は増加するが、やや力強さに欠ける動きであり、国内民需の戻りは鈍い」と説明した。
トラックは営業用、特積みともプラスに好転
輸送モード別の輸送量をみると21年度のJRコンテナは前年度の反動増や積み合わせ貨物輸送の専用列車新設の効果もあり、20年度の9・3%減から3・5%増と上向くものの19年度の水準までには戻らない。車扱は太宗貨物の石油の需要回復を受け前年の7・2%減から2・5%増とプラスに反転。17年度以来4年ぶりの増加の見込み。
営業用トラックは20年度の6・5%減の反動もあり21年度は5・5%増と2年ぶりのプラス。個人消費、設備投資、鉱工業生産の回復に伴い、消費関連と生産関連が堅調に推移する。特積みトラックは20年度の0・5%減から3・3%増とプラスに反転。個人消費や設備投資の増加や好調な宅配便ニーズが輸送量を押し上げる。一方、自家用トラックは20年度が4・7%減、21年度は1・6%減と低調に推移する。
内航海運は20年度の10・5%減に対し21年度は生産の持ち直しを受け6・2%増と反転。石油製品、鉄鋼、原油など生産関連は約8%増、建設関連は3%増の見込み。
国内航空はコロナ禍の影響で20年度は44・9%減と大幅な減少。その反動もあり21年度は31・2%増と大幅増と見込む。
国際航空の輸出は3年ぶりのプラス
国際航空貨物の輸送量では、輸出は20年度の1・8%減から21年度は19・4%増と3年ぶりのプラス。太平洋線(TC1)と欧州線(TC2)は前年大幅減の反動増と海運からのシフト継続により、2割台の増加。アジア線(TC3)は足元のコロナ感染再拡大においても概ね堅調に推移して2年連続のプラスの見通し。品目では半導体関連貨物(電子部品・製造装置)は増加基調が継続。自動車部品は、EV(電気自動車)シフト・電装化関連需要の高まりにより堅調に推移。一般機械・機械部品も海外の設備投資需要の回復から増勢が拡大する見込み。貨物量は18年度の前回好況期の9割超の水準となる予想。一方、21年度の輸入は20年度の7・0%減から一転9・8%増に反転し4年ぶりのプラスとなる見通し。輸送量は19年度の水準を若干ながら上回ると予測した。
外貿コンテナ貨物の輸出は20年度の10・1%減から21年度は9・8%増へと3年ぶりにプラス転換。足元の空コンテナ不足や船腹不足については22年1~3月には正常化すると予想した。輸入も20年度の3・7%減に対し21年度は4・2%増と3年ぶりにプラスを回復する。
荷動き指数が大幅に改善しプラス回復
製造・卸の荷主2500事業所を調査対象とした国内向け出荷量「荷動き指数」の速報値も発表。21年4~6月実績は前期(21年1~3月)実績の「マイナス16」から32pt上昇の「プラス16」と大幅に改善した。20年の4~6月の「マイナス65」を底として右肩上がりに回復が続いており、19年1~3月以降は水面下の推移が続いていたが、2年半ぶりにプラス水準となった。佐藤氏は「7~9月の見通しはプラス15としているが直近の荷動きを見ると上昇基調が続いており、上振れる気配もある」と指摘した。
業種別に見ると4~6月実績は15業種のうち11業種がプラス、1業種がゼロ水準、3業種がマイナスの見込みで、プラスが1業種、ゼロ水準が1業種だった1~3月と比べて顕著な改善を示した。7~9月は13業種のうち8業種がプラス、1業種がゼロ水準、4業種がマイナスの見込み。
(2021年7月8日号)