JBMIA、事務機器業界の共同配送を推進
リコーやキヤノンなど事務機器業界で共同配送の取り組みが加速している。業界団体であるビジネス機械・情報システム産業協会(JBMIA、池田隆之会長)が検討を進めているもので、これまで会員各社と連携し、ラストワンマイル領域における共同化の実現に向けて協議を重ねてきた。今後は、地方などの過疎地を中心に実証実験を行い、年内の本格普及を目指す。
物流波動、低積載配送が課題に
複合機やプリンターなどの事務機器は期末や月末に加え、10時と13時の時間帯に納品が集中するなど物流波動が大きいことが特徴。とくに首都圏では、繁忙期におけるトラックの確保が困難な状態にあるという。また、各社の競争激化により、受注日当日出荷などが常態化しているほか、地方や閑散期における配送車両の積載率は低く、機器1台だけ荷台に載せて走らせるなど非効率な納品体制が輸送コストを圧迫している。
そのため、JBMIAは会員各社が抱える物流課題の解決に向けて、2018年12月にワーキンググループを組成。効率的・安定的な納品体制の確立を目的に、納品基準の標準化と物流波動の平準化を目指すとともに、トラックドライバーの働き方改革や人手不足から起因する“運べないリスク”への対応、CO2排出量の削減を図る。
20年4月には特設委員会として「動脈物流準備委員会」を発足し、今年4月には事務機器業界の諸問題を解決する組織のひとつとして「動脈物流委員会」に体制を変更した。コニカミノルタやセイコーエプソン、京セラドキュメントソリューションなど大手メーカー9社に加え、各社の販社6社が参画し、「動脈物流共同化活動」を推進している。
JBMIA常務理事の橋爪弘事務局長は、「メーカー各社は共通の課題を抱えている。これまでは、物流面で『競争』していたが、今後は物流を共に創っていく『共創』領域と捉え、持続可能な社会への貢献と“運べないリスク”などの社会課題を共同配送で解決していく」と強調する。
各社の配送拠点を集約、トラック台数を約3割削減
「動脈物流共同化活動」の第1弾として、まずは過疎地域におけるラストワンマイル領域で協業する。現在、各社はメーカー倉庫から各地域の最終配送拠点に商品を運び、納品先に届けているが、共同配送では各社の最終配送拠点を1ヵ所に集約し、そこで商品を下ろした後、共通のトラックで納品する。機器の取り付けや設定作業は各社の作業員が担当する。これにより、トラック台数を約3割削減できると見込んでいる。
現在は、日本の北側を中心に共同配送を実施するエリアを会員企業らと検討している段階。まずは実証実験を行い、年内をメドに共同配送の実用化を目指す。取り組みの第2弾では、物流拠点間における幹線輸送の共同化も視野に入れる。
JBMIAの中川裕担当部長は共同配送について、「実現するためには、各社が極端な納品日指定や時間帯指定を控えることが重要で、そうすることで効率はますます向上する。納品基準を業界で標準化するため、各社が議論しながら、作っていくことが必要になる」と説明する。
交換機器累計台数は160万台を突破
JBMIAは1998年7月に「静脈物流プロジェクト委員会(現在は静脈物流委員会)」を設立し、使用済みの機器を回収する静脈物流の連携も積極的に推進している。機器の入れ替え時に発生する回収物流の運用効率化に加え、会員企業のリユース・リサイクルの促進とCO2排出量の削減を目的としたもので、パナソニックやデュプロなど複合機・デジタル印刷機の大手メーカー12社が参画している。
得意先への機器入れ替えにおける他社製品の回収では、委員会参画企業共同の回収デポ(計34ヵ所)に各社の製品を納めた後、各地域のデポ機能を集約した交換センター(計7ヵ所)へ共同輸送する。その後、メーカーごとに製品を仕分け・一時保管し、各社が保管された自社製品を引き取り、リサイクル拠点まで輸送するスキームとなっている。19年3月までの実績では、これまで累計約167万台の複合機を交換した。
また、輸送効率の低いエリアにおいて、小ロット・小口化製品を1台のトラックで回収し、積載効率の最大化と環境負荷低減を図る静脈分野での共同輸送にも取り組んでいる。
橋爪氏は「静脈物流の活動を約20年間継続しており、持続可能な社会づくりに貢献している。動脈物流も各社が連携することで実現できる。現在の参画企業は15社だが、他の数社とも活動内容について協議している。賛同いただける企業からいつでもオープンに参加していただきたい」と語る。
(2021年7月8日号)