21年度の国内貨物輸送量は1・7%増=日通総研/貨物輸送の見通し
日通総合研究所(本社・東京都港区、青山陽一社長)は12月25日、会見を開き、「2020・2021年度の経済と貨物輸送の見通し」を発表した。国内貨物総輸送量については、20年度は感染症の影響による生産活動の停滞により7・0%減と大幅に落ち込む見通しで、これはリーマンショック後の09年度における6・0%減をさらに下回る減少となる。一方、21年度の国内貨物輸送量は景気の持ち直しを受け、プラスに反転するものの増勢は1・7%増にとどまると見込んだ。
国内貨物の輸送ニーズ回復は2年程度必要?
21年度の世界経済成長率は5・2%増と予測し、日本経済成長率は3・5%増と前年度に対しプラス転換となるも、力強さを欠く動きになると見込んだ。Web会議で会見した佐藤信洋プリンシパルコンサルタントは「国内輸送需要の本格的回復には2年程度の期間を要する可能性がある」との認識を示した。21年度は前年の反動増や、個人消費、設備投資や輸出において増加が期待されることもあり、成長率は3・5%増、国内貨物総輸送量は4年ぶりにプラスへ反転すると予測。「ただ、前年の落ち込み幅があまりにも大きかったため1・7%の増加にとどまる」と補足した。
内訳をみると、消費関連貨物では、経済活動の抑制などを受け、20年度は5・8%減の12億5980万tと予測。21年度は反動増の影響もあり、日用品、食料工業品、農水産品などは前年度水準を上回り、全体では3・3%増の13億100万tとなり「コロナ禍前の19年の13億3690万tに近づくまでは至らない」(佐藤氏)。
生産関連貨物では、20年度は15億7340万t、9・4%減と大きな減少をみせたが、21年度は鉱工業生産が回復し、自動車関連などを中心に輸送量は16億3600万tと総じて増加。ただ、国内外の設備投資マインドは盛り上がらないこともあり、全体では4・0%増にとどまる見込み。
建設関連貨物では、20年度は15億960万t(5・4%減)、21年度は14億7940万t(2・0%減)の見通し。住宅投資や新設住宅着工戸数は20年度に大幅に減少していたが、21年度は小幅の増加にとどまり、輸送量の押し上げにつながらなかった。
21年度の営業用トラックは2年ぶりの増加
輸送モード別の輸送量は、鉄道ではJRが20年度の6・8%減から21年度は4・3%増とプラスに回復。内訳をみるとJRコンテナでは20年度が7・3%減、21年度は反動増とともに積み合わせ貨物輸送の専用列車新設などを受け、5・6%増の見込み。JR車扱では20年度は石油需要の大幅減により5・6%減、21年度は石油の需要回復を受けて1・2%増とプラスに転換。
営業用トラックは、20年度はコロナ禍の影響により7・0%減。21年度は個人消費、設備投資、鉱工業生産の前年度からの回復がみられ、消費関連貨物、生産関連貨物が堅調に推移する一方、建設関連貨物は低調に推移し、全体では2・5%増と2年ぶりに増加。
特積みトラックの輸送量に関しては、20年度は2・9%減と低迷するものの、21年度は個人消費や設備投資の増加などを受け、トータルでは2・5%増と17年度以来のプラスに回復する。宅配便は引き続き好調で、日用品、農水産品、食料工業品なども堅調に推移。家電など機械機器や機械部品も持ち直す見通し。
内航海運は20年度の10・2%減から、21年度は石油製品、鉄鋼、化学工業品などが堅調に推移し、3・9%増と8年ぶりに増加。今後はRORO船など大型船による輸送量が増加する見通し。
国内航空は20年度に33・3%減と大きく落ち込んだこともあり、21年度は反動増により27・2%増と8年ぶりに増加する見込み。
半導体堅調を受け国際航空輸出は2ケタ回復
国際貨物輸送をみると、外貿コンテナは世界経済の回復と前年度の反動増もあり輸出は19年度の10・9%減から21年度は6・5%増へ、輸入は20年度の3・6%減から21年度は2・5%増へとプラスに反転すると見込んだ。
国際航空貨物では、全体の輸出は20年度が11・4%減となるも、21年度は欧州・米州向けの反動増や、半導体関連(電子部品・製造装置)がAI、IoT、5Gの普及本格化により堅調に推移。自動車部品ではEVシフトや電装化関連の需要増加に引き上げられ増勢が拡大することで12・8%増と2ケタのプラスに回復する。一方、輸入は国内需要の回復の遅さはあるものの、消費財の回復やコロナワクチンなど医薬品・医療関連の緊急輸入増が期待されることから20年度の9・4%減から21年度は3・4%増と4年ぶりのプラスとなる見通し。
荷動きは徐々に回復するも依然として水面下
荷主企業の2500事業所を調査対象とした荷動き指数(速報値)も発表された。20年10~12月の実績値は「マイナス42」となった。4~6月に「マイナス65」と底を打ってからは7~9月の「マイナス59」を経て上昇基調が続いている。10~12月の予測値「マイナス53」に対しても11pt高い数値となった。年が明けての21年1~3月の予測値は「マイナス36」で、今後も荷動き回復が徐々に進んでいくと予想される。一方、業種別にみれば全業種の荷動き指数は依然として2ケタ台のマイナスを示しており、19年度レベルまでの回復には、しばらくの時間を要するとうかがえる。
(21年1月12日号)