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客貨混載に続き人材活用で連携=ヤマト運輸/アルピコ交通

2020.12.10

先月9日から、長野県松本市の安曇地域(奈川、上高地、乗鞍、白骨)における客貨混載事業をスタートさせたヤマト運輸(本社・東京都中央区、栗栖利蔵社長)と、アルピコ交通(本社・長野県松本市、三澤洋一社長)。両社ではさらなる協業として、同月27日よりアルピコ交通のバス乗務員がヤマト運輸の宅急便業務においても活躍できる取り組みを開始した。バス運転手4人がヤマト運輸へ出向し、研修の上で宅急便の集配業務に当たるとともに、バスガイド3人も今月1日から同社へ出向して、受付事務を担当。繁忙期の異なる異業種2社が、人材活用でも連携を図る。

アルピコ交通は長野県を本拠に路線バスや鉄道事業を展開する会社で、客貨混載事業においては、ヤマト運輸が安曇地域へ配達する宅急便をアルピコ交通の路線バスのトランクルームに積み込んで運んでいる。ヤマト運輸としてはこれまで毎日2時間かけて往復していた宅急便センター間の移送が解消でき、アルピコ交通はバスの空きスペースを有効に活用することで、地域住民の減少から課題となっていた路線維持への新たな収益確保につながった。地域住民に対しても宅急便サービスの向上とバス路線の維持という両面から貢献できる施策となっている。

両社がこの客貨混載事業の検討をスタートしたのは今年9月。コロナ下ではあったものの、トランクルームを使用することでバスの改造などが必要なかったこともあって、取り組み開始まで順調に調整が進み、上高地の閉山を前にした11月中のスタートにこぎつけた。そうした客貨混載の準備と合わせて検討を続けてきたのが、両社間における人材の有効活用だ。

アルピコ交通では上高地をはじめとする観光地へ向かう旅行客などを乗せる路線バスを多数運行しているが、最盛期を迎える夏場に対し、冬場には上高地が閉山することから車と乗務員に余剰が生じていた。以前は冬季にスキーバスも運行していたが、スキー客の低迷から最近では便数も減少。さらに今年は新型コロナの影響からインバウンドも少なく、厳しい状況が続いていた。

他方、ヤマト運輸は、新型コロナを受けた通販荷物の増加で、全社的に見ても宅急便取扱数が前年比1割増で推移しているところに、冬季は長野県特産のリンゴの出荷が始まる上、年末には歳暮発送による最繁忙期を迎える。同社が進めるデータドリブン経営の効果もあって、宅急便の現場における物量増への対応力は従来より増しているものの、年末に向けて運転技術を持ったバスドライバーの力を得られる効果は大きい。

アルピコ交通の三澤社長は「アルピコグループは2009年に物流子会社である松本運送をハマキョウグループへ事業譲渡し、自社内に物流機能を持たない中、ヤマトグループさんと今回協力関係を築けたことで、より多様な協業がしたいと考えていた」と話す。さらに、「当社のバス乗務員は豊富な運転技術を備えており、その技術を活用した仕事ができないかと思っていた。将来的には当社で貨物自動車運送事業の免許を取得して輸送業務を受託するといった、様々な方法を検討していきたい」と展望する。
(2020年12月10日号)


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