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中小零細トラック事業者に“6月危機”?

2020.05.26

新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛、休業要請、サプライチェーンの混乱が続く中、中小零細のトラック運送事業者の資金繰りが限界に達する“6月危機”説が浮上している。政府の緊急事態宣言が発令された4月以降、荷動きの急激な悪化により運収が下がっており、中小零細トラック運送事業者の手元資金はおおよそ3ヵ月分程度と推定されるため、6月には資金がショートする企業が出てくるという観測が出ている。

4月以降、案件が一斉にストップ

トラック運送事業者の経営環境がいよいよ厳しくなっている。全日本トラック協会が今月公表した1~3月期の景況感は、新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動低迷を受け、輸送量、営業収入、営業利益、経常損益がいずれも大幅に悪化。今後の見通しでは、景況感は▲81・7から▲125・2へさらに悪化すると見込んでいる。

顕著なのが輸送量の減少だ。1~3月の判断指数は一般貨物で▲63・1で4月以降さらに減少を予測。また、トラック運送事業者に対するアンケート調査結果(4月23~30日)では、2月の時点で「運送収入の減少」との回答は44・5%だったのが、4月は81・7%と大半の事業者が減収となっており、とくに国際海上コンテナ、ガソリン・軽油、鉄鋼・鋼材、自動車などで影響が大きい。
「4月以降、通販など一部を除き、物流の案件が一斉に止まってしまった」と首都圏の中堅運送会社の幹部は話す。緊急事態宣言以降、工場の操業休止や荷主のテレワークにより商談がストップしている影響で、「配車担当者には協力会社から『何か仕事はないか』という電話が毎日かかってきている状況だ」という。

荷動き低迷を背景に運賃軟化の傾向も顕著になってきた。求荷求車情報ネットワーク(WebKIT)の4月の求車登録件数は前年同月比66・3%減少。昨年9月以降、運賃指数は前年同期を下回って推移している。「スポット輸送が主体で、往復の荷物を持っていないトラック運送事業者はより厳しい環境になる」との声も聞こえる。

中小の3割超が3ヵ月以内に決済不安

東京商工リサーチが行った「新型コロナウイルスに関するアンケート調査」によると、外出自粛や時短営業が浸透した4月は、全業種で83・7%の企業が前年同期比で減収となった。運輸業ではすでに影響が出ている企業は79・15%にのぼり、企業規模別だと大企業の81・09%が中小企業の78・74%を若干上回っている。

現在の状況が続いた場合、何ヵ月後の決済(仕入れ、給与などの支払い)に不安を感じるかを聞いたところ、運輸業では、「7~12ヵ月以内」と回答している企業が大企業で33・33%あったのに対し、中小企業では「2ヵ月以内」の15・11%、「3ヵ月以内」の19・11%を合わせて35%程度で、資金繰りのひっ迫感がより強い。

全ト協がまとめた経営分析(2018年度決算版)によると、貨物運送事業の営業利益率はマイナス0・1%で、20両以下では営業赤字を計上している。貨物運送事業における営業損益段階における黒字事業者の割合は54%で、車両10台以下では50%が営業赤字となっているなど、事業規模が小さいほどその経営基盤がぜい弱だ。

4月以降、輸送量の減少が顕著になり、軽油価格が下がって燃料費負担は軽減されているものの、「3ヵ月後の6月は手元資金がショートする中小運送会社が出るのでは」という見方もされている。中小のみならず、元請けの大手・中堅運送会社も自社の仕事を維持・継続するために、仕事が激減している傭車先の経営状況に目配りしなければならず、“6月危機”への不安が広がりつつある。
(2020年5月26日号)


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