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鈴与ら4社が清水港に大規模輸出入拠点を開設

2020.02.04

静岡市を拠点に物流事業を展開する、鈴与(鈴木健一郎社長)、アオキトランス(遠藤修社長)、天野回漕店(山田英夫社長)、清和海運(宮崎祐一社長)は1月29日、清水港で最大の物流施設となる「新興津国際物流センター」を竣工した。同センターは、外航船が発着する新興津コンテナターミナルのゲートから100mに位置する好立地にありながら、施設規模は7・4万㎡に上る“大規模輸出入拠点”。東京オリンピック・パラリンピックの開催を控え、京浜港の混雑が大きな物流課題となる中、4社では新たなロジスティクスセンターの開設で清水港への貨物誘致を加速させる考えだ。

ゲートから100m、スムーズな搬出入が可能

新興津国際物流センター(写真)は敷地面積6万1000㎡、延床面積7万4000㎡の鉄骨造2階建て。用地は静岡県から4社が共同で取得。その持分比率に応じて、鈴与が施設全体の5分の2に当たる2万9600㎡、アオキトランスと天野回漕店、清和海運が各1万4800㎡を利用する。各社スペースとも1、2階が含まれる。

各階は天井高6mを確保し、ランプウェーで2階部分にもコンテナを積載したトラックが直接乗り入れできる。駐車場は施設全体で250台分を用意して、待機場も大型トレーラ8台分を確保した。倉庫は両面バースで、北側バースを低床、南側バースを高床とし12台のドックレベラーを設置。フォークリフトによるパレット荷役で作業の省人化と作業者の業務負荷軽減につなげる。

場所は新興津コンテナターミナルのゲートから至近である上、東名・新東名高速道路の清水JCTにも近接。清水JCTは、今年全線開通予定にある中部横断自動車道にも接続しており、山梨、長野方面へのアクセス性にも優れるなど、全国多方面への輸送に優位性を持つロケーションとなっている。

東南海地震をはじめとした災害対応も強化しており、4・0mの盛り土を施した敷地に立地するとともに、内閣府中央防災会議で示されたレベル2津波高(平均6m)に1階床面でさらに2・5mの余裕高を確保する。2階へのスロープに加えて、施設周囲には非常階段も設け、津波発生時にはドライバーが2階部分に直接避難できるようにした。停電時には非常用発電機によるオペレーションが可能。最長28mの杭336本を地中の堅固な岩盤まで打ち込むことで耐震性も高めた。

省エネ性能は全館LED照明を導入するほか、断熱性能のある屋根や外壁材を採用し、BELS最高ランクの5STARを取得している。

鈴与では輸入品の全国発送拠点として提案

4社の中で最も広いスペースとなる鈴与では、東西102m×南北110mの1、2階部分を利用し、とくに2階部分では輸入貨物の一時保管や流通加工業務を荷主企業に提案する。たとえば、輸入したアパレル製品の検針や消費財のギフト加工、食品の国内向けパッケージ変更などでの活用が見込まれるという。さらに、同センターで貨物をコンテナからトラックに積み替えれば、長距離ドレージ車両の確保も不要となる。
庫内は現在4割ほど埋まっている状況にあるが、各主要港で輸入していた業務を清水港へ集約し、新興津国際物流センターから全国へ発送する輸入食品の物流業務などもすでに決まっており、外車メーカーのオートパーツ輸入と全国発送などにも「優位性を発揮できる」と鈴与の森下一哉常務は話す。

施設内にはWi-Fiを完備し、スマートフォンやタブレットを活用したシステム化・ペーパーレス化による庫内作業を予定。流通加工業務に伴う作業者の安定確保と働く環境改善のため、休憩室にはスマホ充電用のコンセントを豊富に用意するとともに一人用のカウンター席を多数設置。富士山を臨む大きな窓も設けた。

京浜港の混雑を受け、「首都圏から近く」「欧米航路を持ち」「コンテナターミナルのターンタイムが13分」を強みとする清水港への関心は高まりつつある。一方で、東京オリンピック・パラリンピック閉幕以降の定着が同港利用促進のカギとなっており、新センターで流通加工業務も受託できれば、清水港の持続的かつ安定的な利用にもつなげられる。
同日開かれた竣工式の挨拶で鈴与の鈴木社長は「新物流センターは清水港の競争力を拡大する物流施設として大きな財産となり、輸出入貨物の作業や保管、通関などの利便性がさらに大きく向上する。新物流センターを最大限に活用し、清水港への貨物誘致を加速させ、清水港と静岡県のさらなる発展に貢献したい」と新施設開設への期待を込めた。
(2020年2月4日号)


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