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【ズームアップ】鉄道コンテナ輸送拡大へ=トレーディア

2020.01.16

トレーディア(本社・神戸市中央区、古郡勝英社長)は、輸出入貨物の配送の一部を陸送から鉄道にシフトする。主要港でのドレージ車両のひっ迫や東京オリンピック・パラリンピックに伴う物流制約に対応するため、国際複合一貫輸送における国内の輸送手段のひとつに鉄道を加えた。鉄道を利用することで定時性が確保され、着日指定の遵守など顧客サービスの向上につながる。今後も鉄道コンテナ輸送サービスを拡大し、日本全国の顧客ニーズに合わせた最適な輸送モードを提案していく考えだ。

輸送手段を複線化、ドレージ確保を容易に

国際複合一貫輸送において近年、大きなボトルネックとなっているのが国内ドレージ。コンテナターミナルで荷揚げされた国際海上コンテナを顧客の工場や倉庫に届ける、いわば“ラストワンマイル”だ。慢性的なドライバー不足とコンテナヤードの混雑に起因する回転率悪化が重なり、車両の確保が難しくなっている。

荷主から委託を受けて輸出入貨物の国内配送を手配する海貨業者の多くは、繁忙期に限らずドレージの手配に追われて業務の負荷が増大。他方、荷主目線で見ると「ドレージが確保できないため、荷物がいつ届くか分からない」ということもあって、在庫を余分に持たなければならないなどの弊害が出始めている。

こうした中で、トレーディアが国内輸送の新たなモードとして注目したのが鉄道だ。国際海上コンテナの国内輸送は大部分をドレージに頼っているのが現状。輸送手段を複線化し、一部を鉄道にシフトすることによって安定的な輸送を実現するとともに、荷量を平準化することでドレージ負荷を減らし、車両を確保しやすくする期待もある。

鉄道コンテナ輸送で「働き方改革」促進

12月5日付で貨物利用運送事業の第二種(鉄道)の許可を取得。第1弾として、阪神港を起点に、自社施設で国際海上コンテナから最適な鉄道コンテナに積み替え、鉄道を利用して首都圏近郊、日本海側の顧客に配送するサービスを提供。主要港に自社施設を配備しているトレーディアの強みも活かされる。

とくに効果を実感しやすいのが冬季の北陸向けの輸送。日本海側の港は風速20mで安全確保のため荷役を中止する。北陸に立地する工場は最寄港を使っていることも多いが、降雪対応や最近問題となっている「釜山港(韓国)トランジットの遅延」を考慮し、「阪神港揚げ→鉄道輸送」という選択肢を持っていることがリスクヘッジになるという。

増田裕人取締役常務執行役員営業戦略本部長は「ドレージがひっ迫している状況で、お客様からの『この日に届けてほしい』という要望に確実に応えるには、運行頻度が高く、定時性を持った鉄道輸送が有効。着時間を計算できるため余分な在庫を持たずに済み、お客様側の作業員のローテーションも効率化できる」と指摘する。

鉄道コンテナ輸送のメリットとして「働き方改革」も挙げる。国際海上コンテナは後方にしか扉がないため後方荷役のみ。バラ積みだと荷物の出し入れに長時間を要する。両側開きの鉄道コンテナを使えば荷役時間は大幅に短縮され、顧客にも喜ばれているという。地球環境対策に力を入れる顧客からも鉄道の利用は好評だ。

トレーディアが鉄道コンテナ輸送の第2弾として計画しているのが、中国から直接JR貨物の鉄道コンテナで輸入し、そのまま鉄道で運ぶSea&Railサービスのスキームだ。日本に到着後に、積み替えを行わないことでトータルコストを低減でき、すべての輸送工程でドレージを使わないで済む。

現在、下関駅を含む関門地域および九州北部の貨物ターミナル駅を拠点駅とする認可を申請中で、取得後は、上海の太倉港~下関港を高速フェリーで輸送し、鉄道輸送に接続するサービスを本格化させる。太倉港から首都圏近郊までを最短で中1~2日で届けることができ、五輪期間中の東京港の利用抑制への対応としても期待できるという。
(2020年1月16日号)


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