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荷動きは10月以降悪化へ=日通総研短観

2019.11.05

日通総合研究所(本社・東京都港区、青山陽一社長)は10月30日、2019年度9月調査による企業物流短期動向調査(日通総研短観)を発表した。国内向け出荷量の動向では7~9月の実績が「マイナス14」となり、4~6月実績の「マイナス15」より1pt改善していたが、10~12月の見通しは「マイナス19」となり4pt悪化した。同調査は2500社を対象に、7~9月の実績と10~12月の見通しを9月初旬時点で調査したもので859社から回答を得た(回答率34・4%)。

生産関連の荷動き悪化が顕著に

本社で会見を開いた佐藤信洋プリンシパルコンサルタントは「この6年間の荷動き指数をみると15年1~3月実績と16年4~6月実績がともに『マイナス14』、今年4~6月実績が『マイナス15』を示し、そのあたりの数値がほぼ最低だった。今回調査の10~12月見通しは『マイナス19』と大きく下回った。多くの荷主が今後の荷動き悪化を懸念していることが明らかだ」と強調。その上で「日本経済の景気悪化により国内輸送量は伸長が期待できず、一方で世界経済でも米中貿易摩擦に伴う中国経済の伸び悩みや、米国、欧州、アジアの各エリアで成長鈍化が顕著となっており、先行きは明るくない」と説明し、「当面は国内・国際ともに荷動きの回復は難しい局面だ」と予測した。

業種別の荷動き指数をみると7~9月実績は全15業種のうち11業種がマイナスとなり、10~12月見通しは12業種がマイナスとなった。指数の推移を見ると7~9月実績は8業種で上昇したものの、10~12月見通しは11業種で低下した。特に金属製品は「マイナス8」、一般機械は「マイナス12」、輸送用機械は「マイナス13」、生産財卸は「マイナス15」と2ケタの下降が目立ち、夏から秋にかけて生産関連を中心に荷動きの悪化が目立った。10~12月見通しは食料品・飲料(プラス2)、木材・家具(プラス17)、消費財卸(0水準)を除いた全品目がマイナスとなり、佐藤氏は「品目別の推移でみても荷動きはかなり悪い状況だ」と説明した。

全ての輸送モードで利用動向が悪化

輸送機関の利用動向も活気が見られない。7~9月実績と10~12月見通しの双方で全機関がマイナス。7~9月実績から10~12月見通しへの推移でも6機関全ての指数が低下した。佐藤氏は「特に一般トラックがマイナス11からマイナス15へ、特積みトラックがマイナス10からマイナス16になるなど悪化が目立っている」と指摘。国内輸送量の多くを占めるトラックの利用動向悪化が荷動きの悪さを裏付けた格好だ。

荷動き悪化でもトラック運賃はまだ上がる

また、運賃・料金の動向指数を見ると、7~9月実績と10~12月見通しの両方で6機関(一般トラック、特積みトラック、鉄道コンテナ、内航コンテナ・RORO船、国内航空、倉庫保管料)全てがプラスとなった。国内航空以外のモードは2ケタのプラス水準で推移しており、運賃・料金は総じて高どまりの傾向にあることがうかがえる。指数の推移を見ると、7~9月実績は内航コンテナ・RORO船が1pt上昇し、ほか5機関は低下。10~12月見通しは一般トラック、倉庫保管料が上昇し、特積みトラック、内航コンテナ・RORO船、国内航空が横ばい、鉄道コンテナが低下した。

一般トラックは7~9月実績「34」から10~12月見通し「39」と5pt上昇、特積みトラックは7~9月実績と10~12月見通しはどちらも「33」と横ばいになった。どちらのトラックも他のモードよりも高い「30」以上の水準で推移している。「これまでだと荷動きが悪くなれば相対的にトラック運賃は下がるものだったが、今はますます深刻化が懸念されるドライバー不足が背景となり、トラック運賃はまだまだ上がると見込まれる」(佐藤氏)。

他の輸送機関の7~9月実績と10~12月見通しの指数をみると鉄道コンテナが実績「18」と見通し「16」、内航コンテナ・RORO船が実績、見通しともに「10」、国内航空が実績、見通しともに「5」、倉庫保管料が実績「19」と見通し「20」だった。

物流コスト割合は上昇続く

売上高に対する物流コスト割合の動向では、7~9月実績は「プラス32」で4~6月実績より4pt低下したが10~12月見通しは「プラス34」と2pt上昇した。7月以降、荷動きが悪化している一方で物流コスト割合には下降せず、荷主の多くがコスト上昇を見込んでいることが分かった。
(2019年11月5日号)


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