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「ホワイト経営認証」、目標と実態に乖離か?

2019.10.29

トラックドライバーの働きやすさを求職者や荷主に見える化する「運転者職場環境良好度認証制度」――。長時間労働の是正や働き方改革の視点に立った「ホワイト経営認証」の通称で議論が開始され、2019年度中に募集を開始し、20年度からの認証開始を目指している。しかし、厚生労働省の18年の監督結果によるとトラックの労働基準関係法令違反は8割を超え、ホワイト経営で業界全体の5割以上の認証取得を目指す国交省の目標とは乖離もみられる。一方で、過去3年以内に労基関係の法令違反で送検されても不起訴処分や無罪となれば“セーフ”で要件をクリアできるなど、認証基準についてはややグレーな面も見られる。

6割強が取得に前向き、Gマーク取得率を超える?

「ホワイト経営認証」は運転者の労働条件や労働環境に関して評価・認証を行い、主に求職者への情報提供を行うための制度として設計。法令遵守、労働時間・休日、心身の健康、安心・安定、多様な人材の確保・育成、自主性・先進性など約80の認証項目を設け、認証グレードは「一つ星」から「三つ星」まで3段階設定する。

労働時間に関する法令の遵守、運転・拘束時間の管理、離職率、年次有給休暇の付与、健康や疲労状況の把握、福利厚生制度や女性運転者の有無、賃金など多面的に働きやすさの度合いを測り、初年度は「一つ星」から認証をスタート。「一つ星」は全事業者の上位50%、「二つ星」は上位25%、「一つ星」は12%が取得できるようにする。

昨年国交省が行ったアンケートによると、トラックでは認証制度が開始された場合、「申請する」(28%)、「申請を検討する」(36%)を合わせて6割強が申請に前向きな意向を示している。また、5年程度の制度運営により、トラックの申請件数は7150件(全事業者の11・5%)と推計している。

トラックに関する認証制度としては、運行の安全性を評価・認証する「安全性優良事業者制度(Gマーク制度)」、環境への取り組みを認証する「グリーン経営認証制度」がある。いずれも03年の創設で、19年3月末現在の取得率はGマークで全事業所の29・5%、グリーン経営認証で全事業者の4・6%となっている。

「ホワイト経営認証」については全事業者の5割で「一つ星」の認証取得を想定。つまり、制度創設から16年が経過したGマークの約3割を上回る取得率を見込む。しかし、厚労省の18年の監督の結果、労基関係法令違反は83・6%。8割が労基関連法に違反していることから、「ホワイト経営認証」の5割の取得は難しいとの見方もある。

ただ、「ホワイト経営認証」の認証項目を見ると、労基関係法の遵守に関しては、過去3年間に違反が「公表事案でない」または「送検されても不起訴処分または無罪になっている」ことがポイントで、「違反がない」かどうかという判断はややグレーだ。18年のトラックの送検は42件であることからすると、取得のハードルはぐっと下がることになる。

トラック事業者の認証制度が新たに加わることになるが、既存のGマークやグリーン経営認証とも認知度の向上が課題となっている。全日本トラック協会がSAで行ったWeb調査によるとGマークの趣旨を知っていたのは全体で46・1%、一般の人では29・9%とまだ5割に達していない。求職者への訴求を目的とした「ホワイト経営認証」をいかに浸透させるかも注目される。
(2019年10月29日号)


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