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【物流効率化】目指すは“人ゼロ”の現場、進む最新ロジ研究=日立物流

2017.06.29

日立物流(本社・東京都江東区)では、昨年7月に中谷康夫社長の肝いりで研究開発拠点「R&Dセンタ」を開設してから丸1年が経過した。倉庫内作業を対象とした次世代型技術の研究を進め、日立製作所が開発した無人搬送車「Racrew(ラックル)」に続く新たな導入事例も出始めている。日立物流が目指すのは「究極の自動化」すなわち「“人ゼロ”の現場」。庫内作業の効率化のみならず、人手不足進展後も持続可能な物流センター体制を構築することが目的だ。

「世の中にない技術」の実験場としてのR&Dセンタ

R&Dセンタは東京都内にある同社物流センターの一角に開設された。延床面積は約4300平米。研究対象となった技術は同所で様々な実証実験を行い、実用化の確証が得られた後、実際の現場へ試験導入されることになる。従来は稼働中の物流センターや日立製作所の研究所を活用していたが、実業務に支障なく十分なスペースを用いた実験ができるよう専用の施設を設けた。

現在の主要研究は、(1)無人フォークリフト、(2)デパレタイズロボット、(3)Racrew、(4)双腕型ピースピッキングロボット、(5)RFIDリーダ、(6)画像検品システム――の6テーマ。日立製作所をはじめとするマテハン・機器メーカーと日立物流が「実用化前の技術」を共同で検証、改良、開発する。

最も注目しているのが、パレットの荷役、搬送、棚入れ・棚出しを全自動で行う「無人フォークリフト」技術だ。日立製作所と共同で実証実験を実施。今年4月から、埼玉県内の医薬品を扱う物流センターで1台、今月からは茨城県内の建設機械のパーツを扱う物流センターでも2台が導入されたほか、来年2月稼働の「関西第2メディカル物流センター」(兵庫県三田市)でも採用が予定されている。

高度な技術が求められるのが「デパレタイズロボット」で、ロボットメーカーとの共同研究によってこちらも18年度には実働予定にある。マスタでの事前登録無く、最新の画像認識技術で混載パレットからケースを取り出し、コンベヤへ投入することが可能。「日本初の技術」という。

Racrewは大規模運用実験に着手

日立製作所と共同実用化した「Racrew」は2年程前から「首都圏東物流センター」(千葉県野田市)で実装され25台が稼動しているが、今年5月からは「土浦2期物流センター」(茨城県かすみがうら市)にも30台を導入し、稼働中。その上で、現在は前述の「首都圏東物流センター」での運用台数を70~80台規模へ引き上げるべく、大規模運用の実験を行っている。同時にピッキングステーションの表示器も、より作業効率を高める仕様の研究を続けている。

「双腕型ピースピッキングロボット」は16年から日立製作所と研究を開始し、18年度内の実用化を目指す。真空吸着式のアーム2本で、ラックに格納されたケースからピースをピッキングする。まずはRacrewと連動した仕組み作りを進めるが、自動倉庫など多様なマテハンとの連携も研究していく。ピッキングは最も人手が掛かる庫内作業のひとつで大きな導入効果が期待されるが、現時点では時間当たりの作業処理能力ではまだ人間には及んでいない。但し、“連続稼働可能”というロボットの特徴も踏まえると、総稼働時間当たりの処理能力では同程度の運用が見込まれ、今後のさらなる処理速度向上により効果の拡大が期待できる。

「RFIDリーダ」では、アパレル業界などで活用が本格化しつつあるRFIDの実装を想定し、入出庫時などの一括読み取りが可能なゲートタイプの検証を実施する。「画像検品システム」では、ハンディーターミナルなどで行われているバーコード検品作業をカメラで一括読み込みし、検品することで作業時間を大幅に短縮する技術。17年度下期には実働予定にある。

まずは人とロボットの共存で「働きやすい倉庫」へ

R&Dセンタの研究対象は物流センターの入荷から出荷。自動化の工程として次に着目するのは「梱包装置」で、現在は機器選定の段階にある。また、トラックの積卸し作業については「最も難しい技術」と指摘するが、「まだ手積み手卸しは残っており人への負荷が大きい作業でもある。解決に向けて研究していきたい」とロジスティクスソリューション開発本部スマートロジスティクス推進部の田村和広・副技師長は話す。合わせて、Racrewや無人フォークリフトといった実用化済み技術を様々なパターンに落とし込むことも重要なミッションだ。

これらの開発技術は単独での販売は想定しておらず、あくまで日立物流が提案するスマートロジスティクスの一環。共同開発を行うパートナーは常時募集している。「“人ゼロ”の現場」は一足飛びで実現する世界ではないが、物流センターで人手不足が急務の課題となる中、肉体への負荷が大きい業務をロボットに任せることは「作業者が働きやすい倉庫環境作りに貢献し、人材確保にも繋がる」と田村氏は展望する。

(2017年6月29日号)


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