メニュー

東京五輪へ物流対策の検討が本格化

2019.07.16

2020年東京オリンピック・パラリンピック大会(東京2020大会)まであと1年――。大会開催期間中の交通混雑緩和に向けたトライアルとして交通需要マネジメント(TDM)やテレワーク、時差ビズなどの取り組みを一体的に進める「スムーズビズ推進期間」が22日からスタートし、24、26日には大会期間中を想定した大規模な交通規制が行われる。荷主企業では1年後を見据えた物流対策の検討が本格化。東京2020大会をきっかけに発着荷主や物流会社との連携による物流オペレーションの見直しの機運が広まり、持続可能な物流の実現のレガシーとなる期待がもたれている。

「中1日配送」や検品の簡素化を実施

東京2020大会に向けた物流対策案として、味の素では首都圏を中心とする大会マップに物流拠点と納品先をマッピング。最重点地区(TDM重点地区、首都高内側、会場半径5㎞以内)では早朝・夜間配送を行い、検品の簡素化による速やかな納品、直送から倉庫出しにシフトする。重点地区(外環道内側)では定曜日配送と検品の簡素化により納品作業を効率化。圏央道内側では混雑する午前を避け、午後納品を行う。また、全国でリードタイムを「中1日配送」とし、またパレット化により車両の確保と運転手の負荷を軽減。輸出入は東京港から横浜港や近隣港にシフトする。

キユーピーは交通規制・混雑する条件を特定し、混雑を避けた配送の工夫を行う。「翌々日納品」によりドライバー不足に対応するとともに、配送車両を効率化。中1日を利用することで臨機応変な調整をしやすくする。また、検品レスにより荷役作業の省力化とドライバーの負荷軽減、車両混雑の緩和を図り、納品時間を短縮。荷下ろしを効率化し、早く戻れる体制とする。効率的な物流の実現に向け、事前の注文や制約のある配送を啓発していく。

東京港以外へのシフト、夜間のシャトル輸送も

大会期間中に出荷の最盛期を迎えるのがビール業界。アサヒビールは東京2020大会期間中に物の移動を3割以上の分散・削減を目指す。東京港で受け入れしている麦芽など原材料の一部やワインといった輸入商品の大部分の受入時期を前倒しするとともに、輸入商品の受入港を東京港以外に変更。また、東京港から茨城工場へ搬入している原材料、茨城と神奈川の工場から都内配送センターへの転送および該当エリア内の得意先への配送をピーク時間帯以外に変更する。

コンビニは大会期間中も商品の店舗への供給が欠かせない。セブン‐イレブン・ジャパンでは、開催期間中が年間最大の繁忙期にあたり、共配センターとのプロジェクトをキックオフ。課題・影響店舗を抽出し、実施項目を立案後、20年3月にかけて特別コースの作成、修正を行う。今後ラグビーワールドカップなどのイベント対応でPDCAサイクルの精度を高め、本番では休日並みの交通量の実現を目指す。

クボタの子会社であるケービーエスクボタ(KBSクボタ)では、現在、東京港と内陸デポ間で夜間のシャトル輸送を実施中。コンテナラウンドユースを最大限実施し、極力コンテナを実入りにし、回送を減らす取り組みを東京港でさらに進めていく。昼間の時間帯は基本的には東京港エリア内でのピストン輸送とし、東京港エリア外の日中の都内輸送量を少なくし、スムーズな交通環境を目指す。

都では「スムーズビズ推進期間」のうち22~8月2日を第一の集中取り組み期間、22~26日をチャレンジウィーク、24日をコア日、8月19~30日を第二の集中取り組み期間と設定。納品を前倒しし、事前に在庫を多く持つことや幹線輸送の夜間シフト、生産・保管拠点の変更などを呼び掛けるとともに、物流効率化に取り組む企業を募集する。

なお、東京2020大会へのトライアルとして24、26の両日には、都心部への交通流入を制限するための大規模な交通規制が行われる予定。都心方向への高速道路の本線料金所(11ヵ所)で開放レーンを終日制限。選手村周辺など4つの入口を閉鎖する。一般道路の交通対策として信号調整により環状七号線内側への流入も抑制。荷主や物流事業者も大会への“予行練習”が求められる。
(2019年7月16日号)


関連記事一覧