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成長戦略のメインは「新たな3PL」=ニチレイロジ

2019.05.30

ニチレイロジグループ本社(本社・東京都中央区、梅澤一彦社長=写真)は今期(2020年3月期)からスタートした中期3ヵ年経営計画で、新たな3PLサービスの提供とASEANソリューションビジネスの拡大でさらなる事業成長を図る。20日に開かれた19年3月期の事業報告会で梅澤社長が発表した。国内では新設投資とエリア戦略を進めるほか、事業基盤の強化に向けて業務革新と人事施策も継続。最終年度の22年3月期には売上高2270億円(19年3月期実績比12・9%増)、営業利益120億円(同11・4%増)を目指す。

海外事業では中計内にASEAN進出拡大

新中計では、「新たな3PLモデルの確立」を成長戦略のメインに据える。従来の共同化は、物流会社が複数の荷主から荷物を受託して混載配送するモデルだったが、初期段階こそ一定のコスト抑制効果が出るものの、サプライチェーンの包括的な改善には至っていなかった。そこで、新モデルでは共同化に参加する企業同士の“プロジェクト形式”とし、ニチレイロジが窓口となって荷主同士の情報や課題を可視化・共有化することで、個社では解決できない課題への対応を可能にして全体最適につなげる。既に中四国地域で先行して開始しており、同モデルの展開を図る。

また、ASEAN市場の成長にも注目し、同地域でソリューションビジネスを拡大。現在はタイとマレーシアで事業を展開するが、中計期間内にはインドネシア、フィリピン、ベトナムのいずれかへの進出を視野に入れ、現地パートナー企業の検討などを進める。各地では輸送や保管といった単機能に留まらず、荷主企業の課題を解決する包括的な物流サービスを提供し、「日本国内で培った質の高い低温物流を地域ニーズに沿ったソリューションへとカスタマイズしていく」(梅澤社長)とした。
欧州では蘭ロッテルダム港のマースフラクタス増設計画が進行し、20年度には営業開始予定。その他の主要港湾地区でも外部環境や既存サービスとのシナジーを考慮しながら保管・通関機能を強化する。内陸でも、運送貨物の保管やスイッチ拠点として活用できる設備の増強に向けてM&Aを含めた検討を進める。中国ではローソンの出店計画に応じた体制構築と新規案件の取り込みを積極化するとともに、上海で培ったノウハウを華東地区以外の主要都市にもコンサルテーションの形で提供していく。

21年にキョクレイ本牧物流センターを新設

国内では新中計でも冷蔵冷凍倉庫の新設投資を続け、今年5月には「那覇新港物流センター」(沖縄県那覇市、1万2485t)が立ち上がり、まずは県内の在庫需要を着実に取り込んだ上で、沖縄をハブとしたアジア各国との輸出入ルートの構築も目指す。さらに来年4月には「名古屋みなと物流センター」(愛知県名古屋市、3万635t)が稼働予定。21年3月には、山下ふ頭の再開発に伴うキョクレイ山下物流センターの代替拠点として「本牧物流センター」(神奈川県横浜市、2万8500t)の開設も計画し、庫複を約5000t増強するとともに加工場などの付帯設備も充実させる。

各地域会社の基盤強化戦略としてはカテゴリ化による高効率な拠点運営と、庫内デジタル化による従来の詰め込み型ビジネスモデルから脱却。「現場作業員の経験と勘で荷物をひたすら詰めて稼ぐスタイルでは立ち行かない」(同氏)として、「倉庫側の収益性を犠牲にしてでも」全体の効率性や働き方改革を優先した運営へと切り替える。また20年4月から関西地区でも保管と運送を一体運営化する。

一連の事業基盤を強化する業務革新では、前期までのテスト運用を新中計で実運用へと移行する。まずは庫内情報のデジタル化を進めた上で、データを元に人が意思決定できる環境を整備。今期はRPAへの業務置換で作業時間を年間18万時間短縮するほか、AI自動配車も13拠点で導入する。その上で、次期中計ではAIによる自動判断を実現する。これらに合わせて、多様な人材活用に向けた人事施策として女性活躍推進からダイバーシティへと取り組みを広げる。
梅澤社長は、「前中計では食品低温物流事業者№1にふさわしい規模の売上高と営業利益を達成したが、外部環境が変化する中、新中計ではその延長線上に甘んじることなく、新たな食品低温物流事業者№1の姿を描く」と意欲を示した。
(2019年5月30日号)


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