ズームアップ 青函トンネル通れぬ、新造クールコンテナ
ドライバー不足を背景に鉄道輸送への注目が高まる昨今。最近では、クールコンテナを利用した青果物や加工食品のモーダルシフトも増えており、JR貨物としてもこうしたニーズを積極的に取り込みたい考えにある。一方で、ここに来て、新たに製造されたクールコンテナが青函トンネルを通過できない問題が浮上している。
現在、クールコンテナが青函トンネルを走行する際には、JR貨物が指定する「バックアップタグ」と呼ばれる安全装置を装着することが義務付けられている。このバックアップタグを生産してきたメーカーが製造から撤退。数年間はメーカーの在庫品で対応できていたが、昨年から今年に掛けてその在庫も尽き、クールコンテナが新造されても同タグを取り付けることができず、青函トンネルを通行できない状態に陥っているという。
そもそもバックアップタグとは何か――。冷却エンジンが付いているクールコンテナは、危険物が青函トンネルを通過できないのと同様に、安全上の措置から、青函トンネル通行時には火災予防のためエンジンを必ず切る必要がある。通常はGPSで冷却エンジンが切られる仕組みだが、万が一エンジンが切れなかった時に作動するのが、このバックアップタグだ。なお、それでもエンジンが動き続けている場合にはアラートが鳴り、乗務員が手動で切ることになる。
同制度は従来からあったものだが、2016年の北海道新幹線開通以降、より厳しくなったという。バックアップタグはクールコンテナを運用する通運会社が購入・装着し、地上側の設備をJR貨物が運用している。
JR貨物側では代替メーカーによる製造を検討し、当初、今期中にはメドをつける方針にあったが、調整が難航しているもよう。コスト面の折り合いに加え、検討中にある新システムの制御方法が現行のバックアップタグと異なるとなると、慎重な検証が求められる上、旅客会社との調整なども必要になると見られる。関係者によると、代替メーカーによる新製品の投入には1年かかるとの見通しもあるようだ。そのため、同社としても抜本的な解決を前にした経過措置として、バックアップタグの共有やラウンドユースなどを検討しているという。
しかし、現存する12ftクールコンテナの多くは製造から10年を越え、コンテナの更新を検討する利用者もいる中、バックアップタグの方針が定まらないために、更新に踏み切れないケースも出始めている。コンテナや冷凍機を製造するメーカー側も、旺盛なニーズを受けながらも製作に至らない状況。現在の状態が続けばクールコンテナの数量が減少し、定温輸送への旺盛な需要を受け止めきれず、荷主企業が鉄道輸送から離れる可能性も少なくない。
青函トンネルは鉄道で北海道と本州を結ぶ唯一のルートであり、年間約480万tに上る輸送量の約半数が北海道産の青果物となっている。青果物は輸送が長距離化するケースが多い上に、収穫時期による繁閑差が大きいことからトラック輸送会社に敬遠される傾向が強く、鉄道輸送を利用するニーズがとくに高まっている。同時に、品質保持のためクールコンテナの利用が増えている商材でもある。荷主企業や通運会社からは困惑の声が挙がっており、早期の解決が望まれている。
(2019年2月19日号)